面倒の極み

「Aランク並みの攻撃、か…………本当に、お前たちがその刺青コボルトたちを発見してくれて助かった」


「運が良かっただけですよ」


「……そうかもしれないな。ラガス達のような面子が見つけて対応しくれたからこそ、余計な被害が出ずに済んだ。内容としては、まずギルドの方に報告が欲しいところだが、お前たちほどの戦力を持っているメンバーなら、そのまま討伐した方が早いだろうからな」


確かに刺青コボルト一体だけでも、多分Dランク相当の戦闘力はあった。

それに加えて、一般の刺青コボルトが数十以上……上位種もちらほらいたし、幹部二体とボス一体? 一般常識的にあれはヤバい部類の個体。


五組ぐらいのパーティーが合同で討伐するのがベストだっただろうな。


「……ラガスたちは、当分の間ここで活動するのか?」


「はい、そうですね。やっぱ、まだ開拓されてない場所ってワクワクするんで」


「ふ、ふっふっふ……そうか。本当にハンターらしいセリフだな。まぁ、お前たちなら無謀、蛮勇、強がりなんて関係なさそうだから信用出来る」


高評価なのは普通に嬉しくはある。


「……お前たちがここで活動してる間、何か問題が起こったら頼っても良いか?」


「ハンターギルドに属しているハンターなんで、それは別に良いですけど……俺たちみたいなルーキーに頼ったりしたら、大手のクランとかから苦情が飛んできたりしませんか」


マジでそこは構わない。

組織に属してるんだから、ある程度理不尽でなければ仕事はする。


でも、組織には他の面子……先輩たちがいる訳だから、できればそういった出来事で変に絡まれたくない。


「上の連中たちは基本的に問題無いだろう。お前たちを勧誘したりはするかもしれないがな」


「それ、断っても良いんですよね」


「勿論だ。大手のクランだからといって、フリーのハンターを強制的に加入させる権利はない。ただ、彼らに勧誘する自由はある」


「解っています」


さすがにそこら辺までどうにかしてくれとは言えない。


「ただ……まぁ、あれだ。上の連中はバカなことしないと思うが、下の連中は解らん」


「上の人たちが止めたりは?」


「あんまり縛ったりお前たちに迷惑をかけないようにって動いたら、それはそれでラガスたちへの嫉妬心が強くなる」


…………あれだな。俺が怒っても良い内容なんだろうけど、上が……中間管理職が悪いって訳じゃないからな~。


学校の先生とかと一緒で、纏めなきゃいけない連中の性格までどうにかできるわけじゃないんだもんな……まっ、殴ったらストレスは消えるか。


「それ、上手いことあれしてこうすれば殴っても良いんですよね」


「殺したり四肢を欠損しないでくれたら、それで良い。貴族出身の君たちからすれば、どうしてわざわざ自分たちの絡みに来るのか意味が解らない、という気持ちの方が大きいだろ」


あれあら、無茶苦茶こちらの気持ちを理解してくれるじゃないですか。


ギルドからの頼みも……この人経由なら、それなりに聞いて対応しても良さそうだな。



「やったっすね、ラガスさん!! ギルド職員公認で、面倒なバカは殴れるようになったっすね!!」


「おぅ、そうだな。とりあえずあれだ、向こうから手を出させるか、訓練場に移動すればもうこっちのもんって感じだな!」


会話内容が物騒過ぎるって?


そもそも憧れてる人が注目したり気を遣ってるからって理由でダル絡みしてくる方が物騒って言うか、面倒の極みだから仕方ないんだよ!!!


「メリル! 乱闘が始まっても止めるなよ!!!」


「止めませんよ。あなたの言う通り、ギルド職員が構わないと言ったのですから。それに……どちらかと言えば、私もラガス坊ちゃまをバカにする様な連中は叩き潰したので……二人よりも先に、私が動くかもしれません」


おぉ~~~~、メリルがいつになくマジだ!!


普通に仕事を受けて冒険出来てればストレスなんて溜まることはないけど……ふふ、見方を変えれば悪くない状態になったかもな。

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