聖剣神話~一人の少女と絶望の神々~

黒メガネ

第0話 <かつての争乱>

 今より3000年ほど前、人類は絶滅の危機に瀕していた。

 突如として現れた邪神の軍勢に、人類はなすすべもなく追い詰められ、滅びようとしていたのだ。

 神や天使たちの抵抗も虚しく、徐々に滅んで行く世界。

 しかし、人類は希望を捨てていなかった。聖剣を扱える勇者がのこっていたからだ。


………………………


「人類は負けない!私たちの世界は!私たちで守るんだぁ!」


 全身全霊の一撃が叩き込まれる。今までの戦いで防御結界を破られた邪神王に、防ぐ手立てはない。


『なっ!?あり得ない…!ヒトにここまでの力があるだと…!?』

「皆の想いが私を強くする!邪神王!お前たちに世界は好きにさせない!」


 勇者の少女がもつ聖剣に光が集まり始めた。その光は、天使たちの支援を受けてなおも大きくなっていく。


『おのれえぇっ!矮小なる人間風情がぁ!』


 邪神王が叫ぶ。それだけで地が砕け、世界が壊れていく。

 だが少女は止まらない。止まれない。この一撃で、戦いに終止符を打つために。


「これで終わりよ!"希望の剣ソード・オブ・レイ"!」


 光の奔流は、邪神王を呑み込んだ。痛みで絶叫をあげる邪神王。そこに、女神たちが集まってきた。

 さっきの一撃は有効打ではあるが、致命傷には至らない。いずれ回復されてしまうだろう。

 その前に、弱っているところを封印するのだ。


『あ……がっ……。終わったと……思うな……。私は……いずれ……甦る……』


 神の力により、邪神王とその配下たちはクリスタルダンジョンの奥深くに封印された。

 邪神王の封印を見届けた後、勇者の少女もその場に倒れこんだ。

 天使たちが回復魔法を唱えるが、そんなもので治るような傷を負っているのではないと、誰もが気づいている。

 少女の目から、徐々に光が失われていく。世界の最高神、マーロが彼女に寄り添った。


「マーロ……様。やりました……よね?」

「うむ。お主はようやった!世界はお主が守ったのじゃぞ!」


 マーロの目から涙が溢れる。世界を救った功労者に何もしてやれない自分が腹立たしい。

 だが、そんなマーロに少女は一言。


「ありがとう……。マーロ様のおかげで……私は……、こんなにも……幸せでした……」


 少女の脳裏を巡るのは、これまで歩んできた道のり。多くの人と出会い、別れを繰り返してきた。そのどれもが、輝く思い出だ。


「マーロ様は……まだ仕事があるでしょう?私が……守った世界……よろしく……頼み……ますね?」


 少女の体から力が抜ける。笑顔のまま涙を一粒流す少女。

 ……心臓の音は……もう聞こえない。


「あぁ!任された。後はワシの仕事じゃ!……もう、ゆっくり休むとよい」


 マーロの目から流れ続ける涙。少女の最後の願いは、必ず果たさなければならない。



 ……その日、世界を脅かした邪神は封印され、世界に平和が訪れた。同時に、人々の希望たる少女もまた、その戦いで命を落とした。

 

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