第26話 <謁見>

 華やかな音楽が鳴り、騎士たちが改めて敬礼の構えを取る。

 そして、その奥の玉座には、ロミオス国王のアイマルが座っている。その隣には、カトレアもいた。

 騎士の後ろには、王都から近い場所にある領地の領主や貴族がやって来ていた。……正直、とても怖いし緊張している。

 リーネとマリアも似たような状態で、動きが堅い。レティーアはというと、慣れた様子で進んでいた。

 さすがは、アルカディア王国のお姫様だったことはある。

 四人は、何とかアイマルの前までたどり着いた。そこで、頭を下げる。

 アイマルが玉座を立った。同時に、カトレアがその手にソウルクリスタルで作られたバッジを持つ。


「賢者アキト殿。勇者レティーア殿。そして、その仲間たち。ロミオス国王アイマルの名において、ここに水晶勲章を贈るものとする」


 貴族たちや領主たちが一斉に拍手を送る。

 水晶勲章とは、ロミオス王国内で民間人を対象に贈られるものとしては、最高の賞だ。前回の受賞は、約五十年前と聞く。


「これからも、その力をロミオス王国のために役立ててもらいたい!」


 その後、アイマルの話、カトレアからの祝辞、貴族代表によるスピーチと続き、ようやく勲章授与式が終わった。

 貴族や領主たちが、この後開かれるパーティーの会場へと移動していく。

 今のうちに報告しておこうと、アキトはアイマルの方を振り向いた。

 しかし、先に話しかけたのはアイマルだった。


「久しいですな。レティーア殿。幼少期以来ですかな?」

「そうなりますか?……あと、敬語はやめてください。もう、姫でもなんでもありませんから」


 軽い挨拶から始まり、昔の話を盛り上げていくアイマルとレティーア。レティーアの顔も、何だか楽しそうだ。

 会話が一区切りついたのか、こちらに顔を向けるアイマル。


「そして、アキト殿。よくぞレティーア殿を守り抜いた。そして、忙しいなかよく娘の我が儘に付き合ってくれた。礼を言わせてもらう」

「そんな、もったいないです!……でも、やっぱりカトレア様の我が儘だったんですね?」


 視線をカトレアに向ける。

 当の本人は、口笛を吹きながら天井の絵画を見上げていた。

 ジト目でカトレアを見ていると、アイマルがさらに続ける。


「今はノーヴァ帝国と戦争中。加えて、邪神も何体か出現している。是非とも君の力を借りたい」


 その言葉でアキトはおもいだした。邪神関係の話を報告しようとしていたのだ。


「そうだ!アイマル様。急ぎ報告したいことが」

「何かね?カトレアならまだやれんぞ?」

「断じて違います。まずは、これを見てください」


 そう言ってアキトが取り出したのは、一本の剣。ノーヴァ帝国の剣だ。

 なぜこんなものが出てくるのか?アイマルの理解が追いついていないようなので、補足で説明を加えておく。


「これは、ホロゥ村を襲ったガーゴイルが持っていたものです。奴らが使ったのでしょう。……問題は、これが不自然ということです」

「うむ。確かにおかしいな」


 さすがは国のトップ。もう不自然さの理由が分かったようだ。


「なぜ、……であろう?」

「はい。このあからさまな証拠は、何か嫌な予感がするのです」

「ふむ。……だが、ノーヴァ帝国が我が国に害を及ぼそうとしていることは事実!」

「……もしかしたら、ノーヴァ帝国でも邪神軍による襲撃があったのでは?そして、その敵がロミオスの武器を使っていたから戦争を吹っ掛けられた……」


 なるほど。自分で言っててなんだが、辻褄は合っている。

 気になる点も残っているが、そちらも納得の答えが出ている。

 ロミオス王国は、ノーヴァ帝国とは比較的友好な国だ。そんな国がいきなり戦争を起こされる理由が分からない。

 だが、先制攻撃を受けて、尚且つそれが邪神の配下。戦争を起こす理由としては十分すぎた。


「なるほど。これは一度話し合いの場を持ちたいな」

「ええ。それに関しては同意です」

「……アキト殿。私はこれも邪神の仕業と考えておる。……今のレティーア殿に勝てるか?」

「正直、邪神もレティーアも勝利は確約できない状態と思いますね」

「そうか……。レティーア殿。さらなる力を持つ覚悟はあるか?」


 突然話を振られて驚くレティーア。

 だが、覚悟はあるかという質問は愚問だ。そんなものは、記憶を取り戻したときにすでに決めてある。


「勿論です。アキトさんやリーネさん、マリアさんを守るためなら!」

「……であれば、[解放者]を探してみてもいいかもしれん」

「「「「[解放者]?」」」」


 聞いたことない単語に首を傾げると、今まで沈黙していたカトレアが説明してくれる。


「[解放者]とは、勇者の力を極限まで引き出してくれる者のことですよ。体のどこかに、勇者と対をなすアザがあるとか」

「[解放者]は、邪神と戦う上で必須なもの。暇なとき、探してみてもいいと思う。……さて、話が長くなったな。パーティー会場へ向かおうじゃないか」


 アイマルが、半ば強引に部屋からアキトたちを出す。勿論、アイマルとカトレアも一緒だ。

 その後、全員でパーティー会場に移動した。久しぶりの最高勲章を授与されたということで、多くの人と話し、自分だけの時間が取りづらいまま、パーティーは終わった。

 今日は城に泊まっていいとのことなので、それぞれに割り振られた部屋へと向かう。アキトの部屋は、カトレアの部屋の近くだった。……何気に、悪意を感じるのはなぜだろうか?

 しかし、今日一日色々なことが起きた。おかげで、疲労も溜まっていたのだろう。

 アキトは、荷物を置いてベッドに倒れ込むと、すぐに夢の中へと旅立っていった。

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