そう、仕方なかったんだ

「ただいま」


「おかえりなさいませ……その様子ですと、無事に目的の宝石は採掘できたようですね」


「おう、昨日の夜にも次で採掘出来なかったら今日は諦めようと思ってた時に出たよ」


翌日の朝、ルーフェイスに行きと同じく猛ダッシュで走ってもらい、無事昼前に王都に到着した。

俺とスレイドが爆睡してる間も特にモンスターや盗賊が襲ってくることはなく、アクシデントに遭遇することなく戻って来れた。


いや~~~、本当に夏休みが終わる前に戻って来れて良かったよ。


「それは良かったですね」


「本当に良かったよ。あっ、メリル。昨日はルーフェイスが超頑張ってくれたからさ、ルーフェイスに上手い飯作ってくれないか。肉なら直ぐ用意するからさ」


「……なるほど。そういうことですか。分かりました、直ぐに用意しますので食材をこちらに持ってきてください」


「おう。昼飯前に悪いな」


「いえ。きっとルーフェイスがいなければ、ラガス坊ちゃまは夏休みが終わる前に戻って来なかったでしょう。それを考えれば、ルーフェイスにきちんと報酬を用意すべきなので、特に問題ありません」


ん~~~~~~~…………否定出来ないところが悲しいな。

俺もスレイドも体力はある方だが、それでも最後の最後にアズライトを発見出来る間でかなり時間が掛かったし、体力も消費した。


ルーフェイスがいなかったら、そもそも短時間で鉱山に行けなかったし、道中で遭遇するモンスターもサクッと倒せなかった。

なにより鉱石や宝石が眠ってる採掘ポイントを直ぐに発見出来なかった。


それを考えれば、今回の冒険というか……採掘作業? では、ルーフェイスが一番の功労者だな。


「お帰りなさいっす、ラガスさん。友人との採掘は……上手くいったみたいっすね」


「おう!!! 昨日の夜にギリギリだったけど、運良く見つかったんだよ」


さて、ルーフェイスに何の肉をご馳走するか……メタルセンチネルの素材は結局スレイドが譲ってくれたから、メタルセンチネルの肉と……この間解体してくれたアサルトワイバーンの肉も出すか。


「まぁ、上手く採掘した後に後ろから現れたハンターに思わず凄んじゃったけどな」


「……ラガス坊ちゃま、それはいったいどういう事ですか」


ッ!!?? こ、声が冷たすぎる。

周囲の温度が一、二度下がったのかと錯覚したけど……もしかしなくても錯覚じゃなくないか?


「め、メリル。安心してくれ。別に問題を起こしたわけじゃないんだ」


「そうだぜ、メリル。ラガスさんは売られた喧嘩は全部買うけど、理由もなく自分から喧嘩を売る人じゃないだろ」


シュラ……微妙にフォローになってないぞ。

それじゃあ、俺が自分から喧嘩を売って問題を起こしたって前提の話じゃないか。


「それもそうですね。申し訳ありません、ラガス坊ちゃま」


「い、いや。分かってくれたら良いんだよ。アズライトを見つけたタイミングで、同じくアズライトを探してたハンターが現れてな。こっちとしては全くアズライトを渡すつもりはないし、向こうが交渉しようと思っていても、交渉するつもりだってなかったんだ。でも、向こうは交渉する気満々って顔で近づいてきてさ」


言っちゃ悪いが、どこからどう見てもアズライトと同等の何かを持っている様には思えなかった。

というか、アズライト以上の宝石を持っていたたとしても、それとの交換に応じるつもりは欠片もなかったからな……あと、中々見つからなくてイライラしてたからちょっと言葉が荒くなった。


言葉や態度が荒れてしまった点は少し悪かったなと思うけど、あの時はあそこでガツンと言っておかないと駄目だと思ったんだよな。


「俺たちはほんの少しも交渉する気がなかった。加えて、中々採掘してもしても見つからなくてちょっとイライラしてたから、ちょっと荒い態度で追い返しちゃったんだ」


「……そうでしたか。であれば、仕方ありませんね」


はぁ~~~、良かった。

あれだけ爆睡したとはいえ、今日はちょっとのんびりしたい気分だったから、いきなり説教くらうのは勘弁だぜ。


あっ、まだドレッグさんたちの魔靴を造り終えてないんだし……結局のんびりは出来ないか。

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