可能性はあると口にはしても

「そこまでっす!!」


「……やっぱり剣の腕ではまだまだ敵いませんね」


帰り道の道中、毎度のことドレッグさんたちと模擬戦を行っている。


「これでも長年、騎士として働いてきますからね。そう簡単には負けられませんよ」


騎士としてのプライド、か。

やっぱり長い間騎士という職……地位として活動してきたら、それに懸けて負けられないって思いはあるか。


まぁ、プライド云々の問題ではなくやっぱり単純な身体能力だと、アビリティを使わなかったらまだまだ勝てないな。

ロングソードの扱いに関しても、その差は大きい。


俺の場合は短刀や長刀の扱いに時間を多く使ってる部分もあるから仕方ない……ってのは言い訳だな。

越えたと思うなら、なにかのせいにしてはならない。


「それに、ラガス殿の武器はロングソードだけではなく魔弾や体術、他にもあります。私は基本的にロングソードばかり使ってきました。技術ではまだまだ負けません」


「ですよね」


「ラガスさん、次は俺たちの番なんで見ててくださいっす」


「了解。あまり張り切り過ぎないようにな」


懐中時計を預かり、丁度良いところで模擬戦開始の合図を出す。

シュラは大剣を使い、オルアさんも大剣を使う。


俺も一応大剣は使うが、そろそろ技術ではシュラに抜かされそうな気がする。

それを考えると、オルアさんはシュラにとって良い訓練相手だろうな。


「魔弾や他の手札を使えば、私が負ける可能性もあるでしょ」


「はは、まだまだ俺は学生の身ですよ。現役の騎士に勝てると思い込むほど、傲慢ではありませんよ」


成りたての騎士とかなら話は別かもしれないが、現役で尚且つプロの騎士はちょっとな。

ドレッグさん自身、負ける可能性があるとか口にしながら、瞳の奥は燃えてるし。


「そんなことはないでしょう。ラガス殿、あなたの強さはハッキリ言って異常です」


うっ!!! まともなドレッグさんにそう言われると、ちょっとくるものがあるな。

間違ってはいないんだけどさ。


「同年代で接近戦最強はセルシア殿でしょう。そして遠距離最強はイーリス殿」


あぁ~~~、確かにそうか。

イーリスの奴は性格が面倒というか、嫉妬癖? があっても魔法の腕と才能はピカ一だろうからな……アサルトタイガーファング、だっけ?


あれはどう考えても十二歳の子供が放つ技じゃないよな。


セルシアも接近戦の強さはマジでヤバい。

ただ、最近はリーベが頭角を現してきたから絶対じゃないかもな……いや、まだセルシアの方に分があるって感じか。


でも……今のセルシアはランク九の細剣、紫電崩牙を持っている。

まさに鬼に金棒状態……いや、聖騎士に聖剣状態って感じか?

特殊過ぎる武器はなしって状態であれば体術が優れているリーベの方がやや有利かもしれないが……いや、それでもまだセルシアの方が一枚上手か。


「そして大会ではハイレベルな力を持つ上級生をも打ち破った。例年、そういった生徒は確かに現れますが、ラガス殿はその中でも例外中の例外です。それほどの実力を持つラガス殿であれば、現役の騎士に勝つことも不可能ではありません」


「プロの騎士にそう言っていただけると嬉しいです」


獣、鬼、竜魔法は基本的に使いたくない。

大会で獣魔法は使ったから、もしかしたら勘付いている連中はいるかもしれないが……基本的にはモンスター相手に使う。


もしくは……完全に始末すると決めた相手だけ、だな。

許容範囲としてはギリ獣魔法まで。


音魔法に関しては使わないといけない場面になれば、使っても良いか。

ジーク相手にちょっと遊び感覚であるとはいえ使ってるし、いざという時は迷わず使ってもオッケーかな。


魔弾に関してはなんか完全に特別扱いされてるし、対騎士戦でも使って良し……後の体術や武器を使って大丈夫なら騎士になりたてのひよっこ。

それと、まだルーキーの域を抜けて無い人であればいけそうか。


「ただ、騎士の方相手に本気で戦う機会なんてそうそうないですよ」


「それもそうかもしれませんね……私としては、あまり騎士に成りたての者たちに自信を無くしてほしくないので、ラガス殿と戦う機会がないことを祈るばかりです」


「はっはっは、騎士なんですからそう簡単に折れる心は持ってないでしょう」


よっぽどのことがない限り、俺も心が折れる戦い方をしようとは思わないからな。

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