咄嗟のナイス判断
「紫電崩牙を使うのか?」
「それは、使わない。やれる、ところまで、やる」
「……分った」
「ガァアアアアアアアッ!!!!」
こっちが構えるのを待たず、トロールが先制。
あの斧……どう考えても、冒険者を殺して奪ったな。
「危ないと思ったら、直ぐに使えよ!」
「うん、解って、る」
ちょっと心配ではあるが……まっ、魔弾を浮かせて、いつでも対処出来る様にしておけば良いか。
「ラガス様、もしや速攻で終わってしまうのではないでしょうか」
「…………いや、そうではなくなったみたいだぞ」
一人だけで跳び出してきたセルシアを相手に、トロールは油断しきって……はいなさそうだが、体に魔力を纏っていなかった。
加えて、身体強化系のアビリティも使っていない様子。
小さな人間なら、素の身体能力だけで倒せると油断してたのかもしれないな。
「ん~~、でもセルシア様が有利な状況じゃないっすか?」
「片腕でも斬り落としてたらそうかもしれないけど、切傷だけだとな……ちょっと微妙なところだな」
最初から魔闘気を纏い、強化系のアビリティを発動したから多数の切傷を与えることが出来た。
欲を言えば、トロールが油断している間に、目をぶった斬れたら勝率は一気に上がってたな。
ただ、トロールはオーガとかと似て、回復力が高い。
大量に失血している訳ではなさそうだから……あまり大きな痛手ではなさそうだ。
「一方的ではありませんが、それでも……スピードは、ややセルシア様の方が上……ではありませんね」
「みたいだな」
トロールも強化系のアビリティなどを使い始めたことで、身体能力では上をいかれた。
今はこれまでの戦闘経験からの予測を利用して攻撃よけ、斬撃をぶちかましてるだけ。
あまり余裕がある状況とは言えないな。
「……やっぱりというか、セルシア様……どうやら楽しんでるみたいっすね」
「あぁ~~……やっぱりか。いや、確かに向こうの方が身体能力が高いって言っても、セルシアの速さと読みがあれば……まだ大丈夫、か?」
今までさんざん無茶してきた俺がこんなに心配するのはあれかもしれないけど……あれだよな、よそはよそ、うちはうち的な感情だ。
自分の身は死ななければどうでも良いけど、セルシアの場合はそれなりの傷を負うことすら超心配。
……でも、今の段階で加勢に入ったら絶対に怒られそうだからな~。
「大丈夫かと思いますよ。どうやら勝負に出たようですし」
ライトニングアクセルか。
そこまでスピードを強化すれば、そうそう捕まることはない。
でも、トロールの暴れっぷりを見てる限り……一発でも食らえば、形勢逆転は間違いなしなんだよな。
逆にセルシアの攻撃は皮膚や肉こそ斬り裂く、あまり深くない。
紫電崩牙を使ってれば骨ごとバッサリと斬れて、肉も容易に貫けると思うんだが…………良くないな。
心配具合が親レベルになってる。
「おぉ~~、本当に勝ちそうっすね」
「だな」
攻撃の多くは上半身を狙っていた。
だが、ここに来てスライディングでトロールの斧撃を躱し、片足を斬る。
そして流れるような動きでもう片足も斬った。
「ッ!?」
両足……膝付近を斬られたことで、トロールの膝が地面に付いた。
「終わ、り」
そして最後は頭部目掛けて突きを放った。
これで終わり、見事ソロでBランクモンスターでトロールを討伐……とはならず、頭部に魔力が集中。
セルシアの刃は皮膚と肉は貫いたが、脳までは達していなかった。
不味いと思い、魔弾を動かそうとしたが、トロールが刺突に耐えて反撃する前に、細剣から大量の雷が体内に流し込まれる。
「ガァアアアアアアアアアアアっ!!!!!?????」
雷を体内に流し込まれたトロールは……一言で言えば、悲惨。
目から雷が零れるとか、もう見てるだけで恐ろしい。
「……危なか、た」
肉や内臓はアウトになったが、セルシアは本当にソロで紫電崩牙を使わず、Bランクモンスターを倒してしまった。
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