ワンチャン血の海?
三人寄れば文殊の知恵? と言うが……ダメだな。
本当に良い案が浮かばない。
歳上である俺やシュラが的確なアドバイスを送りたいところなんだけど、パーティーに参加して令嬢たちに囲まれるという経験が一切ない。
いや、今ならそれなりに有名になってるっぽいし、もしかしたらそういった条件を体験できるか?
でもフォース君は今アドバイスが欲しいんだから、もしもの条件を考えても仕方ないよな。
「……フォース君さ、憧れの男性騎士じゃなくて女性騎士とかいる?」
「憧れの女性騎士ですか……いない訳ではありませんね」
ほほぅ……これはもしかしたら使えるか?
女性騎士であれば、フォース君と大体一回りぐらい年齢が離れている。
そういった人物……歳上の女性に憧れているとなれば、令嬢達も目指すべき目標が分かってむやみやたらに絡んで来ないかもしれない。
「ラガスさん、もしフォース君が憧れている女性騎士が独身だったらどうするんすか」
「どうするって、別にその人が独身であっても特に……いや、一応不味い状況になる、のか?」
この世界で歳の差婚はある。
でも、普通に考えれば男性の方が歳上っていう状況だよな。
常識的に考えて、フォース君と憧れの女性騎士がくっ付くことはない。
それはフォース君も分かってる筈……うん、憧れと恋愛がごっちゃになってる様子はないな。
「俺はそれでも大丈夫だと思うぞ。現在騎士である女性なら、だいたいフォース君の一回り上だ。憧れは憧れといった形になると思うが」
「まぁ、普通に考えてそういった形になるのが当然だとは思うっすけど、もし……もしっすよ。向こうの女性が本気になってしまったらどうするんすか」
「え、いやぁ……それはお前、ほら……いや、本気になるか?」
確かにフォース君は物件として考えれば、超優良だとは思う。
各家の当主たちからすれば、是非とも自分の娘を預けたいと思える人物だろう。
でもなぁ……一回り近く、もしかしたら一回り以上離れてる可能性だってあるんだぞ。
「なぁ、フォース君。ちなみに憧れほどの強さを持ってる女性騎士は独身で、フォース君より一回り以上歳上か?」
「えっと…………はい、多分そうだと思います」
女性騎士の中にも猛者はいる。
並みの男性騎士など、暇つぶしの様に転がす者やドラゴンスレイヤーの称号を持つ者。
そんな女性は確かに存在するらしいが……噂だぞ。
あくまで噂だが……あまりにも周りと比べて突出した実力を持っているが故に、中々嫁の貰い手が現れないらしい。
という噂を、父さんや母さんから聞いたことがある。
ただ、フォース君の口から憧れるほど強い女性が未だ独身ということは……その噂が正しいということだ。
…………なるほど、確かに不味いというかよろしくないというか……万が一、誤解させてしまう可能性はありそうだ。
うん、その可能性は決して超低くはない。
「シュラ的には……あれか。売れ残ってしまっているからこそ、側室でもという希望を持たせてしまうということだな」
「ちょっと言葉が悪いっすけど、つまりそういうことっすね。フォース様は公爵家の令息っすから、そういった例が無きにしも非ずと周りも思うかもしれないじゃないっすか」
「ありそうだな……というか、仮にそうなったとしてフォース君はただ憧れているだけで、その気は全くないですよと伝えたら……どうなると思う」
「どうなると聞かれましても……血の海ができ上るんじゃないっすか? それか、単純に涙で池ができるか」
「できれば涙の海の方が有難いな」
血の海は是非とも止めてほしい。
フォース君には全く非がないしな……違うか、着られるのは可能性があるかもしれないと噂を立てた者たちか。
でも、それはそれで仕方ない部分が…………ゼロとは言えない。
女傑の騎士さんもそんな短気を起こさないと思うが……あり得ない、なんてことはあり得ない世界だからな~~~。
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