それがある意味特別

食堂でがっつり昼食を食べていると、あっという間に騎士たちに囲まれた。


そしていつも通り、何故この歳でそんなに強いのか、という質問をされた。

当然、普段と変わらない説明を行う。


真面目に訓練と実戦を始める時期が早かった。

訓練だけに時間を費やせる環境だった。


話す事は、いつもと全く変わらない。

正確には他の理由もあるが、そこまで話す必要はないだろう。


「いや、でもよ……もっと他の特別な訓練方法とかないのか?」


「そんなのないですよ。強いて言うなら、十歳にも満たない年齢から、モンスターと何度も何度も戦うのが、ある意味特別な訓練方法と言えるかもしれませんね」


訓練と実戦では、経験値に差があると言っても過言ではないと思う。


訓練を疎かにして、実戦を乗り切れるとは思わないが、一の実戦は十の訓練に勝る……のは言い過ぎか。

でも、五の訓練には勝るよな。


「な、なるほどな……一応、納得は出来る」


いや、出来てない顔じゃないですか。


そりゃ自分でもぶっとんだ事を言ってる自覚はありますよ。

十にも満たない子供に実戦を強いるとか……完全に毒親だしな。


仮に俺みたいに子供自身が望んでいたとしても、それはそれで心配が勝ってしまうだろうし。


「臆病な考えかもしれないですけど、いざ実戦を始める時……遠距離からの攻撃メインで戦えば、多少恐怖は和らぐと思います」


「ふむ……それに関しては深く納得出来る。それでも中々一歩踏み出せない者もいるが、大なり小なり楽にはなるだろう」


ベテランの風格が漂う騎士さんは、俺の考えに同意してくれた。


騎士であれば一歩前に出てぶつかり合うべき!!! とか言うのかと少々身構えてたけど、そこまでお堅くはなかったか。


「どちらにしろ生物を殺したという、あの何とも言い難い感覚は味わえます。その点を踏まえても、魔弾という技術は早い段階で身に付けるべきだと考えています」


「ラガスの切り札、だよな?」


「そうとも言えますね」


魔弾のアビリティを指しているのであれば、獣魔法などと同じ切り札と言える。


「大会でも度々観ていたが、一般的な魔法使いが使う者と比べて、明らかに練度が違う」


「いやぁ~、マジでそれですよね。正直、ラガスが一度に扱える魔弾の数を考えると、絶対に対処しきれないですもん」


ん~~~、褒めてくれるのは嬉しいんだけど、国を守る騎士としては、もう少しガッツがある言葉を口にして欲しかったな。


「絶対ではない。対処のしようはある。だが、ラガスの場合必ず潰さなければならないのが厄介な点だ」


「現役の騎士にそう言ってもらえると、非常に嬉しいですね」


別に俺ではなくとも、そういった技術力は身に付けられる。


数が増えればより面倒ではあるけど。

まっ、殲滅が得意な騎士さんたちなら、一瞬で潰されそうで怖いけどな。


「身に付けるにしても、訓練と実戦あるのみだね」


「上手く扱えるようになれば、少ない魔力消費量で敵を倒せますよ」


「俺らは基本的に得物をぶち込んで倒すが……確実に仕留める為の、良い牽制にはなるか」


騎士さんたちにとっては、そっちの方が使いやすいかもな。


「いやはや、まだ学べることがあるのは良いことだ」


「幾つになっても前向きっすね……まぁ、少しでも強くなれる訓練があるなら、頑張るっすけど」


……前向きな方が多いな。

俺が相手だから話を素直に聞いてくれている? のかもしれないけど、一人ぐらい上から目線で面倒なのがいると思ってたけど、全くいないみたいだな。


俺に負けた時、超絶望してた優顔イケメンさんも、特に負の視線を飛ばしてくることもないし……もしかして、リアルス団長が事前に面倒な輩は間引いてくれてたのかな?


「おや、ラガス君じゃないか?」


「あっ、どうも」


フリージアさん……絶対に強い魔法使いを数人連れ、何故ここに?

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