規格外の広さ

「ほら、遠慮せず呑んでくれ」


「は、はい」


レグディスたちを宴会を楽しんだ日から数日後、地下遺跡の探索から戻って来たエスエールに食事を誘われた。


個室には豪華な肉料理だけではなく、匂いだけで上等過ぎると思われるワインも置かれている。

一応貴族の端くれだから、何となく超上等ってのは解るんだけど……俺なんか対してワインの味も解らない野郎が呑んでも良いのか、ちょっと躊躇してしまう。


「話は聞いてるぜ、ラガス。レグディスをきっちり鍛えてくれて、あいつらが満足出来る戦果を上げることが出来ただけじゃなくて、邪魔にならないようにエルダーリッチ以外のアンデットをぶっ潰してくれたんだろ」


ギルドからクラン、探求者にだけではなく、実際に戦ったレグディスたちから探求者のトップ陣にも話は伝わっているらしい。


「依頼を受けたハンターとして、当然の事をしたまでです」


「なっはっは!!! 相変わらず謙虚だな~~~。けど、功績と言える功績なのは理解してるだろ」


「……はい」


「この料理もワインも、その功績を讃えての俺からのプレゼントだ」


「…………ありがとうございます」


後でメリルから何か言われそうではあるけど……エスエールさんがここまで言ってくれたのであれば、素直に受け取ろう。


「しっかし、同じBランクモンスターやルビークラスのハンターを従えてたエルダーリッチ……改めて聞くと、背筋が震える個体だぜ」


「やはり、エスエールさんから見てもそう思いますか」


「おぅよ。こっちもこっちでまぁまぁ大変だったんだが、さすがは未開拓地ってところか。地下や地上関係無しにヤバい個体はうろちょろしてるな~~」


「……そうですね」


そういえば、同族たちに刺青による強化を施していたコボルトシャーマン……最後の最後に、何かを召喚? しようとしてたよな。


あの時は本能的にヤバいと思って未然に防いだけど。


「そちらの地下遺跡の探索はどうでしたか?」


「それなりに探索したつもりだったんだけどよ、うちの斥候曰く、まだ十分の一も探索できたか怪しいらしいんだよな~~」


「エスエールさんたちが探索して……まだ十分の一も」


「うちのクランだけじゃなくて、他のクランのトップ連中も探索してるぜ? なるべく衝突しないように探索してんだが、そいつらが探索できたであろう分も含めて、らしいぜ」


………………お、恐ろしいの一言だな。


遺跡も並の攻略難易度ではない筈。

それを考えれば……広さも含めて、俺たちが先日探索していた墓場と同じぐらいの難易度になる、のか?


「それに、ダンジョンみてぇに戦闘で傷付いた壁とか床は時間経過で元に戻ってるみてぇだな」


「ほ、本当、ですか」


「おぅ、本当も本当、マジの大マジだ。ついでに、設置されてた筈のトラップまで元に戻ってやがる」


「…………それはもう、ダンジョンと読んで差し支えないのでは?」


壁や床が修繕されて、発動したトラップまで元通りになるのは、どう考えてもダンジョンにしか思えない。


「俺も最初はそう思ったぜ。でもさ、ダンジョンに入ったことがあるなら、あの入る時の変な感覚、解るだろ」


「はい、解ります」


「あれがなかったんだよ」


「それは…………そう、でうすね。確かにダンジョンと読んで良いのか否か、悩みますね」


ダンジョンに入る時、まるで別世界に入り込む様な不思議な感覚を毎回体験する。


あれは一種の、ダンジョンか否かを調べる指標になるっていうのを考えると……例の地下遺跡はダンジョンではない、のか。


「後な、いくつもの階層? がある感じなんだけど、特に各階層ごとに現れるモンスターのランクが統一されてたりはしてないんだよ」


「そこはダンジョンらしくない点ですね」


「だろ。つっても、地上に戻る際に浅い階層に普通にモンスターがいたから、ダンジョンじゃねぇのかそれともダンジョンなのか……本当に判断が難しいぜ」


ダンジョンのようで、ダンジョンではないかもしれない地下遺跡、か……ヤバいな。

話を聞いてると、ワクワク感が湧き上がってきた。

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