運が悪い……それだけだ

掘って掘って掘りまくる。

ルーフェイスの背中に乗って採掘ポイントに向かって、ひたすらツルハシを振り、鉱石が見つかれば丁寧に回収する。


その作業をもう何度も何度も繰り返した。

繰り返したんだが……まだ、お目当ての宝石が見つからない。


「……悪いな、スレイド」


「お前が謝ることじゃない、ラガス。これは……単純に、運がないだけだ」


運がない、か……確かにそうかもしれないけど、俺が魔靴の素材に使う鉱石だけどんどん溜まっていくのは……物凄く申し訳ない。


宝石系の物が見つからない訳じゃないんだよ、本当に。

でも、何故かお目当ての物だけが見つからない……時間的にはまだ余裕はある。

ここに来てからまだ一日も経っていない。


近くの街に戻って宿を取らずとも、ルーフェイスがいれば鉱山内で寝泊まりしても問題無い。

野営の道具なら持ってるから、ここで夕食を食べることも出来る。


ただ……今はちょっと限界だから、地面に腰を下ろして休憩中。

セルシアの実家にいる時にも鉱山内で鉱石を採掘したけど、ここまで疲れなかったんだけど……ちょっと、今回は体力の限界が近いかも。


「ラガス、大丈夫か」


「……大丈夫だ。俺よりも、スレイドこそ大丈夫なのか?」


「あぁ、問題無い。ただ……もう少し休息は取りたい」


「はは! それは同感だ」


スタミナには自信があるんだけど、鉱石を採掘するのは結構体力を使うからな。

最後の方は慎重に鉱石を気付付けない様にしなくちゃいけないし、発見した鉱石が目的の物でなければ、発見出来なかった精神的ダメージが襲って来る。


それらが重なって、体がもう……結構クタクタだ。


『大丈夫、ラガス? 動ける?』


『大丈夫だよ、ルーフェイス。少し休憩すればまた動けるようになる』


別に強がりではない。

本当に休憩すればある程度体力は戻る。


ただ……目的の宝石が見つからない時間が続く、メンタルがやられそうになるんだよな……いや、こればかりは本当にスレイドの言う通り運なんだけどさ。


「ふぅーーーー……欲しい、手に入れたいって思い過ぎるから手に入らないのかもな……って、休憩してるんだから邪魔すんな!!!」


視界にコボルトが映り、そいつらが俺たちに殺気を向けていたので……とりあえずイラついて魔弾をぶっ放した。

コボルトジェネラルとかキングとかいなかったから、回転を加えて貫通力強化だけ付与すれば十分。


十分だったんだけど、イラついてたからか……うっかりビーストキラーの効果も付与してしまった。


「はぁ~~~~。解体する気にもならないや」


「仕方ない。お互いに疲れている状態だ……ただ、疲れているからといって放っておけば俺たちが殺される」


正当防衛、だよな。

もうちょっと休憩したいので、ルーフェイスに頼んでコボルト数体分の死体を地面に埋めてもらった。


普段なら魔核だけでも回収しようと思うんだけど……ダメだ、まだ体が起き上がれない。


「……すまないな、夏休み最後の数日を俺の我儘に付き合わせてしまって」


「何言ってるんだよ。俺がお前のサプライズを手伝いと思ったから手伝ってるんだ。だからスレイドがそんな事を気にする必要はないんだよ」


ぶっちゃけ数日で何か大きなことが出来るわけないし、夏休みは……十分に楽しんだ。

そう…………国外に初めて行ったし、それなりに楽しめたのは事実。


面倒な事情で行ったけど、最終的には思いっきりぶん殴れてスッキリした。

てか、そろそろ呪いがハッキリと表に出てるよな。

それと……一応修復不可能にした男の尊厳はそのままか?


あれから色々と考えたけど、ポーションの中でトップ・オブ・トップの回復力を持つエリクサーだったら、もしかしたら元に戻るか?

潰してから元とは違う状態で回復させたから、一般的な……並み以上のポーションでも元の形に戻すのは不可能だと思うけど……まぁ、あのバカ王子には是非ともあのままでいてもらいたいな。


「? 何か面白いことでも思い出したのか」


「あぁ、夏休みの間にちょっと色々あってな」


国外で体験したこと、行ったことをかいつまんで話すとスレイドは少し引きながらも小さく笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る