ミスればただの打撃

「はぁ、はぁ、はぁ……」


「はぁ、はぁ、はぁ……」


決闘が始まってから約十分が経過した。

お互いにスタミナは同等の量を消費している。


だが……二人の体を見れば差は明らかに解る。


「ここまでだけを見れば、リーベの方が有利だな」


「そうですね……やはり手札の数を増やしたのが正解だったようですね」


「それらを使いこなすあのリーベさんが凄いってのもあるが……完全に有利に進められているのは間違いない」


体に纏う魔闘気の精度が上がったことで、魔弾による切傷は期待出来なくなった。

だが、ラガスがリーベの為に造ったレイジファング。

そして実家から取り寄せた炎の魔剣、ブレイズ。


この二つが徐々にダメージを与えていった。


ライドの魔闘気が洗礼されて防御力が増しても、猛る牙と烈火の刃を阻むことは出来ない。


それどころか、容赦なく体を斬り裂こうと迫ってくる。


(良い武器を持ってくると思っていたけど……あの靴はいったいなんだんだ?)


ブレイズの様な魔剣を使ってくることは予測出来ていた。

それに対抗する為に、縁あって手に入れた風の魔剣、シルストをこの決闘に使うことを決めた。


二つの魔剣は同等の代物であり、決して性能では劣っていない。


だが、リーベが身に着けている様な靴のマジックアイテムは全く記憶にない。


(靴タイプのマジックアイテムがあるのは知っている……でも、あれは明らかに武器の類だ。そんなマジックアイテムがあるのか? それともダンジョンの中から発見された新種のマジックアイテム??)


残念ながら、答えはラガスが造った世間にまだ知れ渡っていないマジックアイテム、魔靴。

ライドが知らないのは当然。


どういったマジックアイテムなのか、詳細を知っている者は少ない。

しかしライドはこの戦いの中でどういった性能を持つのか、だいたいは理解していた。


(他のマジックアイテムと同様に、使用者の身体能力を強化する効果が付与されている……だが、厄介なのはそこじゃない。あの刃のせいで中々攻められない)


本来蹴りというのは後隙が多い攻撃。

体術をメインで戦う戦闘職の者でさえ、人間相手だと蹴りは多用しない。


だが、今のリーベには魔弾という補助攻撃がある。

未だに魔闘気を纏い続けているライドの体を斬り裂くことは出来ないが、内部にダメージを与えることは出来る。


そんな攻撃をモロに食らえば、蹴り以上の大きな隙が生まれる。


(それに、靴が生えてくるタイミングを自由自在に操れるのも厄介だ……クソッ!!! 中々攻めきれない!!!!)


決闘で勝利するには、ライバルを……リーベを倒さなければならない。


相手からの攻撃を回避することに専念し、逃げているだけでは勝てない。

それは実際に己の魂をぶつけ合っているライドが一番解っていた。


しかしそれでも、連続で攻めに転じられないのは事実だった。


「リードの奴……結構上手くなったな」


「セオリーから大きく外れている攻め方ですが、体術が得意なリーベさんには覚えやすい動きだったのかもしれませんね」


「だとしても、そう簡単に出来る動きじゃないけどな」


セオリーから外れた獣の様な動き。

その動きに上手く剣を合わせ、例え蹴りの様な後隙の大きい攻撃を放ったとしても、予想外の動きから刃が迫る。


「魔弾だけじゃなく、炎の刃にも注意しなきゃならない……相手は中々攻撃に移り辛いだろうな」


「それを教えた本人が言いますか。こうなることは最初から分かっていたんじゃないですか?」


「さぁ、どうだろうな」


ラガスが獣剣と呼んでいる攻撃は剣を操る技量が低ければ、ただただ刃をぶつけるだけのしょぼい攻撃になってしまう。


確実にどんな体勢からでも引き裂く技術がなければ、ただトリッキーな動き……最悪な場合、手痛い反撃を食らう可能性もある。


(本当に……これから先も鍛錬を怠らなかったら、相当な怪物になりそうだ……いや、年齢を考えれば既に怪物か?)


将来は必ず大物になる。


そんな予感を指せるリーベだが、まだラガスたちはリーベの勝利に確信を持てていない。

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