勇者と灼熱の神

第1話 <賢者のパーティー>

 とある村のすぐ近く。魔獣が出没する森を進んでいく三人の姿がそこにはあった。


「良かったね♪ダリア村のおもてなし♪」


 先頭を歩く少女----リーネが話す。金色の鎧を身にまとい、ミスリルの剣を持つ彼女は今、ご機嫌だった。


「そうですね。なんだか申し訳ないわ」


 うら若い女性----マリアが返事を返す。ローブと羽の形の装飾が目立つ杖を持つ彼女は、このパーティーの僧侶だ。

 僧侶といっても、周りからは聖女と呼ばれているのだが……。


「その分は働かなきゃな。村長さんもずいぶん困っているようだったし」


 そんな二人をまとめるのは、このパーティーのリーダーで、ここロミオス王国でも有数のSランク冒険者、アキトだ。

 冒険者はFからSまでのランクが付けられる。アキトは最も上のランクというわけだ。

 そんな三人は、ダリア村という村からの依頼で、災害級魔獣の水虎の討伐にやって来ていた。

 この水虎は非常に危険で、縄張りに入った生き物の水分を奪って殺害するという性質がある。

 縄張りに入らなければ無害なのだが、今回街道の一部に縄張りが被ってしまったということで、討伐依頼が出たのだ。

 既に冒険者パーティーが三つほど全滅させられている。なので、王国でもトップクラスのアキトのパーティーに白羽の矢がたったのだ。


「はいはーい。頑張りまーす」

「油断するなよ…(笑)。さて、どうやら近いようだな」


 アキトの声に気を引き締める二人。木々の奥から低い唸り声が聞こえてくる。恐らく水虎だろう。


「我らに神の祝福を。"プロテクション"」


 マリアが防御魔法を唱える。リーネを主に、アキトにも防御結界が張られた。

 流石は聖女と名高いマリアの魔法。無駄のない結界は、非常に硬く、滅多なことでは破れない。


「いつもありがと♪じゃあ行くね!」

「僕の援護が届く範囲までな!」


 リーネが先陣を切り、アキトとマリアが後に続いた。前方から何者かが迫ってくる気配を感じる。


「来たね!でりゃぁ!」


 姿を現した水虎にリーネが攻撃を浴びせる。だが、水虎というだけあって体も水で出来ている。リーネの剣は体をすり抜けて地面を叩きつけた。

 水虎が口を開く。リーネに齧りついて水分を奪うつもりのようだ。

 そこに炎の塊が飛来する。その炎は、水で出来た水虎の体の一部を蒸発させる。凄まじい熱量だ。


「助かった!ありがとアキト!」

「一旦退け!作戦がある!」


 アキトの言葉に従って後退するリーネ。

 体を削られたことに腹を立てたのか、アキトたちを睨み付けながら突撃してくる水虎。

 だが、アキトに焦りはない。


「いけリーネ!"付与エンチャント炎の刀身ファイアソード"!」

「汝に神の支援を。"身体増強フィジカルブースト"」


 リーネの力が上がり、持っている剣が炎を噴いた。


「いける!とおりゃぁぁっ!!」


 少し跳んで水虎の頭めがけて自身の剣を振り下ろすリーネ。魔法で強化されたその攻撃は、水虎にダメージを与えた。


「トドメは僕が。"超電撃ハイボルテージ"」


 天から極大の雷が降ってきて、水虎を包み込んだ。その魔法で、跡形も残さず消滅させる。

 アキトのパーティー、[剣と魔法の自由人]は水虎の討伐に成功した。


…………………………


「いやー、やっぱり反則だよね。アキトの無詠唱」

「私もその技術を知りたいですわ」


 水虎討伐の帰り道、アキトたちはさっきの戦いの話しに花を咲かせていた。

 今の話題は、アキトの反則並みの技術である無詠唱についてだ。

 魔法や魔術を行使するには、必ず呪文などの詠唱が必要になる。これは、上位の魔法になるほど長く複雑な術を唱えなければならない。そんな詠唱を、アキトは無しで魔法を行使できるのだ。

 

「やり方が分かればすぐさ。簡単だよ」

「アキト。今の言葉で世界の魔法使い全員を敵に回しましたわよ」


 マリアが杖でアキトを殴る。痛くはない……ごめん嘘。少し痛い。

 アキトたちは、討伐報告のためにダリア村に戻ってきた。村長に報告と、褒賞金を受けとるための手続きをする。

 ……村の子どもたちに笑われた。杖で殴られたところが青あざになっているからだ。


「本当にありがとうございました。これで町に安心して行くことができます」

「こちらこそ。あのおもてなし料理は美味しかったです」

「それはよかった。またいつでもいらしてくださいね」

「ええ。お言葉に甘えて」


 村長と挨拶を交わして、アキトたちのホームタウンへの帰路につく。


「さて、思ったよりも多いぞ!特別ボーナスだ!」

「やりー!パァーッと使いましょう!私今日の夕食は{黒猫の帽子亭}でとりたい!」

「いいですね!アキト。行きましょうよ!」

「だな。たまの贅沢もいいだろう!」


 女子二人組から歓声が上がった。

 アキトたちのパーティーはよく稼ぐのだが、アキトは倹約家だ。そのため、夕食はいつも国営の大衆食堂だった。美味しいのだが、物足りない感があり、リーネとマリアには不評だった。

 一方{黒猫の帽子亭}は、アキトたちのホームタウンであるパイオンで最も有名な酒場だ。

 値段は張るが、ボリューミーかつ絶品の料理を提供している。特に、〔マンドラゴラのクリームシチュー〕に、リーネがえらくはまってしまっている。


 今夜の夕食の話というなんとも和やかな空気が流れている。

 その時、マリアは気づいた。近くで魔物の気配がする。


「アキト。魔物が近くにいるわ。どうしよう?」

「何か分かるか?ここで討伐しておきたい」

「これは……ゴブリンね。数は二十」

「余裕じゃん。ねぇアキト。やっちゃお?」

「待って!人の気配もするわ」


 魔物に人が襲われている。一刻も早く助けなくては。

 アキトたちは、魔物に向かって進んでいった。その先で、彼らは運命の出会いを果たすことになる。


 

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