盲点
「人類が住める場所が減る、ねぇ……仮にそんな大事に発展したら、それを行った連中たちは歴史に名前が刻まれるほどの滞在人になりそうっすね」
「……そうだな。下手したら、殺人よりも質の悪い行為だな」
人が住める場所が減るってことは、結果として多くの人間を殺してるってことだし……うん、ぶっちゃけちょっと興味あったけど、絶対にやらない方が良いな。
「そもそもな話、ダンジョンの元となる建物を用意するのが難しいでしょうね」
「それはありそうだな。俺たちが探索してる地下遺跡も……元々地下遺跡だったのか、それとも超巨大な城だったかもしれない。ってことを考えると、簡単にそんな物用意出来ないか」
どれだけ土魔法が得意な人でも無理だろうな。
ぶっちゃけ魔法と建築は別だろうし……そうなると、ダンジョンの元になる建物を造るのに、普通に年単位の時間が必要になる……よな?
「……ねぇ。人工、ダンジョンを、造るのに、そんなに……大きな、建物、必要なの、かな」
「…………どう、なんだろうな。メリル、どう思う?」
「解りません。もしかしたら、そこまで大きい必要はないのかもしれませんし、元々ダンジョンの様な……迷路のような作りでなければいけないのかもしれませんし」
建物が、ダンジョンという存在に適合してるか否か……そういう問題まで生まれてくるのか。
「とりあえず、何も無い空間に建造物を建てようとすれば、それだけで怪しめば良さそうですね」
「だな。もしかしたら……俺たちが言わなくても、他の人たちが周囲に伝えてるかもしれないしな」
エスエールさんたちは、人工ダンジョンを造るにあたって発生するかもしれないデメリットを、よ~~~く理解してる筈。
ただ、あの地下遺跡を探索してるのは俺たちとエスエールさんたちだけじゃない。
未開拓地を拠点に活動してる他の大手クランはある。
というか、これから先他の街で活動してる冒険者たちが、あの地下遺跡を目的にカルパに訪れるようになるかもしれない。
「街じゃない場所に建物を建てようってなると、モンスターの妨害を気を付ける必要があるから、どっかのバカが実行しようとしても、上手く行かないとは思うけどね」
「同感ですね……どうしたのですか、シュラ。そんな珍しく考え込む様な顔をして」
「……………………ちょっと、思ったんだけどよ。デカい建物を建てるのが無理なら、既にある建物を使われると、結構ヤバいんじゃねぇか?」
「「「………………」」」」
や、やべぇ……それは確かに結構、かなり、本当にヤバいな。
既にある建物を使えば良い……盲点だった。
「随分と頭が回りますね」
「いや、なんかポッと頭の中に浮かんだだけだ」
「そうですか。それでも、バカな錬金術師たちにとっては使えるアイデアでしょう。既にある建物の内部に……地下にでも設置する場所を造れば良いのですからね」
メリルの言う通りだ。
新しい場所、部屋を造ればそこも建物の一部になる筈。
「…………やべぇもん、見つけてしまったのかもしれないな」
地下遺跡を発見した時、未開拓地に勝るとも劣らない面白そうな場所を発見したと思った。
ただ、まだ全部仮説にしか過ぎないけど、全てが解明されると、本当に大事件に繋がるかもしれない。
「ラガス坊ちゃま、逆にこう考えましょう。私たちがあの半ダンジョン化している、ダンジョン化が進んでいる地下遺跡を発見したからこそ、早い段階でバカがクソバカな行動を起こそうとする予兆などをまともな権力者に伝えられるのです」
「そ、そうか……そう、だな」
「つかさ、ラガスさん。俺とメリルはルーフェイスのお陰でラガスさんとセルシア様が飛ばされた階層まで、ノーダメージで移動出来たっすけど、普通に考えれば戦闘力皆無の錬金術師を守りながら、人工ダンジョン? の手掛かりになりそうな場所まで護衛し続けるのって、多分無理っすよ」
……やべ、それも盲点だった。
いやぁ~~~、なんだよなんだよ。今日のシュラはやけに頼もしいな。
よし、後で美味い肉を奢ろう。
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