とりま好印象?

刺青コボルトたちとの戦いを終えた翌日、適当に依頼を受けながら珍しい、もしくは強いモンスターを探しつつ、遺跡があれば何か人間が不利になる……それか残しておくとヤバい物がないか探しながら探索しよう。

そう思ってハンターギルドの中に入ると、直ぐに職員から声を掛けられた。


自分たちに受けてほしい依頼でもあるのか?

そう思って奥の個室に案内されると、そこには虎の獣人の男性が座っていた。


「ッ……」


狼竜眼で視ずとも、一目で解る。

この人……超が四つぐらい必要な強者だ。


「こちら、クラン名探究者のクランマスター、エスエール様です」


「エスエールだ。まぁ、座ってくれよ」


「……はい」


クラン、探究者。

カルパに拠点を置いており、周辺の未開拓地域を文字通り探求するクラン。


そのトップに立つのが、目の前に座っている虎人族のハンター、エスエール。

ランクは……驚異のプラチナ。


「えっと、俺たちに用がある……という事で良いんですか?」


「おぅ、その通りだ」


「それなら、自分たちが泊っている宿に来てもらった方が早かったと思うんですが」


有名クランであれば、ここ最近訪れた新顔のハンターがどの宿に泊まっているのか突き止めるくらい、本当に朝飯前だろう。


「それもありだと思ったんだけど、結局そっちに行ってもギルドの行為場所であっても、噂にはなるだろ」


「それはまぁ……はい、そうですね」


じゃあ、部下を寄越してそちらのクランハウスに案内してくれたら良かったのでは? って思ったけど、結局噂にはなりそうだし……こうやってトップが自ら動いてくれてる? ってことを考えれば、ツッコまないほうが良いよな。


「ところで、自分たちにいったい何の用でしょうか」


「…………一応、一応クランのトップとして訊いとかなきゃなんねぇから訊くぜ。お前ら、うちのクランに入らないか」


「丁重にお断りさせていただきます」


「お、おぉぅ……そ、そうだよな」


一応の体ではなく、本当に無理だと思って……ダメもとで言ったんだろうな。

変に期待してなかったようでなにより。


「申し訳ないですけど、特にメリットがないので」


「いやぁ~、そうだよな~~。お前らの場合、ハンターとして活動してるけど立場はあるし、パーティーメンバーは四人でバランス取れてるし、従魔にデケぇ狼もいるしな」


「理解してもらえてるようでなによりです」


「……はは! 歳の割にしっかりしたリーダーだな」


そうなのかな? そんな風に褒められることは少ないから、割と嬉しくはあるな。


「どうも」


「んじゃ、本題に入るぜ。うちは……是非、若くて強い連中と一定期間の間、お前らと共に行動してほしいと思ってな」


……面倒を見てくれ、という事か?

クランのトップや幹部は色々と忙しいだろうから、そこまで手が回らないってのはおかしくないとは思うけど……だとしても、カルパに来てまだ一か月も経ってない新顔の俺たちにそんな事を頼むか?


「……私たちを起爆剤としても使用したい、ということでしょうか」


「はっはっは!!! 理解が早くて助かるぜ!!!」


「起爆剤、ねぇ……ん? としてもってことは、他にも何かあるんですか」


「うん、まぁな。こんな事をクランに所属しているハンター以外に頼むのはあれだと思ってるんだけどな……ほら、昨日お前らが刺青コボルトとかいるだろ」


「はい、あんなコボルト初めて見たので、結構びっくりしました」


いや、本当に嘘じゃない。

割と真面目にびっくりした。


そりゃコボルトって全体的にマッチョ系のモンスターだけど、通常種の刺青コボルトでさえ、筋肉がかなりパンプしてたんだ。

ギャップ……ではないけど、とりあえずあれの初見は誰でも大なり小なりびっくりすると思う。


「元々カルパ周辺を探索する冒険者たち……特にルーキーたちの生還率はあまり高くない。だからこそ、良い感じに育ってきたルーキーたちがもう一歩先に行って安定感が出るまで、なんとか無事に育ててぇんだよ」


なる、ほど…………いやはや、思ってた以上に部下思い? の人なんだな。

とりあえず、今のところ好印象、かな。

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