結果を残せるか

SIDE ラガス


探索を終えた翌日は休息を挟み、再び雪原に向かい……ヘイルタイガーやアイスドラゴンの探索を行う。

その前に、一つイーリスに要件を伝えた。


「イーリス、昨日みたいな腑抜けた状態が続くなら、次の探索からは宿で待っててもらう」


男爵家の令息である俺が、公爵家の令嬢であるイーリスにこんな事を言うのは、どう考えてもアウトだろう。

そんなことは理解している。


だが、ここで言っておかなければならない。


「……」


「……」


イーリスの護衛であるルーノさんとリタさんも、黙って見守っている。

つまり、俺の考えに賛同してくれているということだろう。


「お前がそんなふらふらした状態なら、俺たちがどれだけ頑張っても、お前が原因で万が一という状況が起こりうる」


「……モンスターを自力で倒せ。そういうことかしら」


「そういうことだ。自分はお荷物じゃないという事を示せ」


ラージュ先輩でさえ……イーリスよりは経験が豊富という点はあるが、雪原の探索を始めてからモンスターの討伐に参加している。


それも消極的ではなく、かなり積極的に参加するように……なった。


イーリスと同じ常識を持っているタイプだとは思うが、意識的に乗り越えようとしてるのかもな。


「分かったわ」


「……そうか」


意外とあっさり了承した。

ぶっちゃけ、ちょっと上から目線だったからいつもの生意気? な態度で返されるかと思ったけど……どういう心変わりだ?


ラージュさんが先日の間にもう一度話し合ったか、それともルーノさんとリタさんが意を決して、注意したのか?


どっちなのかは分からないけど、とりあえず面倒な事態は回避できたが。


「ラガス坊ちゃま、よろしいのですか?」


「あぁ、構わない。予定通り、拒否すれば強制送還してもらうつもりだったが、ここからはイーリスの働き次第だ」


常識を乗り越えようとする姿勢……そこは良い。

けど、結局は乗り越えられなければ、正直邪魔だ。


無理そうなら……次回から宿で待機してもらう。

セルシアと比べて、道具のお陰で大きな差があるってわけでもない。

確かにセルシアが持つ紫電崩牙は超が十個ぐらい付く最高で最強の武器だ。


とはいえ、セルシアの実力……経験値なら、普段から使っているロングソードを使ったとしても、時間を掛ければスノーベアーを倒せていた。

それに対して、イーリスもリザード公爵様から氷の魔力と相性が良い杖を貰っている。


一応失礼になると思って魔眼で調べてないが、最低でもランク四……ランク六の可能性も十分にある杖だ。

条件はセルシアと五分……とは言えないが、近い状態。


それに、別にCランクのモンスターを一人で倒せって訳じゃない。

誰かと組んでも良いから、戦力になるってことを証明してくれれば、これからの動向を認める。


そう決めたんだが……なんか、思った以上にやる気に溢れてた。


「…………」


いや、表情に熱さが出てる訳じゃないけど、遭遇するEランクやDランクのモンスターを前に出て、一人で倒し始めた。


イーリスの実力を考えれば、そこまでは出来てもおかしくないとは思うが……一応接近戦でも戦ってるし、魔力を無駄に消費してるってわけでもない。


「なんか、ちょっと危なっかしいっすね」


「危なっかしい、か?」


「うっす。昨日の落ち込みから立ち直ったのは良いことだと思うっすよ。ただ……なんというか、張りつめてる? 追い込まれてる? そんな雰囲気が漂ってて……個人的には、今のイーリス様は危なっかしいと感じるっす」


「……そうか」


シュラのこういった感覚は、あまり外さない。


俺的には恨む妬み嫉みが重なって、その矛先が俺に向かないことが素直に嬉しいと思ってるけど……とりあえず、イーリスなりに前に踏み出そうとはしてる。


それに、イーリスが戦う度にルーノさんとリタさんがいつでも攻撃を放てるように構えてる。

今のところ問題はないだろう。

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