第23話 <王都へ向かう>

 ルクスヴァニラでは、復興作業が続いていた。フラム=ベルジュによって受けた被害は、一刻も早く直さなくては。

 そんな中、町の一角では緊張状態に包まれていた。

 アキトたち[剣と魔法の自由人]を、王国騎士団が囲んでいる。騎士の一人が、アキトに向けて書類を読み上げた。


「冒険者アキト殿!そして、勇者レティーア殿!貴公らの活躍素晴らしく、是非とも王都にて勲章授与と、祝福パーティーに参加してもらいたい!ロミオス王女、カトレア」


 一通り聞き終えたアキトは、どうしようか悩む。実は、このままパイオンに帰ろうかと考えていたのだ。

 これはパーティーで話し合う必要がある。そう考えたアキトは、皆の顔を見る。


「もしかして、相談しようとか思ってる?」

「そんな必要ないですわ。アキトがやりたいようにすればいい」

「うん。アキトさんが決めていいんだよ?」


 皆は、自分が決めていいと言ってくれた。なら、答えは決まっている。


「分かりました。王都に向かいます」

「おお!ありがとうございます!すぐにでも大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫ですよ」

「では、馬車を待機させてますので、そちらに」


 騎士の案内に従って、町を出る。

 門の外には、きらびやかな装飾が施された馬車が停まっていた。馬も、立派な体をした白馬だ。


「……ねえアキト?私、こんな豪華な乗り物乗ったことないよ?」

「奇遇だなリーネ。僕もだ」

「あら?私が小さいときはよく乗りましたよ?」

「うん。アルカディア王国でも普通でした」


 ごく自然にセレブ発言をするマリアとレティーアに若干引きつつ、アキトとリーネも馬車に乗り込む。

 内部も、フカフカ素材の座席に金の枠の窓と、まさに豪華な内装だ。

 アキトたち四人と、騎士二人を乗せると、馬車は発進する。その後ろを、お供の騎士たちが馬で駆ける。

 道中、騎士の人と色んな話をした。


「そうですか……。ノーヴァ帝国が……」

「はい。有事の際には、皆さんにも協力していただきます」

「ノーヴァ帝国……。ヨハネス皇子と…… 」


 レティーアの表情に迷いが見える。ノーヴァ帝国のヨハネス皇子とは、アルカディアで共に戦った間柄だ。何かしら、思うところはあるのだろう。

 馬がけたたましく鳴いた。直後、馬車は急ブレーキをかけて止まった。


「何だ!?何事か!?」

「隊長!どうにも奇妙な魔物です!」


 その声に反応して、アキトたちも馬車を降りた。

 道の先では、騎士たちが魔物と交戦していた。だが、見る限り騎士たちが劣勢だ。

 その魔物は、かなりの速度を出して飛行。騎士たちに剣を当てていた。

 鎧のおかげでそれほど痛くはないが、騎士たちの攻撃は全く当たっていなかった。

 魔物たちに向かって、リーネが走り出した。ミスリルソードをその手に持ち、跳躍して魔物の頭上に回り込む。


「いぃやあぁぁぁっ!!」


 気合いのこもった一撃。その剣は、魔物の退避よりも早くに体を両断した。緑の血が飛び散る。

 まさかやられるとは思ってもいなかったのだろう。他の魔物たちが逃げようとする。


「逃がしたりしない!"真空の居合い"!」


 リーネが放つ真空波の一撃。それは、飛んで逃げていた魔物たちの翼を切り落とし、地面へと落とした。

 もがき苦しむ魔物たちにトドメを刺していくリーネ。これが、Aランク冒険者の力だ。

 目の前で自分達を苦しめていた魔物たちが蹂躙されていく様を見て、騎士たちは雄叫びをあげる。同時に、自分たちはまだまだだと自覚もした。

 剣を納め、アキトの元へと戻ってくるリーネ。その顔は、どこか誇らしげだ。


「すごいですね……。我が騎士団を苦しめた魔物どもを……」

「さすがはリーネ。よくやったな」

「でしょうよ!レティーアにも遅れは取らないわ!」

「へぇ。また今度手合わせする?」

「良いわよ。経験の違いを見せてあげる」


 レティーアとリーネの間に、見間違いか火花が散っているように見える。これは、まずそうだ。

 アキトは、マリアを連れて魔物の調査を行うことにした。アキトには、ある心当たりがある。

 そして、その魔物を見たとき、心当たりは確信に変わった。


「やっぱりか……。こいつらは、ビートリアだな」

「ですわね。この異形のフォルム。間違えるわけないですから」

「てことは……天空の六大邪神か」


 フラム=ベルジュの最後の言葉、天空の……とはこの事だろう。


「……厄介だな」

「再生神話第二節五項。

『荒ぶりしその神は、手にした弓で地を穿つ。何人も、神が放ちし竜巻より逃れる術無し。天空を支配せし邪神、ホルス=スコーパー。』

……大変な事態ね」


 フラム=ベルジュに続く二体目の邪神。恐怖はあるが、対策はある。

 邪神と交戦する前に、封印から解き放った術者を倒せばいい。敗けが決まった戦いではないのだ。

 アキトは、天を見上げる。空のどこかにいるであろう、天空の邪神とその術者に、挑戦の意思を示すかのように。

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