出来上がるまで大人しく
「相変わらず美味い飯を用意してくれるな」
無事に……いや、向こうは全く無事じゃないけどこっちは無事に王子との模擬戦を終えた。
初っ端の態度からして、もしかしたら試合が終わって傷が治ったあとに突撃してくるかと思ってた。
セルシアは試合が始まる前には近づかないでほしいと言ってたけど、試合が終わってからに関しては何も言ってなかったからな。
ただ、俺があんまりにもボコボコにし過ぎてちょっとトラウマになってるのか、完全にアルガ国王が部屋から出られないように監視しているのか……もしくは、試合が終わった後にセルシアが迷うことなく俺の方に来たのがよっぽどショックだったのか。
どれも可能性としてはありそうだな。
でも、あれだけガチガチに固めた装備で俺に敵わなかったんだし、本人が挑んでくることはまずないだろう。
「ラガス坊ちゃま、少々不安そうな顔をしていますが……第三王子が何かやらかさないかまた心配してるのですか?」
「いや、それは多分ないと思ってるよ。アルガ国王たちはフェリスさんの脅威を十分感じ取ってるだろうから、こっちと戦争したいとは思ってないだろうから、絶対にバカ王子が暴走しないように見張ってるはずだ」
おそらく、外部と連絡を取ることすら不可能だ。
暗部の連中は国王の指示がないと動かないだろうし、通信系のマジックアイテムでもなきゃ……おっと、まさかそういう可能性もあるか?
さすがに独房みたいな場所には閉じ込めてないだろうから、手元に通信系のマジックアイテムがあれば外部と連絡は取れる……いや、そんな物を部屋に残すわけないか。
「ただ、馬鹿とはいえアルガ国王の第三王子だ。闇落ちして将来面倒なことにならなければ良いなと思ってな」
「闇落ち、ですか……確かに第三王子にとってセルシア様は大切な想い人だったでしょうけど、闇に落ちるほどの傷を負ったとは思えませんが……それに、時間が経てばいずれ新たに気になる女性が現れるでしょう」
「う、うん……まぁ、そうかもしれないんだけどさ。俺結構えげつないことしたからその……王族だからってモテるかは分からなくなったんだよ」
多分、モテなくなる、よな?
いくら顔が良くても髪とあそこの毛がつるつるになって、その他の毛がボーボーになる男なんて好きになる女性がいるか?
しかも睾丸を二つとも潰したから……とりあえず今のところ子供はつくれないし、そんな状態の第三王子に寄って来る女なんて、絶対に金目当てだよな。
オルアさんにはぶっつけ本番で何をするのか教えたから、物凄い勢いで首を縦に振ってる。
「そういえばボコボコにする以外にも色々とやったんでしたね……であれば、将来敵対するかもしれないリストに登録しておいた方が良さそうですね」
「そう、だな……うん、よろしく」
何その恐ろしいリストは?
もしかして今考えたのか……それとも俺がその名前を初めて聞く前からあったのか???
ま、まぁそういうリストがあれば俺たちを狙う連中が現れた時、対象を絞りやすくなるから有難いリスト……なんだろうな。
「ラガス殿、セルシア殿の武器が完成するまでのお時間、どういたしますか?」
「そうですね……自分で襲撃は無いだろうと言っといてあれですが、基本的には王城内で過ごそうと思います。基本的には鍛錬などで時間を潰す感じですね」
ポーションや魔靴を造って時間を潰すのもありだな。
一週間ほど……その間は王城という狭い……いや、狭くはないか。
でも、そんな場所でずっと過ごすのは退屈かもしれないが、万が一を考えるとな。
王城内で何か起これば基本的には王族のせいに出来るが、王城の外に出れば王族の以外の権力者が多い。
悪いが、皆には少しの間我慢してもらおう。
「俺は全然構わないっすよ」
「私も、全然苦痛じゃない、よ」
そ、そうか。
気を使ってくれているだけかもしれないが、一応不満はないみたいだな。良かった。
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