第3話 <パイオンの町>

 アキトたち四人は森を出て、街道をあるいていた。もうすぐパイオンに着く。


「パイオンって、素敵なとこですね」


 レティーアは記憶がない。パイオンの話を聞いて、どんなところなのか想像を膨らませているのだろう。


「そうでしょ!さぁ、あれがパイオ……。ねぇアキト?おかしくない?」

「あぁ。確かにおかしい。何かあったのか?」


 パイオンの町に入るための門の前に長蛇の列ができていた。いつもなら絶対に起こらないことだ。


「"狙撃眼スナイプアイ"。……どうやら検問をしているみたいですね」

「検問?どうゆうことだ?」


 パイオンの町がある地域の領主は、おおらかな性格で知られている。検問など絶対にしないはずなのだが……。


「あとは……王国騎士団もいますね」

「騎士団?国の命令ってこと!?」


 この国では、兵士と騎士は少し違う。

 兵士は、王都の役所に申請すればすぐに訓練施設で軽く訓練を受ける。そのあとに兵士になるのだ。町の防衛や治安維持などの仕事に携わる。

 反対に騎士は、国立騎士学校という専門機関をでないとなれない。騎士の職務は主に、王族に関するものだ。

 その騎士が門にいるのだ。なにか厄介事だろう。

 アキトたちはパイオンの町に近づく。列に並んでいると、顔見知りの門兵のお兄さんと出会った。


「カイジさん。なにかあったのか?」

「アキト君か。秘密だから大声では言えないがな。……実は、二つ隣の国の首都と、隣の国の貿易都市が魔物に滅ぼされたようなんだ。二つ隣のアルカディア王国なんて、王族の生き残りがいないとか」

「ひどい…!なんでそんなことに?」

「アルカディア王国はノーヴァ帝国に並ぶ軍事大国のはずだったんだがな。どんな魔物がいたのやら。……嬢ちゃん大丈夫か?」


 言われて気づいた。レティーアが頭を押さえて苦しそうにしている。

 何か小声で呟いている。必死に聞き取ろうとするが、あまり分からない。


「灼熱……神。エル………兄さ…。一緒…逃げ…」

「おい!レティーア!しっかりしろ!」

「はっ…!すいません…。ご心配を……」

「良かった。大丈夫そうだな」

「一応回復を。"治癒ヒール"」

「嬢ちゃんレティーアって名前なのか。どこかで聞いたことあるな。……まぁ、この列は難民がいないかの調査だ。いたら国に報告しなきゃいけない」


 カイジのお兄さんに礼を言って順番を待つ。

 やがて、自分たちの番が来た。アキトたちはすんなり通ったが、レティーアが引っかかった。


「すいません。その子記憶がないようで」

「ふーむ。怪しいが、何か事情があるのかな?」

「きっとそうでしょうよ!さぁ早く通して!」

「わかったわかった!だが、保証金は払ってくれ。これも規則だ」


 リーネの押しに負けた騎士が通行の許可を出す。冒険者に押し負ける騎士とは大丈夫なのだろうか?

 門を抜けると、そこには賑やかな町が広がっていた。大通りの店からは、活気のある声が聞こえてくる。


「ここが……。パイオンの町……」

「でしょでしょ!すごいでしょ!」

「リーネ、貴女の町ではないでしょう?」

「そうだけどさぁ……。いいじゃん!」

「ほらほら。冒険者ギルド行くぞ。レティーアも来てくれ。一応登録しておこう。身分証代わりにもなるし」

「分かりました。お願いします」


 大通りをまっすぐに突っ切る。中心にある教会の前を曲がってしばらく歩くと、剣と杖の特徴的なマークの看板を下げた建物が見えてくる。冒険者ギルド、パイオン支部だ。

 扉を開け、中にはいる。酒臭い匂いが漂っている。併設された酒場では、冒険者たちが真っ昼間から宴会を開いていた。


「おぅアキト!また女増やしたのか!」

「なに!?表出ろ!そろそろ身の程を教えてやるぜぇ!」

「おれだってぇ!お前に#₩〒¥₩4&\」


 最後の一人に関しては酔っていて呂律がおかしい。


「うるせぇ!レティーアが怯えてるだろ!そもそもSランクの僕に勝てるとでも!?」


 その一言で、一気に静かになるギルド内。アキトに勝てるはずがないのと、レティーアを怯えさせてしまったことに対する後ろめたさだ。

 彼らも、荒くれものの冒険者とはいえ、女の子を好き好んで怯えさせるほど性格は腐ってない。

 アキトたちは窓口へ向かう。いつものお姉さん、ミレイさんがにこやかに出迎えた。


「ふふ。アキト君はすごいね。彼らがすぐに黙るなんて」

「まぁ、乗りでやってるでしょうから。依頼はクリアしてきましたよ」

「そうね。臨時ボーナスを持ってくるからちょっと待ってて」

「ミレイさん。この子の登録をお願いしていいですか?」

「初めまして。私、レティーアといいます」

「あらかわいい子。アキト君、これボーナスね。レティーアちゃんは一緒に来て」

「あ……はい!」


 レティーアがギルドの奥に通されたので、アキトたちは少し時間を潰す。他の冒険者たちがウザく絡んできた。


「アキトよぉ。三人も女いるのズルくね?一人うちにくれよー」

「そうだぜ!うちの脳筋女子と交換……ぐぇっ!」

「でも、そんなに美人さんばかりずるいわ」

「リーネ!そろそろ私たちと冒険しない?」

「じゃあ俺にマリアちゃんを……」

「「私たちはアキトがいいので」」

「「「即答ですか!?」」」

「そういうわけだ。ウザいから散った散った」


 そこに、レティーアが戻ってきた。とりあえず計測は終わったようだ。ミレイさんが窓口に戻ってくる。


「じゃあ、結果がでるまですこしかかるから、町を見てきたら?」

「そうしますよ。レティーア、行こう」

「はい。お願いします」


 アキトとレティーアがギルドを出ていった。後ろからリーネとマリアがついていくのだが、


「ねぇ?アキトとレティーア近くない?」

「そうですわね。私たちの居場所が狭くなってますわ」


 レティーアに居場所を奪われそうになっている女子二人組は、そう嘆くのだった。

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