独特な足音
「ん? この音は……」
『ラガス、多分センチネル系のモンスターが近づいてきてる!』
「そうみたいだな」
この独特な素早い足音は、間違いなくセンチネル系のモンスターだろう。
意外と肉が美味しいから、狩っておくか。
「モンスターが俺たちに狙いを定めているのか?」
「あぁ、多分な。足音からしてセンチネル系のモンスターだ」
「ほぅ……そこまで分かるのか。ラガスは聴力も特別な様だな」
「これに関しては特別というよりも、慣れだな」
モンスターとの戦いが慣れれば慣れるほど、足音や匂いである程度どんなモンスターが近づいてきているのかが解るようになる。
普段のパーティー構成だと、ルーフェイスとメリル、そんで俺が斥候担当というか……まっ、俺は三番手だからメインではないか。
でも、一応そのあたりを気を付けてるから、自然と解るようになってくる。
「そうか……ラガス、そのセンチネルは俺が倒そう?」
「どうしたんだ? 別にルーフェイスに任せておけば良いと思うが」
「アズライトを手に入れるまで、ずっとルーフェイスの鼻に頼らせてもらっていた。それに道中で遭遇するモンスターとの戦いもな。だから、俺も少しは敵を倒さなければと思ってな」
……やっぱり義理堅い男って感じだな。
モンスターの討伐に関してはルーフェイスが率先して行ってたけど、確かに鉱石の採掘ポイントを発見するのにルーフェイスの鼻に頼り過ぎたのは間違いない。
『ラガス、多分だけど普通のセンチネルと違う気がするよ』
「そうなのか? ……みたいだな」
ありゃただのセンチネルじゃなくて、メタルセンチネルだ。
Dランクからワンランク上がってCランクだから単純に堅いだけじゃなくて、動きも中々って感じなんだよな。
「スレイド、あれはセンチネルじゃなくてメタルセンチネルだ。Cランクのモンスターだけど、それでもやるか?」
「あぁ、やるに決まってるだろ」
……今更引くに引けないだろ、って感じの表情じゃないな。
最初からセンチネルだろうとメタルセンチネルだろう、俺がぶっ潰すって意志を感じさせる。
普通のセンチネルならスレイド一人に任せても大丈夫だろうと思ってたけど……メタルセンチネルだと、やっぱり少し心配だな。
「分かった。でも、俺も少し参加させてもらうぞ。俺もスレイドと同じでルーフェイスに色々と頼り過ぎてたとは思ってるから」
「そうか」
スレイドは完全に槍と風の魔力を使ってガンガン攻めるタイプだから、俺はいつも通り魔弾を使って後方から援護を行う。
メタルセンチネルの体は確かに堅いが、それでもスレイドの風の魔力を纏った一撃なら傷をつけるところまでは問題無い。
「あぁいう動きは本当に面倒なんだな」
センチネル系のモンスターのグネグネした動きは個人的に嫌い。
昆虫だから当たり前だけど、表情がないからこの先どうやって動くとか予想し辛い。
まぁ、九割方魔弾が当たってるから良いんだけどさ。
にしても……やっぱり防御力重視系のモンスターだと、体が凹むぐらいのダメージしか入らないんだよな。
メタルセンチネル自体は衝撃で体がよろめいてるから、良いサポートにはなってると思うが。
「ふんっ!!!!!」
おぉ~~~、もうセンチネル系のモンスターをぶっ殺す方法に気付いたか。
攻略法って言うほどのものじゃないけど、甲殻より体の節々を狙った方が良いんだよな。
そりゃ昆虫系はしぶといから、斬られた体が少しの間動き続けるけど放っておけば勝手に止まる。
このまま俺がサポートし続ければ問題なさそうだな……ちゃっかり魔闘気まで纏って動いてるし、こりゃ俺のサポートなくても一人で倒せたか?
けど、それだと結構ギリギリの戦いになるか……せっかく彼女さん……じゃなくて婚約者さんに良いサプライズ出来そうなのに、万が一があっちゃ不味い。
それを考えるとサポートするのは間違ってないな。
「ふぅーーーーーー……もう動かなさそうだな」
「だな」
メタルセンチネルはがっつり十等分ぐらいに刻まれ、どの部分もピクリとも動かなくなっていた。
「お疲れ様」
「……ありがとう。ただ、ラガスが後ろから援護してくれていなかったら、ここまで楽に勝てなかった」
「そうか? スレイドもメタルセンチネル相手に上手く立ち回れてたと思うぞ」
なんてお互いに褒め合いが続き、俺もスレイドもちょっと恥ずかしくなったので、急いでメタルセンチネルの解体を行った。
ただ、今からルーフェイスが全力で走ってもおそらく王都には帰れないので、適当な場所で一夜過ごしてから学園に戻った。
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