第8話 <昇格>

 六千という前代未聞の魔獣の大群を退けたパイオンの町の冒険者たち。彼らは、戦勝記念の飲み会のために町に帰っていく。

 アキトは、今回の件を不審に思い、魔獣の死体を調べていた。リーネとレティーアは、武器の修理・補充のために帰ったので、マリアと一緒だ。

 調査を始めて数分後、アキトたちはあるものを見つけていた。


「なぁマリア。こいつって……」

「間違いないですわ。ガーゴイル……」


 そこには、半人半鳥の鎌を持った化け物の死体が転がっていた。切断面から、恐らくリーネが仕留めたのだろう。

 ガーゴイルは低位の魔物だ。Cランク冒険者以上なら余裕で倒せるほどの雑魚。何ら問題はない。

 だが、ガーゴイルがここにいるという事実が問題なのだ。


「こいつは……じゃないのか?」

「そうですわ。。それがこのガーゴイルなのに……」


 ガーゴイルは、自然発生しない魔物なのだ。伝承では、上位の邪神が魔力を使って発生させると伝えられている。

 そんな化け物がここにいるということは……。


「あの豪腕巨人ギガンテスたちはこいつから逃げてきたの……?」

「いや、あいつらがガーゴイル程度を恐れるはずはない。恐らくは、豪腕巨人よりも強い邪神に追われたんだろう。」


 それは、邪神が封印から放たれたということだ。

 世界に目立った変化がないことから、放たれたのはそれほど強大な力を持つ個体ではないはずだが……。


【それでも……かなり危険だな】


 アキトの周りには、他にもガーゴイルの死体が数体散っている。

 放たれたのは、大量のガーゴイルを発生させることのできる奴だろう。間違いなく強い。


「マリア、急いで帰ろう。騎士団に報告だ」

「分かりました。……何が起こっているの?」


 アキトたちは、この緊急事態を知らせるべく、パイオンの町へ急ぐ。



「……分かった。早急に国王陛下に報告しよう」


 町に着いたアキトたちは、この町に来ていた騎士団の隊長に、事の次第を伝えた。

 任務を終えたので、急いで帰ってこの一件を報告するようだ。

 騎士隊長にお礼を言い、ギルドへと向かう。……何やら中が騒がしい。

 何をしているのかと気になって、扉を開けると……。


「……というわけで、レティーアさんをSランク冒険者に昇格します!」

「「「うおぉぉっー!!」」」


 どうやら、豪腕巨人三体を討伐した功績が認められ、レティーアがSランク冒険者に昇格したようだ。

 史上最速の最高ランク到達である。


「おっ!みんなー!ようやくアキトが来やがったぞー!」

「なに!?てめぇずりぃぞ!可愛くて強い女の子とかムカつくんだよ!俺も欲しい!」

「アキトー!このままじゃ私の威厳がなくなるー!」

「レティーアちゃんって何者?登録から間もないのに最高ランクだなんて……」

「アキト!今日はお前が奢れよ!」


 より盛り上がるギルド内。アキトは、自分に寄ってくる輩に大声で叫び返す。


「うるせぇ!何言ってんのかわかんねぇよ!一人ずつ喋れ!……あと、どさくさに紛れてたかるな!リーネの威厳はもとからほぼ無い!」


 分からないと言いながら、しっかりと聞いているアキト。これも、人気の理由の一つだ。

 アキトが他の冒険者と口論をしていると、ギルドの扉が開かれた。そこには、数名の女性が立っている。

 全身を白装束で包んだ、不思議な人たちだ。

 集団から、一人の女性が歩みでた。


「レティーアさんとはどなたですか?」

「あっ。はい。私でーす」


 冒険者たちにもみくちゃにされていたレティーアが、脱出した。そのままアキトの横に立つ。


「貴女が……。私は大天使ルミエール。彼女たちは私の友です」

「「「大天使様!?」」」


 ギルドにいる全員が敬意を示す。神に仕える天使がギルドにやって来た。

 教会が聞いたらひっくり返るだろう。


「レティーアさん。我が主マーロ様が貴女に会いたいそうです。申し訳ありませんが、クリスタル山まで来ていただけませんか?」

「えっ!?あの最高神様がですか!?」

「ええ。あの最高神様であるマーロ様です。どうでしょうか?」

「……アキトさん。どうしよう?」

「ふーん……。ルミエール様。僕たちのパーティーが一緒に行ってもいいですか?」

「勿論です。むしろ、貴殿方も共に来てください」

「なら、今日中に準備して明日出発します」


 アキトがそう返事すると、ルミエールは微笑んで消えていった。後ろの天使たちももういない。


「……というわけで、明日クリスタル山に向けて出発する」


 放心状態のリーネたちを現実に戻すため、少し大きめの声で宣言する。

 クリスタル山は、パイオンの町から魔王遺跡を通り、隣国との国境線沿いまで進むと到着する。

 ロミオス王国は、クリスタル山から最も近い国なのだ。

 現実に戻ってきたリーネたちを引き連れ、遠出に必要な道具を揃える。必要な物が揃うと、もう空は暗くなっていた。

 明日に備え、今日は早く休むことにするアキトたちであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます