万が一を考えてしまう

「ラガス坊ちゃま、起きてください」


「……おはよう、メリル」


「もう少し経てば、王城からの使者が来ます。それまでにはしっかりと目覚めていてくださいね」


「分かった。はぁ~~~……」


昨日は少し遅くまで起きていたけど、夜更かしと呼べるレベルではない。

だが……まだ寝ていたいと思うが、事情が事情だから二度寝は出来ないな。


「おはよ、ラガス」


「おはよう、セルシア」


「眠そうだけど、大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。これが冬だったらベッドから離れられないけどな」


基本的に鍛錬を欠かさないが、冬は寒さゆえにベッドから中々出られない。

冬の朝は尋常ではないほど寒い。


それでも森の中でモンスターを狩ったりしてたら耐寒のアビリティを手に入れたから良かったけどさ。


「王城で、暴れたら、駄目だよ」


「……なんで暴れる前提なんだよ」


「えっと……もしかしたら、面倒な人に、絡まれるかもしれない、から」


あぁ~~~、仮にそうなったら俺を王城に呼んだ王様のせいだな。

というか、中々に国の中で慎重に扱わなければいけない存在だよな、俺って。


別に王家に恨みとかは持ってないけど、なんか色々とやろうと思えば……色々と出来ちゃうしな。


「ラガスさん、おはようございます。今日は朝の訓練は止めておくっすか?」


「そう、だな……使者が来る前に汗だくになるのは良くないな。朝の訓練はとりあえずなしだ」


「うっす」


リビングに降りると既に朝食が出来上がっており、全員で食べ始める。


そしてニ十分後、ドアをノックした音が部屋の中に届いた。


「私が出ます」


「頼んだ」


メリルがやって来た使者に接触し、部屋の中へと入れた。


「ラガス・リゼード様ですね。第一騎士団所属のフェイル・アルブスと申します。本日は王城からの使者としてやって来ました」


「どうも、ラガスです。使者として来られた件は隣国の第三王子の件ですよね」


「はい。そちらに関して、国王様自らお話したいということで」


「……なるほど、解りました。それでは俺とメリル、シュラの三人で向かわせてもらいます」


マジかよ~~、国王様自ら何かしらこの件についてお話するのか。

もう少しこう……立場が低い管理職の人間で良いのに。


別に国王様からのお話がなくても、俺の事を下に見てるんだ……なんて思わないからさ!!


「セルシア、良かったらルーフェイスの相手をしてやってくれ」


「分かった、たくさんモフモフ、する」


はは、分かりにくいけど目が輝いてるな。

その気持ちは解る。ルーフェイスをモフモフするのは溜まらないよな。


てか、本当は万が一……何も起こらないとは思うけど、万が一を考えてルーフェイスも連れて行きたかったんだよな。


でもルーフェイスを王城の中に連れて入れるとは思えないしな。


学園の外に出ると、そこには豪華な馬車が用意されていた。

さすが王家が用意した馬車……豪華過ぎないか?


「中へどうぞ」


「あぁ」


ニ十分ほどゆらゆらと揺られ、王城へと到着。

因みに箱の中は空調が完備されていて、とても過ごしやすかった。


就いてからはずっとフェイルさんの後ろを付いて行き、とある一室に案内された。


「直ぐに国王様がいらっしゃいますので、少々お待ちください」


「分かりました」


中に入るとメイドさんが立っており、直ぐに紅茶を用意してくれた。


「紅茶とお菓子です。ごゆるりとお過ごしください」


「ありがとうございます」


……ないとは思ってる。思ってるけど、念のために出された紅茶とお菓子を狼竜眼で調べた。

うん、何も変なのは入ってないな。


「二人は……そのまんまで良いんだな」


「私はラガス坊ちゃまのメイドですから」


「俺はラガスさんの執事っすから」


俺としては二人もソファーに座って良くねと思ってしまうが、これから国王様に会うということを考えれば、遠慮しておいた方が良いという……良くないんだろうな。


「お待たせした」


ドアの外から国王様の声が聞こえ、即座に立ち上がる。

メイドさんがドアを開け、国王様が入ってきた……やっぱりあれだな、若い頃は前線で戦ってたと言われても全然信じられる体格と風格だ。


「この間の大会ぶりだな、ラガス・リゼード君。ラガス君と呼ばせてもらっても良いか」


「も、勿論です」


「ふっふっふ、あまり緊張する必要はない。君はお客様なのだから」


……いや、無理です。緊張します

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