失禁の洪水は避けたい
カルパに到着してから翌日、最初はとりあえずハンターギルドで何かしら適当な依頼を見つけようかと思ったけど、メリルに却下された。
ハンターギルドに向かうのは素材の売却時だけで良いと。
「メリル……もしかして、初っ端から問題が起こると思ってるのか?」
「可能性は決して低くありません。高貴で美しい容姿を持つ女性とメイド服の女性。そして強さの底が測れない男性に鬼人族の男性……その四人に従う巨狼。既に、私たちがラガス坊ちゃま率いる一行という内容は知れ渡っているでしょう」
「つまり、俺たちが依頼書選んでる時、手を伸ばした依頼書に、わざと手を伸ばす輩が現れるかもしれないと」
「その通りです」
本当にちっちゃい嫌がらせではあるけど、それはそれでイラっとする行為ではあるな。
「俺、余裕でそいつをぶん殴れますね。あっ、殴っちゃダメだったっすね」
「そうですよ、シュラ。邪魔をしたことを後悔させる殺気を浴びせる。手を出されていない状態であれば、それが限度です」
「んじゃ、喧嘩売ってきたのを本気で後悔させるぐらいの殺気をぶつけてやらないとな」
「…………お前ら、別にそこを張り切るのは咎めないけど、殺気を飛ばすなら喧嘩を売ってきた奴だけに集中しろよ」
周囲の同業者たち全員が失禁したら……うん、さすがに臭い。
「解ってるっすよ。って、早速客っすね」
みたいだな。
フォレストオークが二体……体は、これまで見てきたフォレストオークよりも少し大きい。
「一体は俺が相手する」
「んじゃ、もう一体は俺が相手するっす!!」
「適当にやってくれ」
さて……どれだけ違うのか、確認させてもらおうか。
「ブモォオオオッ!!!」
「ッ!! ……なるほど。体が大きいだけじゃない、か」
「っ!? ブバッ!!!!」
「切り替えもそれなりに早いな」
初撃を受け止めてみたが、体が大きい分、しっかり攻撃力も上がってる。
というか、あの木の棍棒……これまで受けてきた棍棒と比べて、ちょっと堅いか?
ただの木の棍棒だし、デザインが一切ないのを考えれば、適当に作ったやつだよな……そこら辺の木の質まで違うってことか。
「ブルゥアアアアアアアアッ!!!!」
「……棍棒捌き? も中々のもんだな。この個体だけはあれなのかは解らないけど、やっぱり色々と普通ではないっぽいな」
後ろに大きく下がれば、ダッシュで追撃して来るのではなく、棍棒に闘気を纏って振り下ろして攻撃してきた。
俺にとってはそこまで脅威じゃないけど、オークが放った遠距離攻撃と思うと、それなりに厄介、もしくは恐ろしい部類に入るだろう。
「うん、もうなさそうだな」
「ボッ、ブ……ァ」
とはいえ、死角から撃った魔弾には反応出来なかった。
「フォレストオークでこれだけ違いがあるなら、ハンターたちが帰らなくなる理由も解らなくはないな」
「お疲れ様っす!!」
「おぅ、そっちも終わったか。それで、どうだった」
「…………多分、以前戦ったフォレストオークより強かったす!」
こいつ……あんまり考えずに戦ったな。
適当にやってくれって言ったのに……まぁ、以前戦ったフォレストオークより強かったという言葉に嘘はないだろう。
「ラガス坊ちゃま。私の眼から視ても、二体のフォレストオークはこれまでのフォレストオークと比べて身体能力、技術、共に勝っているかと」
「私も、同じ感想、だよ」
『僕も同じ感想だよ!!!!』
メリルとセルシア、それにルーフェイスまで同じ感想なら、もう完全に疑う理由はないな。
まだ、なんで他の場所に生息する個体と違うのかまでは解らないが……とにかく、楽しくなってきたのは間違いないな。
「……ラガス坊ちゃま。楽しくなってきたのは解りますが、あまり派手に暴れて木々を大量に破壊するような行為は避けてくださいね」
「解ってる解ってる」
森林破壊は好まないけど……この森の生命力的に、一か月もあれば元通りになりそうだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます