限りがある
「おはようございます、ラガスさん」
「ど、どうも……おはようございます」
なんでこんな朝からギルド職員が俺たちが泊ってる宿に来てるんだ?
何か問題が起こったとしても、俺達以外のハンターを動かして解決出来ると思うんだが。
「えっと、いったい俺たちにどういった御用で?」
「是非とも、ラガスさんたちに発見した地下遺跡の探索をお願いしたく、参りました」
……え、それだけの為にわざわざ?
「な、なるほど。でも、現在新しく発見された地下遺跡は、探求者やその他のクランに所属するハンターたちが探索に参加してると聞いてますけど」
「えぇ、その通りです。ギルドとしても有難い限りです。しかし……ギルドは、是非ともラガスさんたちに探索を行って頂きたいと願っています」
何故そこまで俺たちを評価してるんですか、って質問をするのは野暮と言うか、他のハンターが聞けば嫌味になるんだろうな。
俺らの戦力に加えて……一番の理由は、ルーフェイスの力をフル活用したいってところか。
「ギルドが俺たちを評価してくれてるのは嬉しいのですが、当分はあまりその地下遺跡探索する予定はないんですよ」
「……ギルドとしましては、成果次第ではありますが白金貨相当の報酬を用意するつもりです」
白金貨相当の報酬、か。
評価してくれてるのは嬉しいんだけど、特に惹かれないかな~~。
「申し訳ないですけど、今特に金には困ってないんで、遠慮させてもらいます」
「っ…………かしこまりました。お気持ちが変わりましたら、お声掛けください」
随分とあっさり引き下がったな。
もしかしたら、俺が魔靴で儲けてるのも知ってそうだな。
「あっさりと引き下がりましたね。ラガス坊ちゃまや私たちの戦力、ルーフェイスの探索力を使えるとなれば、もう少し粘ると思ったのですが」
「つ~~かよ、ラガスさんの力を借りたいって思ってるくせに、白金貨相当が報酬って、ちょっとしょぼすぎるんじゃねぇの?」
「別にそんなことはないと思うぞ、シュラ」
「? そうっすか???」
「だって、言っちゃあなんだけど、俺らまだルビーランクだろ」
シュラやメリル、セルシアもソロでBランクのモンスターを倒せるだけの実力がある。
俺やルーフェイスも同じで、ルーフェイスは探索力もピカ一。
総合的な戦力を考えれば、シュラの言う通り……かもしれないけど、やっぱり冷静に考えるとギルド側はしっかりと俺たちのことを評価はしてくれてる。
「……そう言えばそうだったすね」
「だろ。俺達がまだルビーランクってことを考えたら、寧ろ良い額だぞ」
「ん~~~~……そうかも、しれないっすね。けど、個人的には足りないんじゃねぇの? って思うっす」
「そこに関しては、私も同意見です。とはいえ、白金貨相当額が限度なのも解りますが」
「???」
何で、って顔だなシュラ。
この街に居る強くて、探索に優れてるハンターは、俺たちだけじゃないんだよ。
「シュラ……仕方ありませんね。まず、ギルドの財力は無限ではありません。ハンターたちに特別報酬として支払える金額にも限りがあります」
「メリルの言う通りだ。そんな中で、俺らに白金貨相当を報酬として用意してくれてるのは、かなり好待遇と言えるぞ」
「付け加えると、この街には私たちだけではなく、エスエールさんがトップを務めるクラン、探求者以外にも未開拓地や遺跡の探索に優れたクランがいます」
「……つまりあれか。報酬を支払うクランやハンターがいるから、俺らだけにそこまで金を使えないってことか」
「そういう事です」
納得してくれてなによりだ。
あっ、そういえばメリルに訊いてなかったな。
「メリル、勝手に決めちゃったけど、良かったか?」
「うん、大丈夫、だよ。気には、なるけど、今じゃないと、思う……かな」
含みがある感じの言い方だな。
もしかして、セルシアの中で何か感じる部分があるのかもしれないな。
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