第7話 <襲来>

 その日、パイオンの町の城壁の上が騒がしかった。

 魔導望遠鏡で偵察していた兵士が、町に迫る魔獣の大群を発見したからだ。すぐに対策本部が置かれる。


「では報告を。敵の規模は?」

「は!魔獣の大群、およそ六千!」

「六千だと!?なんという数だ……」

「加えて、巨人種三体を確認。特徴から、恐らくは例の魔王遺跡の主と思われます!」


 パイオンの町の近くには、古の時代の魔王の居城とされる城の遺跡がある。現在そこは、強力な巨人三体が支配していた。


豪腕巨人ギガンテスどもか……。兵士では……いや、騎士様でも厳しいか……?」

「しかし、なぜ奴らは城を出た?」

「分からん。……もしかして、アルカディア王国を襲ったのは奴らか?」

「それはないでしょう。アルカディアには勇者姫様がいらしたようですし。まぁ、隣国の貿易都市は知りませんが」

「かの勇者姫様でも倒せないのか?豪腕巨人どもは」

「そんなことは後から考えましょう。問題はどうやって町を守るかです」


 会議は続く。色々な意見が出されるが、どれも今一つ何か足りない。

 そんな中、手を挙げる者がいた。パイオンの町の門で働くカイジだ。


「冒険者に依頼をだしてはどうでしょう?今、パイオンにはアキト君がいます」

「[剣と魔法の自由人]がいるのか!ならばいけるぞ!」

「早速、ギルドに依頼を出してきます!」


 それから時は流れ……


 パイオンの町の外には、完全武装の兵士や騎士、冒険者が集結していた。

 それは、まるで戦争が始まるかのような光景だ。

 アキトたち[剣と魔法の自由人]は、後方にアキトとマリア。最前線にリーネとレティーアといったような形で待機していた。さすがに緊張してくる。


「緊張するかい?アキト君でも」

「あぁ。豪腕巨人が三体もいるんだろ?僕たちが今まで倒した巨人種はトロル数体だからね。どうにも不安なんだよ」

「トロルを倒すだけでもすごいがな。一つの町の兵士たちでようやく倒せるくらいの強さだぞ?」


 アキトの自慢ともとれる話は続く。これも、不安な感情を抱えてる他の人たちのケアの一種だ。

 やがて、森から閃光の魔法が放たれた。魔獣たちの足音が聞こえてきたようだ。


「来たか……。すぅー、突撃ぃぃっ!!」


 パイオンの兵士長の号令で、人々は魔獣に突進していった。

 まず遭遇したのは、機動力に長けた狼の亜種だ。森の魔獣では、有名な奴である。

 こちらに走ってくる狼を、リーネとレティーアが見事な連携で仕留める。討ち損なって後ろに流れた狼は、他の冒険者たちが集団で暴行を加えていた。

 

「援護する!"爆炎槍クリムゾン"!」


 アキトが魔法を放つ。森に燃え移らないギリギリの位置に着弾したその一撃は、一心不乱に走ってくる魔獣たちのいい足止めになった。


「さっすが!いくわよレティーア!」

「ええ!はあぁぁぁっ!!」

「彼女らに光の助けを。"天の光パワーライト"」


 身体能力が上がった二人が、次々と魔獣を斬り伏せていく。

 ここで、アキトはようやく今回の魔獣たちの異常な行動に気づいた。


「反撃が弱い……?ただ走ってるだけなのか?」


 実際、猪などの魔獣の体当たりに巻き込まれたとかで怪我した人はいるが、直接的な反撃はない。


「逃げてるだけ……?何から……豪腕巨人から?」


 アキトが考えてる間にも、魔獣は数を減らしていっていた。

 勝てる……!パイオンの兵士や冒険者たちにそんな気がおきはじめたとき、事件は起こった。

 森から何かが飛んでくる。それは、全身の骨を砕かれたパイオンの兵士だった。響く大きな足音。

 森の木をなぎ倒して、巨人が三体出現した。こいつらが、あの豪腕巨人たちなのだ。

 巨人を倒そうと、剣を構えて襲い掛かる騎士たち。巨人たちは、そんな騎士を一瞥すると、手にした棍棒を地面に叩きつけた。

 地が砕かれ、浮かんでから落ちてくる。騎士たちは、壊滅的な被害を受けていた。


「下がって!こいつらは私たちじゃなきゃ無理!」

「私たちの仕事です!いきます!」


 豪腕巨人三体に、リーネとレティーアが挑んだ。慌てて援護に向かうアキトとマリア。

 豪腕巨人はSランク冒険者でないと厳しいだろう。

 リーネの剣が、巨人の足の筋肉に弾かれた。マリアの強化を受けてこの様だ。リーネでは倒せない。

 ならば、頼みの綱は……。


「やあっ!」


 気合いのこもった声と共に放つ一撃。その攻撃は、巨人の足を両断した。片足を失いバランスを崩す一体の巨人。

 レティーアは、追撃で巨人の首をはねた。圧倒的な力の差を見せつける。

 残る二体の巨人は、仲間を殺されたことに腹をたてたようだ。我を忘れて棍棒を振り回している。

 棍棒が木に当たり、半ばからへし折られて冒険者たちに降り注ぐ。

 レティーアと巨人の戦闘を見ていたらとばっちりを受けたのだ。必死で逃げる。

 暴れ続ける巨人の懐に入り込み、先ほど買った剣で心臓を一突きにする。もう一体の巨人も絶命。残るは一体だ。

 最後に残った巨人は逃げ出していた。レティーアが追いかけようとするが、それよりも早く火の玉が巨人に迫る。アキトの魔法だ。

 巨人に火の玉は命中。苦しんでいる。


「レティーアさん、支援します!貴女に神の祝福を……!"身体超化フィジカル・ハイブースト"」


 マリア渾身の強化魔法がレティーアに力を与えた。そのまま地を蹴って接近するレティーア。

 巨人がレティーアに拳を突き出す。勢いで潰そうとしているのだ。

 そこに飛んでくる銀の剣。リーネがミスリルソードをぶん投げた。

 巨人の腕はミスリルソードに弾かれたて右にずれた。空いた隙間をレティーアは見逃さない。


「トドメ!受けなさい!」


 直撃の寸前に振りかぶり、威力を引き上げる。そのまま剣を振り抜いて、巨人の体を真っ二つに切り裂く。

 絶叫を上げた巨人は、動かなくなった。

 巨人の死体から剣を引き抜き、空に掲げるレティーア。神話の一シーンを再現したかのような光景に、誰もが息を呑んだ。


「レティーア。お前の勝ちだ」

「えっ!?あっ!勝った!」


 その一言で、状況を理解する兵士たち。ようやく、彼らにも勝利の実感が沸いてくる。


「「「うおぉぉっー!!勝ったー!」」」


 その場にいる全員が勝鬨を上げる。

 こうして、六千という前代未聞の魔獣の大群から、パイオンの町は守られたのであった。



 

 

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