第25話 <王女の秘密>

 騎士に案内されて、城内を進むアキトたち。やがて、ある部屋の前で止まった。

 どうやらここが、カトレアの部屋のようだ。


「カトレア様。アキト様たちをお連れしました」

「……えっ!?もう!?ちょ……ちょいまって!」


 ……王女らしからぬ言葉が聞こえた気がしたが、そこはスルー。だってほら、僕って大人の男だし?

 そんなことを考えているアキトに向けられる、女子たちの冷たい眼。その視線に、アキトがいよいよ耐えきれなくなったところで、扉の向こうから入室の許可が出る。

 視線から逃れられることに安堵したアキトは、騎士に続いて入室して……凍りついた。

 壁一面に、投影板という魔導具で撮影されたアキトの写真が貼られていた。

 仕事の最中から食事シーン、挙げ句の果てには入浴や睡眠の写真まであるという始末だ。


「……ええっと?何これ?」

「どうした?……うわっ!何これ!?」


 軽く引き気味のアキトと、同じく驚くリーネ。声には出してないが、マリアとレティーアが部屋から距離を取っている。

 そこに、問題の部屋の主が顔を見せた。


「ごきげんよう。アキト様。そして、〔剣と魔法の自由人〕の皆様。どうぞこちらに。……あと、アキト様は私の側に」


 取って付けたような口調で出迎えてくれるカトレア。

 巷ではマリアと並ぶ人気があるのだが、この部屋を見てもなおそんなことが言えるのだろうか?

 純粋な疑問をアキトが浮かべていると、カトレアがアキトに肩を寄せてきた。

 アキトも男の子だ。美人な女の子に詰め寄られると、相手が王女であっても……


「スンスン……はぁ、いい匂い。アキト様を感じる……」


 ……前言撤回。どうにも恋愛対象としては見れないとアキトは判断する。

 そんなアキトの考えを察したのか、女子三人組は胸を撫で下ろす。ライバルが勝手に自滅してくれたのだ。ありがたい。


「そういえば!……アキト様。お忙しい中ありがとうございます」

「大丈夫ですよ。それに、国王陛下とカトレア様からのお誘いを……」

「その事ですが……。実は、今回の件は私の暴走みたいなところがありまして……」


 ……今何つった?個人の暴走?

 頭が痛くなってくるアキト。そんな彼を見て、カトレアが慌てる。


「べ……別にアキト様に会いたかっただけとかじゃないから!勘違いしないでください!」

「……ごめん。僕もう帰っていいかな?」


 まだ一応敬語だが、徐々に素のしゃべり方に戻っていくアキト。

 女子たちは、特にリーネがお腹を抱えて必死に笑いを押し止めていた。


「でも!勲章授与の話は上がってました!ですから、こうしてお呼びしたのです!」

「はい。そういうことにしておきます」

「本当ですよ!……あと、私から個人的に贈り物があるのです。受け取ってください」


 カトレアが合図をする。すると、騎士の一人が紙袋を持ってくる。

 騎士から袋を受け取ったカトレアは、直接アキトに手渡した。


「どうぞ。ささやかではありますが」

「これは……ありがとうございます!中には何が?」

「はい♥私のキスマークのついたアキト様の写真……」

「何それ怖い!てか、僕に対するその執着は何!?」


 遂に本来のしゃべり方に完全に戻ってしまうアキト。お腹を抱える女子にレティーアが交じる。

 どうやら、ロミオス王国の王女は、ストーカー気質の変態らしい。……この国、将来大丈夫だろうか?

 その後は、特に何事もなく……いや、カトレアのアキトに対する過度なスキンシップを除けば、普通に平和な時間が過ぎていった。

 カトレアの部屋の扉がノックされる。外から、男の声が聞こえてきた。


「カトレア様。そろそろ準備してください」

「あら。もうそんな時間。アキト様。勲章授与式の準備をするので、少々お待ちを」


 そう言って、カトレアは部屋を出ていった。残ったのは、騎士二人とアキトたち。


「……アキトさん。大丈夫ですか?」

「レティーア……。これが大丈夫だと思うかい?精神的にキツいよ」

「でも、あんな美人に詰め寄られて……詰め寄ら……ぷふっ!」

「アキトを慕う王女様……くっ……アッハッハ!」


 畜生!リーネとマリアぶん殴りてぇ!

 そうは思うが、決して手は出さないアキト。こういったことも、女性人気を獲得している要因なのだろう。ちなみに、男性人気は時として下がるのだが。

 見てみれば、いつの間にか騎士二人とレティーアも笑いを堪えていた。

 ……どうやら、この部屋にアキトの味方はいないようだ。周りはみんな敵。

 なんだか悲しい気分になっていると、部屋の扉が開いた。

 そこには、王都に連れてきてくれた騎士が立っていた。名前は確か……ブルックさんだったかな?


「皆様。陛下と王女様がお待ちです。こちらへどうぞ」


 ブルックの案内に従って、廊下を進んでいく。廊下には、赤い絨毯が敷かれていた。

 やがて、国王の部屋に到着する。その扉は、金で造られていた。とてつもなく重いが、魔法による支援のおかげでそれほど重みを感じない。

 扉を開いたブルックは、アキトたちを部屋に通した。この先に国王がいる。

 一種の緊張を携え、アキトは国王の部屋に足を踏み入れた。

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