渡す気はサラサラない
(この採掘で発見出来なかったら、一旦夕食を食べて体力をつけて……いけそうだったもう少し採掘作業を頑張って、無理そうなら今日の採掘は止めるか)
既に五十回以上は採掘ポイントを掘っているが、それでもまだ目的の宝石は見つからない。
だからといって、俺はスレイドの手助けを止めるつもりは一ミリも無い。
でも、体力が限界に来てしまったなら、やはりここはがっつり休むべき。
さっき少し休んでそれなりに体力を回復させたけど、それでも十回ぐらい採掘作業をしてると直ぐに疲労が溜まってくる。
まぁ、まだタイムリミットまでは時間あるし、このペースで採掘作業を続けてれば見つかる可能性はある、筈……ッ!!!???
「す、スレイド!!! これ!!!」
「あ、あぁ!! これは……」
青緑の綺麗な輝きを放つ……宝石、だよな?
いや、折角狼竜眼があるんだから鑑定して確かめないと。
頼む……目的の宝石であってくれ!!!
「……来たぞ!!! スレイド!!!!」
「本当か!!!!」
「本当だ!!! 後は丁寧に取り出すだけだ。ゆっくりで良い! 傷付けない様に丁寧に取り出すぞ!!」
「おう!!!!」
やっと……やっと目的の宝石である青緑の輝きを放つアズライトを見つけた!!!
今までの採掘作業を雑に行っていた訳ではない。
でも、アズライトの採掘作業は今まで一番丁寧に……傷付けないように行えた自信がある。
「……やった、やったぞスレイド!!!!」
「あぁ、本当に……良かった」
「ワゥ!!!!!!」
ふふ、ルーフェイスもこの嬉しさが分かるか。
一日中鉱石の匂いを探し続けてくれてたんだし、ルーフェイスも嬉しくて当然か。
「ありがとな、ルーフェイス」
「ラガスの言う通りだな。君がいなければ、無事にアズライトを見つけることは出来なかった」
『……えへへへ』
心底嬉しいのか、俺とスレイドにモフモフの毛を押し付けてスリスリしてきた。
ふっふっふ。どんな状況でもお前の毛並みは気持ちいな。
「あっ!!!!!」
ようやく目的の鉱石を採掘できた嬉しさの余韻に浸っていると、鉱山内に響く声が聞こえた。
「ば、バンズさん!!! あれ、俺たちが探してたアズライトっすよ!!!!」
「……そう、みたいだな」
何だあいつら……恰好から見るに、ハンターか。
多分……ルーキーではないけど、その域を越えても中堅には届いてない尻に殻が付いてるルーキーってところか?
「ラガス、もしやあいつらはこのアズライトを狙おうとしてるのか」
「は!?」
おいおい、これは俺たちが必死で探し求めて、やっと手に入れたアズライトだぞ!
なんであんな全く無関係の奴らに奪われなきゃいけねぇんだよ。
つか、仮に奪おうとしていても……どうやって奪うつもりだ?
俺たちを殺す気か!?
ここは死体が吸収されるダンジョンじゃねぇんだぞ。
いや、例えダンジョンでも殺しが正当化される理由はないんだけどさ。
というか……あいつら、こっちにずかずかと近づいてきてるじゃねぇか。
殺気や敵意は感じないが、もしかして交渉でもする気か?
まぁ……どちらにしろ、このアズライトを渡す気なんて、こっちは一ミリもねぇんだよ!!!!
「おい、このアズライトは絶対に渡さねぇぞ。交渉もするつもりもねぇ……だから、俺らに話しかけるな。つーか失せろ」
鉱山内というのが頭には入ってるからか、自然と大声は出さなかった。
でも、自分の口から漏れた言葉には圧倒的な冷たさと火山の噴火前に似た様な怒りが宿っている様に感じた。
「「「「ッ!!!???」」」」
「聞こえなかったのか。頼むから失せろよ」
「「「「し、失礼しました~~~~!!!!」」」」
……だからさ、鉱山内で大きな声出すなっての。
「は、ははは。ラガス、そんな声を出せるんだな。俺に向けられていないというのは分かっていても震えたぞ」
「え? い、いやぁ……はは。ほら、アズライトを見つけるまで結構時間が掛かった……いや、時間だけ考えれば早かったかもしれないけど、個人的には長かったって感じて……ちょっとイライラしてたみたいだな」
我に返ると、ちょっと言い過ぎてたかもな。
でも、あのハンターたちの眼はどう考えてもアズライトをロックオンしてたよな……ようやく見つけた目的の物だ。
あのハンターたちがどんな案を出してきても、絶対に渡すつもりはなかったんだ。
今後会うかなんて分からないし、別にちょっとぐらい上から目線で交渉の余地はないって断っても良かったよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます