その噂は事実

SIDE 近衛騎士


「……まさかコンバットドールまで持っているとは。手札が多い方だとは思っていたが……」


「いや、本当に凄いな。操ってるコンバットドールの質も凄ぇが、多分……操ってるラガス・リゼードの腕前も相当なもんだろ」


ドレッグはまさかラガスがコンバットドールまで操れることに驚き、オルアはコンバットドールに関しそこまで詳しくないが、相当上手いということだけは理解した。


「なぁ、ヤガス。俺はコンバットドールについてあんまり詳しくねぇが、お前ならそういうの詳しいだろ」


「なんでも知ってる訳ではない、が……相当腕が高いのは確かだ。相手がDランクのオークとはいえ、従者と話しながら軽く相手をしている。本当に……ドレッグさんの言う通り、持っている手札の数が多い」


誰かと話しながら操る……しかもラガスは片手でコンバットドールを操っている。

ヤガスの記憶が正しければ、一般的にコンバットドールを使って戦う者は両手で操っていると記憶している。


だが、目の前の護衛対象である少年は片手て操りながらオークを丁度良いサンドバッグ扱いしている。


「……あれじゃないの。魔弾を扱うのが得意ってことは、複数の魔弾を同時に動かすことも出来る筈でしょ。だから細かい操作には慣れてるんじゃないかしら」


「解らなくはないが……そんな単純な話か?」


「私だって全く専門外なことだから確証はないけど、そうじゃないと説明がつかないでしょ」


サリナの考えはある程度合っており、魔弾を操る過程で得た複数の物体を同時に操るという操作がコンバットドールを扱う上で役立つ技術となっている。


だが、片手で思い通りに操れてしまう点はラガスの才による点が少々大きい。


「ラガスさんはなんでも出来るんですね」


「属性魔法のアビリティを習得出来ない時点でなんでもではないと思うが……それを補うほどの才と手札があるのは確かだな」


「是非近衛騎士になってほしい人材だけど……本人はハンター志望だそうだし、勧誘するのは無理そうですよね、ドレッグさん」


「その通りだな……噂だが、あの大会が終わった後に全ての騎士団がラガス殿にスカウトの手紙を送ったらしい」


ドレッグの口から出たないように四人は思わず変な声が出てしまった。


「え、えぇえええっ!!! そ、それは……本当なんですか」


「噂だ……ただ、あながち嘘とも思えない話だ。あの戦いでラガス君は圧倒的な力を見せ付けた。騎士団が求める条件は多少あれど……第一に強さだ。それがなければ話にならない。その点に関してラガス殿は飛び抜けている……いや、突き抜けているという言葉が正しいかもしれないな」


強さがなければ民を守れず、盗賊やモンスター……隣国からの侵略者を倒すことは出来ない。


「接近戦の強さがまず学生レベルを超えている。アサルトタイガーファングを一喝と一撃で粉々にした。ヤガスが言っていた通り、あの速さと力は魔法使い殺しとなる」


「無詠唱が使える者であっても、簡単な攻撃魔法は避けられるか……殴って吹き飛ばされるでしょう」


「まさに魔法使い殺しだな。そして遠距離攻撃は魔弾という誰でも使える技術ではあるが、その腕が飛び抜けている……高威力の遠距離攻撃にはならないだろうが、ラガス君なら強敵相手でも上手く使うだろう。そして今……彼は私たちの目の前でコンバットドールを軽々と扱っている」


「接近戦が得意で、遠距離中距離でも戦えて珍しい手札も持っているってことですね」


「そういうことだ。どの騎士団も放っておかないだろう」


事実、どの騎士団もラガスが入団してくれるなら超好待遇で迎えようと考えていた。


「でも、未だにハンターになるという考えは変わっていない、っすよね……」


「おそらくそうだろう」


「つまり、各騎士団からの誘いを全て断ったと」


「中々できる決断ではない。だが、それほどまでに騎士の道よりもハンターへの道に進みたいと思っているのだろう」


大半の令息や令嬢からすれば考えられない選択だが、元々ハンターの道に進みたいという強い思いがあり、自分の性格的に騎士として上手くやっていけないだろうという考えを含めての選択だった。

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