巡り巡ったチャンス
「解ってはいたけど、ここまで手が出ない状況になるのか……」
今のところ、リーベは致命傷は受けていない。
だが、攻撃をガードしていても衝撃を完全に分散出来ている訳ではなく、徐々に蓄積されていく。
「限界突破を使用したことで冷静さが増し、無駄な攻撃がなくなりましたね」
「色んな意味で限界突破してるんだろうな……今のあいつは本当に厄介な強さっすね」
「その通りだな……出来ればもう少し耐えてから反撃したいな」
リーベが会得した奥の手を使えば、限界突破を使用した状態のライドとも渡り合える。
ただ、ライドの限界突破と同じく使用時間に制限がある。
(身体能力が倍近く上がる、そして魔力や闘気の全回復……単純名家にして強力なアビリティだ。でも、永遠にその効果が続く訳じゃない……てか、そんな高価が続いたら恐ろし過ぎる)
使用するのに魔力の消費する訳でもないので、文字通り奥の手として使える最強の手札の一つといえる。
(限界突破……ここまで強力なアビリティなのか)
冷静に対処を続けるリーベだが、じりじりと疲労感が溜まっていく。
ライドの連撃が全く止まらず、十秒が一分から数分に感じる程に濃い時間が過ぎていく。
「はぁ、はぁ、はぁ」
自分に同じような奥の手がある。
まだ使うべきではないというのは理解している。
ただ、それでも一気に戦況を変えた今のライドに勝てるビジョンが見えない。
(本当に、俺は……勝てるのか?)
ここで初めてリーベの信念が揺らいだ。
勝ちたという気持ちは消えていない。
執念の炎が完全に消えてはいないが、強風に襲われて揺らぎ始めた。
その隙を……ほんの一瞬の、小さな隙をライドは見逃さなかった。
「ホーリージャッジメント」
聖属性の魔力を利用した剣技、ホーリージャッジメント。
聖属性の魔法アビリティで習得出来る技に同じ名前の攻撃があるが、それは遠距離用の攻撃。
ライドが使用する剣技は聖なる魔力を利用した重撃。
同じ技を扱える聖騎士は他にもいるが、ライドの歳で使えるのは稀も稀。
模倣技や贋作ではなく、正規の威力に等しい一撃が叩きこまれた。
「ガッ!!!!!?????」
瞬間的に躱せない、防御するしかないと判断を下した。
その選択は決して間違っていなかった。
間違ってはいないが……防いだだけで威力を殺せてはいなかった。
先程のホーリーブレイク対烈火轟炎斬とは逆に結果になり、後方の壁に激突。
体内に大ダメージを負った。
「ホーリージャッジメントって、確か聖騎士の連中しか扱えない技、じゃなかったけ?」
「基本的には、ですね。ハンターの中にも使える人はいますが……聖魔法のアビリティを習得し、剣技の練度を上げても必ず習得出来る技ではなかったかと」
「ヤバいな……意識、飛んでないよな」
意識が飛ぶ、ここが今回の決闘でリーベにとって重要なポイントだった。
限界突破を使用したライドを叩き潰し、文句が一切出ない程の勝利を得る。
ただ、奥手のを使う前に気を失っては、使えるものが使えなくなってしまう。
「リーベ……起きろ、起きるんだ。意識があるなら、お前にまだ勝機はある」
拳を握る力が強くなる。
勝手欲し……これまでの頑張りは一か月足らずだが、この目で見てきた。
内容はどうであれ、リーベの勝つ姿を見たい。
事情あるのでザックスたちの様に大きな声で応援は出来ないが、心の中から精一杯の声援を送る。
(……クソッ、体が上手く、動かない)
ギリギリ体を起こすことは出来る。
ただ、ここから目の前の怪物とまともに戦えるのか……答えは否。
このままでは立ったところで即座に叩きのめされてしまう。
(ふざけるな。お前が強いということは解かった、努力を重ねて才能を開花させてきたのは解かった……だが、絶対に負ける訳にはいかない。お前は……ここで潰す!!!)
審判が決闘の決着を宣言する前に立ち上がった。
「……羅門、開」
体術を極め続けるうちに得られるアビリティの一つ、羅門。
簡単に説明すると、限界突破で得られる効果と似ているが、魔力は回復しない。
一時的にスタミナが回復し、闘気が体から溢れ出す。
そして最大の特徴は反射神経の速度向上。
スタミナが元に戻り、身体能力が上がったことに加えて反射神経の速度向上……その恐ろしさを、今からライドは味わうことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます