なんとなく

「ラガスさん」


「ん? レクティスか。一人か?」


「そうだ。何となくではあるがな。そういうお前も今日は一人なのか?」


「そうだよ。レクティスと同じく、なんとなくな」


面倒な可能性が頭に浮かんでしまった。


特に考えたところで、もうシュラが思い浮かんだ規模の事を、もしどこかのバカが起こした場合、本当にどうしようも出来ない……って考えてると、なんとなく一人でぶらっと街を散歩したくなった。


「そうか……どうせなら、二人で買い食いでもしないか?」


「良いけど、野郎と二人で買い食いなんかしても楽しくないと思うぞ」


「ふふ。かもしれないが、顔も知らない同業者と話すよりは楽しいと思ってな」


「そっか」


ん~~~……この前会ってから、一か月も経ってないよな?

他のメンバーもなのかは解らないけど、ちょっと目に見えて強くなったか?


「見た感じ、良い冒険が出来てるみたいだな」


「ラガスさんにそう言ってもらえると、本当に成長出来てるんだなと実感出来るな。実は、数日前にBランクモンスターと戦り合ったんだ」


「へぇ~~~、どんなモンスターと戦り合ったんだ?」


「エルダートレントだ」


「あの再生力と手数が半端じゃないモンスターか……無茶苦茶戦り辛かったんじゃないのか?」


「あぁ、本当にな……もっと強ければ、魔核を破壊せずに倒せたんじゃないかと嘆いた」


エルダートレントはその木製の体? だけでも価値が高い。

勝手に自分の体を伸ばして伸ばして、何本も生やすから、決して倒しても利益がないモンスターって訳じゃない。


ただ、トレントも含めて、あの再生力は異常だからな~~~。


「だが、正直……その後、数体のサイクロプスに襲われたのが、本当の修羅場だった」


「…………ヴェルデたちは、大丈夫なのか?」


「あぁ、俺も含めて全員生きている。四肢の欠損などはなかった。とはいえ……俺も含めて、あの連戦は……本当に死を覚悟した」


エルダートレントとの戦闘の後に、複数体のサイクロプスか……未開拓地に生息してる個体って考える、レクティスたちにとっては本当に一難去ってまた一難だっただろうな。


でも、全員無事で、肉体の欠損も無しって考えると…………普通に凄いよな?


「……もしかして、ランクアップしそうな感じか?」


「どうだろうな。正直、本当にギリギリだった。サイクロプス戦では、本当に上手く戦えたというか、最適解とも言える動きが出来た。ただ……同じ動きをもう一度出来るかと問われれば、おそらく無理だろう」


無意識に最適な動き、攻撃が出来た。

もしくは、体に無駄な力みがなくなったとか?


もしそうなら、確かにレクティスが思ったより自慢げじゃないのは納得だな。


「だから……まだまだ、エスエールさん達の後は追えない」


「地下遺跡の事か? まぁ、あそこもCランクモンスターがわんさかいて、Bランクモンスターも普通に生息してるからな」


「……少しだけ、話を聞いても良いか」


「ふっ、ふっふっふ。なんだ、やっぱり気になるんじゃないか」


少しだけレクティスをからかいながら、遭遇したモンスターの事を話した。

それに関しては、別に教えても面倒事に発展したりはしないしな。


「……って感じだね。まだまだ他のモンスターも生息してるだろうけど、未開拓地と違ってダンジョンみたいにトラップがあるのが本当に厄介なんだよ」


セルシアと一緒に、おそらく三十階層以上の階層に跳ばされてしまったことを話すと、レクティスは呆然としてグレーグリズリーの串焼きを落した。


「よ……よく、生きて戻ってこれたな」


「ぶっちゃけ、ルーフェイスが居てくれたからだよ。あのままセルシアと二人だけで行動してたら、戦闘力的にはともかく、眠気には勝てなかっただろうからな」


「やはり、恐ろしい場所、なのだな」


「だな~~~。ダンジョンと違って、一定の場所まで向かえば地上に戻れるわけじゃないからな……うん、レクティスも将来的に地下遺跡を探索するなら、絶対に帰還石を持ってた方が良いぞ」


「っ、あぁ。しかと覚えておこう」


まっ、もしかしたらその時には、完全にダンジョン化してるかもしれないけどな。

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