宴
「……あの、エスエールさん」
「なんだ?」
「美味い飯を奢ってくれるのは嬉しいんですけど、懐的に大丈夫ですか?」
換金作業が終わった後、待ち構えていたエスエールさんに連れて行かれ、また高級店の個室に案内されていた。
今日は俺だけではなく、メリルたちも一緒である。
「はっはっは!! 大丈夫に決まってるだろ。これでもうちのクランは結構稼いでるんだ。俺も稼いでるし、割と貯金出来るタイプだしな」
「へぇ~~~~……そうなんですね」
「ふふ、今意外だな~って思っただろ」
「……すいません、思っちゃいました」
「はっはっは!!! 良いってことよ。それで、相変わらず探索は順調か?」
「そうですね。順調と言えば順調です。ただ、ちょっと探索の仕方は変えました」
「? どういう感じに変えたんだ?」
特に隠すことでもないため、今後のある程度の予定を伝えた。
「そうか……まっ、それも一個の手ではあるからな。ぶっちゃけた話、本当にダンジョンに変化してしまえば、それこそ中が大幅に変化してもおかしくない」
「すいません」
「謝る必要はねぇよ。お前らのランクで、歳であの地下遺跡に探索してるってだけで本当に凄いんだ。お前らは十分に冒険してるよ。ところで、本当に地下遺跡がダンジョン化しても、手を付けないのか?」
「なんと言いますか……未知の危険たっぷりな場所を探索するのは一旦止めようかなって思って」
正直、メリルと理由は違うけど、俺も地下遺跡? が完全にダンジョン化した場合、直ぐに探索しなくても良いと思ってる。
楽しそうではあるけど、もっと冒険したい場所はあるしな。
「そうか。良い判断だな。頼りにしてしまってる俺が言うのもあれだが、ラガスたちは結構探索に使ってる時間が長いだろ」
「それは…………かもしれませんね」
「だろ。それでもケロッとしてるお前たちは十分凄いが、知らないうちに疲れが溜まってるだろうからな……休むのも仕事の内ってやつだ」
ん~~~~、耳が痛い言葉ってやつだな。
ほら見たことか! ってどや顔してるメリルはスルーして、エスエールさんたちの進捗状況を聞かせてもらおうかな。
「エスエールさんたちの方はどうですか?」
「俺たちは……この前、アンデット系モンスターの中の大群に囲まれちまってよ。あれはマジで大変だったな」
「デスナイトの群れ、ですか?」
「デスナイトもいたが、デスナイトだけじゃなくてリビングアーマーとか、ボーン系とかリッチ系とか、本当にわんさかいてよ」
「…………ぷは~~~~~。でも、エスエールさんたちなら、楽勝だったんじゃないっすか?」
シュラの言葉に対し、エスエールさんは少し嬉しそうな顔をしながらも、直ぐに苦笑いを浮かべた。
「Aランクのモンスターはいなかったんだが、数体いるリッチの中の一体が厄介なアビリティを発動しやがってな」
「……エスエールさん、それはもしや死地の宴というアビリティでしょうか」
「良く知ってるなら、メリル。メリルの言う通り、一体のリッチが途中から死地の宴を発動しやがってな……そのお陰で、他のアンデット系モンスターたちが超元気になっちまってよ」
「もしかして、BランクモンスターがAランクモンスター並みの強さになったり、するんすか」
シュラが一旦食事の手を止めるほど話しに食いついた。
「はっはっは!!! そうなったら、今頃俺は腕か脚の一本は失ってるよ。でもまぁ……Dランクは完全にCランクレベルまで上がって、Cランクものモンスターも……Bランクに近いところまで強くなる。Bランクに関しては……一部の能力は、Aランクに匹敵するかもってところまで伸びたかな」
…………じ、地獄だな。
「久しぶりにパーティー全員で結構本気で戦ったな」
本気って言うのは……戦闘が終わった後の余裕がないぐらい、って意味だよな。
アンデット系モンスターのモンスターで、アビリティ……死地の宴、か。
俺も頭にインプットしておかないとな。
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