第15話 <休息>

 ルクスヴァニラに帰ってきたアキトたちは、まず宿に戻る。

 とりあえず荷物を置いて、ルクスヴァニラの町に繰り出す。観光と、所持品の補給のためだ。

 まず向かったのは武器屋。リーネの剣に酷い傷がある。これを直さなくては。

 ついでで、マリアの杖も新調することにした。これから本格的に邪神と戦う以上、半端な装備では死んでしまう。

 修理費と杖の代金である金貨三十枚を払う。新しいマリアの杖は、ロミオス王国でも最上級品だろう。

 リーネの剣の修理は時間がかかるらしいので、アキトたちは店を出る。


「……ねぇ?甘いもの食べたくない?」


 リーネが喫茶店を指しながら話す。看板には、フルーツケーキのイラストが大きくあった。


「甘いもの?別に食べなくても……」

「アキト、ケチすぎるわ。女子には甘いものが必要なのです」

「そうそう!さすがはマリアね!良いこと言うじゃん!」


 アキトの倹約家根性、敗れる。女子たちに付いて喫茶店に入った。

 珈琲のいい香りが鼻孔をくすぐる。ここは、当たりの店なのかもしれない。


「私はフルーツケーキで」

「じゃあ、私もそれでお願いしますわ」

「僕は珈琲を頼む」


 しばらくして、注文した品が運ばれてくる。

 遠くの国、カフェールの豆で挽かれた珈琲は、格別に美味しい。香ばしさの中に、ほんのり苦味を感じる大人の味だ。

 リーネたちが頼んだフルーツケーキは、葡萄を中心として様々なフルーツがところ狭しと乗っかっている。

 喫茶店で休憩をする合間に、これからのことを話し合う。


「さて、レティーアの正体はアルカディア王国の姫。勇者だったけど……」

「だから何?って話よ。レティーアはレティーア。変わらないじゃん」

「当たり前だ。勇者だとしても、レティーアに対する接し方を変える気はないしな」

「……レティーア、大丈夫かしら?」

「あんな試練くらいレティーアなら余裕よ!レティーアの強さはマリアも知ってるでしょ?」

「そうね。きっと大丈夫よね!」


 フルーツケーキと珈琲に満足し、アキトたちは店を出た。

 そのまま広場のほうに歩いていく。

 道中すれ違う人は、みんな活気に溢れている。ソウルクリスタルの力のおかげなのかもしれない。

 

「奥さん聞きました?五番通りのクリスちゃん、今度お嫁に行くそうよ」

「号外号外!王都の冒険者パーティーがワイバーンを討伐したよー!」

「そこの方!是非とも我輩の崇める神に……!」


 ルクスヴァニラは、平和そのもの(一部おかしな人もいる)だ。アキトたちは、広間の噴水前までやって来た。


「……こうしてると、邪神とは本当に無縁の感じだな」

「見てよアキト。子どもたちが笑ってる。レティーアは、あの笑顔を守ろうとしてるのよね」

「そうだろうな。そして、僕たちがその助けになるんだ」


 子どもの一人が、つまづいて倒れてしまった。すぐにリーネが駆け寄る。


「はい。大丈夫?」

「うん!ありがとうお姉ちゃん」

「気をつけてね」


 子どもは、立ち上がるとすぐに駆けていった。それを、リーネは見つめている。

 気がつくと、空が赤く変わっていっていた。噴水広場から宿に帰るアキトたち。

 武器屋の前を通ると、店主から修理が終わったと言われた。想像よりもずっと早い。

 直ったリーネの剣は、以前より輝きが増しているように見える。これは、あのガンジンにも遅れを取らない速度だ。

 宿に帰ると、従業員の女性が食事の用意をしてくれていた。

 机の上に並ぶ豪華な食事。

 

「ふわぁ……!すごい……!」

「リーネ。よだれ垂れてるぞ」

「ふふ。そういうアキトもソワソワしてるわよ」


 三人とも、我慢の限界のようだ。顔を見合わせて食べ始める。

 豪華な食事を堪能したあと、交互に入浴して布団に入る。入浴の際、リーネとマリアがアキトと一緒に入ろうとしたので、軽い拘束魔法をかけておいた。

 電気を消して、眠りにつく。明日は、観光でもう少しルクスヴァニラを回ると決意して。




 真夜中のルクスヴァニラ。その城壁を飛び越えて何かが町に入ってきた。

 運悪く、遅くまで外にいた女性が遭遇してしまう。そいつは、手に持った武器で女性を斬り殺してしまった。

 女性の亡骸に近づき、腕を切り取ろうと獲物を振り上げる。

 金色の矢が、そいつの頭を貫くのは同時だった。力を失いその場に倒れる謎の魔物。

 矢を放ったのは、天使の一人だ。彼女の名はルゥエル。ルミエールの部下の天使の一人だ。

 ルゥエルは、矢を刺した魔物に近づく。そして、気づいた。


「こいつ……!ガーゴイルじゃない!?」


 その声に反応して、他の天使が集まってくる。そして、全員がガーゴイルと判断した。


「まずい!ニィエル!早くルミエール様に……!いや、ミカエル様に知らせて!」

「はい!ただちに!」


 ニィエルと呼ばれた天使が飛び立つ。その時、ニィエルは城壁を飛び越える二つの影を見た。


「まさか……!ミカエル様!」


 ルクスヴァニラが邪神の標的になるかもしれない。焦るニィエルはミカエルの元へ急ぐ。

 残ったルゥエルは、ガーゴイルのおかしな点に気づいた。


「これは……!魔力で細工されてる!?まずい!貴女たち、今すぐ離れて!」


 直後、ガーゴイルの体が点滅する。天使たちが逃げようとするが、それより早くにガーゴイルが爆発を起こした。

 ルクスヴァニラの一角が瓦礫に変わり、跡地から伝説上の存在である天使の遺体が四体見つかったことで、騒ぎはより大きくなった。

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