褒め過ぎ? そんなことはない

「一部の冒険者からはモテモテでしたね、ラガス坊ちゃま」


「からかうなっての。つ~か、本当にモテてるのは多分俺じゃなくてルーフェイスだろ」


「ワフゥ?」


ギルドの外で待っててくれてたから、中での話し声は聞こえてなかったか。


まぁ、特に俺が絡まれてた訳じゃないからな。


「嗅覚と聴覚が優れていて、騎乗して高速で移動する事が出来る。そして圧倒的な戦闘力を持ってる。見た目通り接近戦が得意なだけじゃなくて、遠距離攻撃も行える……本当にパーフェクト過ぎるからな」


「~~~~~~!!」


おっと、褒め過ぎたか?

くすぐったいって、ルーフェイス。


「戦闘力が高いだけではなく、見張りとしても有能過ぎますからね。立場上、夜の間は見張りをしないという選択肢はありませんが、寝ている間はルーフェイスのお陰で本当にぐっすりと寝られています」


「同感だな。それに、ルーフェイスは俺たちと違ってスタミナも半端じゃない……というか、まだルーフェイスを狙った襲撃がないってのがちょっと不思議っすね」


「……うん。ちょっと、不思議」


ルーフェイスを狙った襲撃、か…………確かに、一応ブラックウルフっていう体で誤魔化してはいるけど、ギルドには嘘付いたら後々面倒になるからちゃんと狼竜だって説明してるから…………うん、考えたくないけど、どっかで情報が零れてしまっていてもおかしくないんだよな。


それに墓場では普通に狼竜の状態で活動してもらってたし、それを見た冒険者から色々憶測が広まっていてもおかしくない。


「単純に、ルーフェイスの強さや存在感にビビってるって可能性もあるんじゃないか?」


「ラガス坊ちゃまも一応貴族の令息ですからね」


「おいこら、一応ってなんだよ一応って」


「とはいえ……やはり公爵家のご令嬢であるセルシア様が共に行動しているから何も仕掛けない、という可能性が高いかと」


おいスルーかよ。

けど、実際問題セルシアの実家の力の方が大きいかもな。


男爵家ぐらいなら、まだハンターたちも男爵家のガキ如きが嘗めてんじゃねぇぞ!!! って粋がれるかもしれないけど、公爵家ってなるとな……どんなバカでも、下手すれば消される! って想像出来るよな。


正真正銘のバカなら、ハンターとして活動してる奴なんて、落ちこぼれだからそんな活動してるんだ!! だからどうこうしても問題ねぇ!! ってアホ過ぎる考えに至りそうだけども。


「まっ、どちらにしろ俺たちにとっては、変に動かなくて良いから有難いっすけどね」


「それもそうだな」


キメラタコを造ったクソマッドサイエンティスト野郎とかがルーフェイスの正体に気付いたら、金に糸目を付けず奪いに来そうだが……まぁ、そうなったらあいつらに頼むだけだけどな。


「因みにですが、他のハンターから一時的にとはいえ一緒に活動しないかと頼まれた場合、どうするのですか?」


「一日や二日程度なら、別に構わないかな。勿論、多少は俺たちに利があるかないかは考えて決めるけど」


同業者たちともそれなりに仲良くしたいって考えてるのに、全部の誘いを断るとか……行動が矛盾してるからな。


「……私としては、ラガス坊ちゃまと関わって、その事を変に言いふらしたりしないかが多少心配ではあります」


「そこまで心配してくれてるのは嬉しいけど、そこまで気にしてたらハンターとしてやってらんないよ」


全くその通りって訳じゃないけど、ハンターとしていろんな街で活動する旅ってのは、ユー〇ーバーとかイン〇ルエン〇ーとかの活動してるのと同じなんかな。


その活動内容次第で……正当な内容が広まる場合もあれば、ひねくれた考えや事実無根な内容が広まる場合もあるってのを考えると、やっぱり似てるかも。



だから……こういう目の前の状況を見逃すのは、良くないんだろうな。


「今夜だけだって言ってんだろ。ちゃんと朝には家に帰してやるからよ」


「嫌だって言ってるじゃないですか!!!これ以上そんな話ばかり続けるなら、出禁にしますよ!!!!」


……マジで、もうちょい考えてナンパ出来ないのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る