関係的に……

「その向上心に惚れて、ラガスさんに告白するような女子はいなかったの?」


話がやや一周した。

セルシアがパートナーであることは解った。

ただ、フィーマにはやや疑問に思うことがあった。


「フィーマ、ラガスさんのパートナーはセルシアさんなのですよ」


「それはちゃんと覚えてるって、鳥頭じゃないんだからさ。でもさ、ラガスさんもちゃんと貴族なんでしょ」


「…………そうですね。ラガス坊ちゃまは、ちゃんと貴族ですね」


中々の間を置いてからその通りだと答えたメリル。


男爵家の令息。

それは紛れもなく貴族と言えるのだが、ラガスの場合あまりその通りだと言える要素が多くない。


「貴族ってさ、嫁が一人って決まりはないんでしょ。それなら、えっと……あれだよ、側室を狙って近づいてくる人もいるんじゃないの?」


ようやく、ファールナは何故似た様な質問を再度したのか理解した。


ファールナも貴族ではないが、貴族の男が複数の妻を持つことは、そこまで珍しい事ではないということぐらいは知っていた。

そしてラガス自身は男爵家の令息という立場であっても、その強さは超規格外。

魔靴というマジックアイテムを造れる技術力なども考えれば、男爵家以上の立場を持つ令嬢たちが群がってもおかしくない。


「それは…………なくは、なさそうですね。メリルさん、その辺りはどうだったのでしょう」


「確かにラガス坊ちゃま自身の価値は、男爵家の四男という立場に収まることはないでしょう。しかし……まず、セルシア様は公爵家の方です」


公爵家とは、貴族の中でも王家の血統が混ざることが珍しくなく……貴族の中でも、基本的にトップオブトップの家。


「セルシア様自身は非常に温和な方ですが、必要以上に恐れてしまうのは珍しくありません」


「ふ~~~~ん? セルシアさんが超強いこともあって、そうなるものなのかな?」


「そこもあるでしょう。そして……おそらく、これがメインというべきでしょうか。先程、ラガス坊ちゃまがセルシア様の婚約者候補だった方を叩き潰したことを覚えているでしょうか」


「勿論覚えてるよ。やっぱラガスさんって凄いんだな~って改めて思った」


フィーマの言葉に、ファールナも同意しながら頷く。


「そう言ってもらえると、従者である私としては幸いです。ただ、男爵家の令息が、侯爵家の令息を……一応公式と言える場で叩き潰した……死闘を演じた訳ではなく、完膚なきまでに叩き潰し、圧倒的な差を見せつけたのです」


「……っ、なるほど。他の学生たちは、その光景を見て凄いという感情よりも、恐怖が勝ってしまったのですね」


「えぇ、そうです。特に一年生の間は、多数の生徒たちと関わることはありませんでした」


とはいえ、ラガス自身がコミュ障だった訳ではなく、兄のアリクや姉のクレアとの交流から上級生たちとはそこまで仲が悪くはなく……公式の場で実績を出し、三本角のオーガジェネラルが率いるオーガの大群の殲滅の主役になったことで、徐々に溝は埋まっていった。


「ですが、その後は色々とあってその距離も縮まっていったのですが、ラガス坊ちゃまの実力は……入学時から、学生レベルではありませんでした」


「学園に、入学、してから……体も、大きくなった、よね?」


「セルシア様の言う通り、体が大きくなれば、接近戦も得意であるラガス坊ちゃまの戦闘力は確実に増します」


仲間内であれば、シュラが一番大きな体格を有しているが、ラガスも決して小さくない。


「それもあり、他の学生たちからすれば……ラガス坊ちゃまは同級生というよりも、教師に近い存在でした」


本気で強くなりたい。

上を目指す為に、頭を下げて教えを乞うてくる相手を、ラガスは拒むことはなかった。


そんな流れもあって、ラガスと同級生たちの関係は学生と教師。


そうなってくると、女子生徒たちも意欲的な生徒たちと同じく、ラガスに教えを乞うことはあっても、そういった感情を向けることは自然と起こらなかった。

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