一人じゃ何も出来ないが……

「他の生物に寄生、ねぇ……要は、一人じゃ何も出来ない個体ってことっすよね」


「そういう捉え方も出来る。実質、さっきの攻撃は少しオーバーキルが過ぎたからな」


わざわざ貫通力を強化した魔弾じゃなくても消し飛ばすことは出来た。

それはそうなんだが、とにかくあの寄生虫が恐ろしい存在なのは間違いない。


「シュラ、さっきまで俺たちが戦ってたオーガは、再生や高速回復といったアビリティは持ってなかったんだ」


「……珍しい特性を持ってる個体でもないんすね」


「おそらくな。このオーガに寄生していた生物が、オーガの体を操っていたんだ」


「操って回復力、再生力を高めてたってなると…………もしかして寿命、生命力を無理矢理使って回復してた感じっすか?」


「それだけじゃなく、通常種のオーガからはあり得ない身体能力を引き出してたのも、あの生物が寄生して操っていたからだろうな」


寄生虫に関して詳しい内容は知らないが、前世とはまるで違う世界っていうのを考えると、ただ寄生した生物を苦しめるだけじゃなく、寄生した生物の体を上手くコントロールして潜在能力? ってやつを引き出せるのがデフォルトなのかもしれない。


「それは……確かに、ヤバい感じがするっすね…………」


「はぁ~~~~~~、シュラ。あなた、まだ先程の生物の恐ろしさがまだ解ってないようですね」


「いやだ、だってなぁ……マジでラガスさんが瞬殺しただろ」


「確かにラガス坊ちゃまが瞬殺しましたが、問題はオーガが寄生されていたことです」


「そりゃ寄生? する生物なんだから当然………………そうか、オーガが気付かれずに? 寄生されたのはやべぇって話か」


「その通りです。オーガが警戒心の高いモンスターかと言われれば答えに困るところですが、ひとまずオーガに気付かれずに近寄ることができ、なんなく体内に侵入できる何かしらの力を持っている……かもしれません」


メリルの言う通り、どんな生物の体内に……どこからでも侵入出来るとは断言出来ない。


偶々オーガが寝てる時に耳から、もしくはケツの穴から入った可能性もある。

どれだけ堅い毛皮、皮膚を持っている生物であっても、何かしらの方法で絶対に侵入出来るってなると……本気で恐ろし過ぎる。


にしても……やっぱり、オーバーキルが過ぎたな。

あまりにも木端微塵に消し飛ばし過ぎて、鑑定して調べ様にも残骸が無いに等しいから、どう頑張っても調べられない。


「警戒心の強ぇモンスターなら、大丈夫ってことか」


「かもしれませんね。ただ、先程の生物はモンスターだけではなく、私たち人間にとっても非常に恐ろしい生物です。そこが大きな問題です」


「モンスターに寄生すれば、モンスターの基本スペックを大きく引き上げるし、厄介な再生力もある。んで、人間に近寄ってくる可能性も全然あるってわけか……確かに、そう考えるとある意味ヤベぇ存在だな」


「ようやく理解しましたか。ラガス坊ちゃま、ギルドはあの存在について把握してるでしょうか」


「……全く知らない、とは思わないかな」


未開拓地の探索が始まったのは、ここ数年の間とかじゃない。

把握してないとは思わないけど……一応、遭遇したっていう情報は伝えておくべきか。


「とはいえ、あまり多くはないと思うけど、未開拓地で野営をしてる人たちにとっては本気で警戒しなきゃいけない

存在になるだろうな」


「野営中の見張りって、マジで神経使う? っていうか、結構あんな小さな生物まで警戒するのはムズくないっすか?」


「シュラの言う通り、神経ゴリゴリに削れそうだな。理想は周囲にいないことを確認して、結界を展開するマジックアイテムを使うことだな。展開出来る魔術師がいれば、その人が展開すれば済む話だけど」


「元々未開拓地はハンターに成りたての者たちが来る場所ではありません。どちらかの手段は持っていますが……まだまだ謎が多い土地ですね」


まさに未開拓の土地。


まっ、とりあえず俺も含めて誰かが寄生されなかったことを喜ぼう。

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