王族は手を出さないが……

「本当にお受けになるのですか、ラガス坊ちゃま」


「あぁ、受けようと思う。丁度良い暇つぶしになるだろ。なんならメリルもこの国の令嬢や令息の相手をしてみるか?」


「……それはさておき、可能性としてですがこちらの手を知りたいと考え、今回のような申し出をして来たかもしれません」


他国のパートナーである俺の手札を知っていれば、良いことがあるのか?

多少はあるかもしれないが、バカ王子がこれ以上アホな真似をしなければ、ガルガント王国とアルガ王国が戦争になることはない。


俺の手札を知ったところでって話だと思うんだが。


「仮に俺の手札を知れたとして、アルガ王国が何かしてくるとは思えないが」


「王族がラガス坊ちゃまに手を出すとは思えませんが、爵位の高い貴族がラガス坊ちゃまに接触する可能性はあるかと」


「それは……あれか、俺と縁を結びたいってことか?」


「そうですね。引き抜きはどう考えても無理なので、縁を結んで困った時に助けてもらおうと考える者が現れるかもしれません」


困った時に助けてほしいから俺と縁を結ぶって……それって他の連中でもよくないか?

それにハンターになれば貴族からの依頼も受けるし、別に縁を結ぶ必要はないと思うんだけどな……まっ、依頼内容と報酬次第では受けないって選択肢もあるけど。


「別にセルシア以外の奴と婚約するつもりはないし、別に会っても良いだろ。メリルだって体動かしたいだろ」


「確かに体は動かしたいですが……分かりました。私はこれ以上何も言いません」


確かにバレたくない手札は持ってるが、それでもそれが分かったところでどうにか出来はしない。

俺自身の位や元の立場は低いけど、今は公爵家の令嬢であるセルシアのパートナー。


その点を考えれば、他国の貴族であっても無理矢理俺を自分の駒にすることは不可能に近い。


「すいません、これお願いします」


「かしこまりました」


書き終わった手紙を渡し、後はバカ王子のクラスメートからの返信を待つのみ。


「それまでは結局暇だな」


「でしたら、魔靴の作製でもしたらどうですか? 趣味で時間を潰すのが一番かと」


「魔靴? 初めて聞く物ですな」


そういえばドレッグさんたちには話してなかったか。

外にはセルシアとロウレット公爵にしか渡してないからな。


……まぁ、別に存在がバレても構わないか。


「魔靴とは俺が作った靴タイプのマジックアイテムです。装備することで身体能力の向上効果があります。ただ、他の靴型マジックアイテムと違う点は攻撃に使えるという点です」


「靴のマジックアイテムが攻撃に……それは、ラガス殿が造ったのですか」


「えぇ、多分……俺が初めて造ったかと」


「父様はそれを気に入って、ラガスにお金を払って、制作を頼んだ。とても満足してた、よ」


送られてきた手紙に書かれていた感想を読んだが、大層喜ばれていたな。

もしかしたら二足目を造ってくれと頼まれるかもしれないな。


ちゃんと報酬を払ってくれるし、頼まれればまた造るか。


「ロウレット公爵様が……もし、今一足お持ちでしょうか」


「えぇ、持ってますよ」


造ることは面白い。

亜空間には森の中で倒したモンスターの素材と鉱山から手に入れた功績があるから、今な時間を使ってポーションと一緒に造っている。


ただ、ここ最近での最高傑作はやはりリーベのために造ったレイジファングだな。


「これが魔靴です。履けば自然と使い方が解ります」


「なるほど。それでは失礼して……おぉ!! そういう使い方を……確かに攻撃に使えるタイプのマジックアイテムですね」


さすがベテランの騎士。

直ぐに魔靴の扱い方を把握したみたいだな。


刃を出し入れするタイミングが少し難しい、と思ってたんだが……軽くシャドーを行っているドレッグさんを見る限り、実戦でも余裕で使えそうだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る