第10話 <神都ルクスヴァニラ>

 邪神の攻撃からギリギリのところで逃げ出したアキトたち。彼らは今、ロミオス王国とステイン共和国の国境にいた。


「くっ……!なんだよあの力は……!」

「ソウルクリスタルを破壊するなんて……」

「結局……、名前は分からずじまいか……」


 アキトは感情に任せて魔法を放つ。

 得るものはないのに被害だけが出てしまった。死者がいないことは、不幸中の幸いか。


「いえ、正体はおそらく分かりました」


 口を開くのはマリアだ。彼女は、僧侶の立場上神話にも詳しい。何か確信が持てたのかもしれない。


「アキトたちも聞いたことありません?再生神話第二節四項。

『その炎、万の軍勢を焼き払う。その双剣、いかなる猛者も斬り伏せる。滅びを体現せし紅蓮の邪神。』」

「まさか……!灼熱の六大邪神フラム=ベルジュだとでもいうのか!?」


 かつて人類が邪神に苦戦を強いられたのは、この六大邪神の存在が大きい。

 個々が邪神王から強化を施され、ソウルクリスタルの力を使って破壊を行っていた。

 灼熱・天空・冥土・大海・煉獄・氷雪。

 この六体の邪神を纏めて、六大邪神と名付けられていた。


「そんなやつ……ノーヴァ帝国にいるっていう最強の冒険者のイゴールでも勝てねぇぞ」

「そうね。灼熱と冥土と煉獄の邪神には、あのソルティア様も苦戦したっていうし……」


 人類にとって絶対的な存在。そんな奴がこの世界に存在してしまっている。

 一刻を争う緊急事態だ。


「マーロ様のところへ急ごう。最高神様ならどうにかしてくださるかもしれない」

「……と言うだろうと思い、お待ちしておりました」

「あっ!ルミエール様!」


 リーネの指差す先には、パイオンの町で出会った大天使がいた。待っていたとはどういうことなのか?


「マーロ様が魔王遺跡の近くで強大な闇の力を感じられました。そこで、私が派遣されてきたのです」

「そうだ!ルミエール様!実は……」

「続きはマーロ様に直接どうぞ。今からクリスタル山の麓、ルクスヴァニラに転送します」


 ルミエールが指を鳴らす。すると、視界一杯に光が広がった。

 光が収まってから、目を開けてみる。すると、目の前には標高4000メートルはあろうかという巨大なソウルクリスタルの塊、クリスタル山がそびえていた。


「うひゃあ……。凄いですね」

「では、マーロ様のところへは明日向かってください。今日はルクスヴァニラで休憩を」


 そう言い残し、再び消えていくルミエール。

 アキトたちは、今日はルクスヴァニラ観光を楽しむことにした。

 クリスタル山の麓にあるこのルクスヴァニラは、王都の次に栄えている町だろう。教会が多いのが特徴だ。何たって神のお膝元なのだから。

 だからか、妙な学問まで流行ってると聞く。アキトたちも、早速怪しい教授に捕まった。


「旅のお方かな?是非ッ!私の研究を聞いていきたまえ!」

「あの……アキトさん、どうしよう?」

「あー、僕たち急ぐので」

「この世界の生き物には何かしらの役目があるのだよ。ならば!あの邪神たちはどんな役目をもっているというのだろうか!?」


 ダメだ。この人は聞いてない。

 熱弁を繰り広げる教授からうまく逃げ出し、用意してくれているという宿に到着した。

 東方にある島国の宿を再現したというここは、内装に強いこだわりが見てとれる。どうもこれはwaというらしい。

 柱がキラキラと輝いている。なんとも幻想的だ。

 従業員の方に案内してもらって、部屋まで移動する。今回は四人部屋だ。


「いいところだな」

「ですわね。大天使様に最高の感謝を」

「マリアったら固いわね。もっと気楽にありがとうでいいのよ!」

「でも、本当に素敵なところ……」

「遠くからいらしたんですか?この町はソウルクリスタルの恩恵でいつも活気に溢れてますよ」


 この世界の活力となっているのがソウルクリスタルだ。世界の維持を行う働きがある。

 そんなソウルクリスタルは、二ヶ所に大きな塊がある。

 一つはここ、神の住んでいるとされるクリスタル山。そしてもう一つは、邪神王たち邪神の軍勢を封じたというクリスタルダンジョンだ。

 クリスタル山から溢れ出る力のおかげで、ルクスヴァニラの住人はいつも活気づいている。

 この世界に生きる命に良い影響を与えるソウルクリスタル。

 だからこそ、それを利用して世界に滅亡をもたらす邪神を許してはいけないのだ。


「……では、部屋はこちらです。ごゆっくり。……あと、お風呂はお部屋内なら混浴構いませんので」

「「「「しませんよ!?」」」」


 ジョーク(だと思いたい)を言ってくる従業員にお礼を言って、荷物を置く。

 何だか疲れたので、もう休むとしよう。


「じゃあ僕は寝るよ。女子三人でゆっくりお湯に浸かってきな」

「えっ?三人で……?」

「「……ホントに混浴しないの……?」」


 レティーアが驚きの声を出し、リーネとマリアが何やら呟いたように思うが、アキトの疲労はピークに達していてそれどころじゃない。邪神との戦闘の緊張感があったからだ。

 すぐに寝息をたてはじめるアキト。そんな彼を、女子組はどこか残念な目で見つめる。

 お湯に浸かって疲れを癒した彼女たちは、寝る準備をする。

 リーネが、突然アキトの布団に潜り込んだ。


「ちょっと!?リーネさん何やってるんですか!」

「リーネ!?ズルいですわ!」

「いいじゃん。これくらいは」


 アキトの布団の近くにはまだスペースがある。

 レティーアとマリアは、自分の布団をこっそりとアキトの布団の側に寄せた。そのまま四人で固まって眠る。

 次の日、目を覚ましたアキトが困惑したのは言うまでもない。

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