戦うのに必要な技術

ラージュさんとの昼食が終わり、会場へと戻る。

その時には既にラージュさんと別れていた。


「本当に仲良くされるのですか?」


「ラージュさんとか?」


「イーリス・リザードと、です」


「あぁ~~、そっちね。ん~~~~……まっ、基本的に向こうの接し方次第だな」


俺の事を何も知らない人からすれば、セルシアの横に立つに相応しくない人物だと思ってしまうのは仕方がない。

でも、一回戦った。


お互いに負けられない舞台で……その気持ちは向こうの方が強いか?

そんな色々な感情や思いが混ざった戦いで負けたんだから多少は認めてくれている筈……でしょう。


いや、帯剣しているアブストラクトを使っていなかったから嘗められてるって思って、機嫌悪くなってるか?

・・・・・・まぁ、どってでも良いや。


「リザードにどう思われようと構わない。正直今後、あいつと関わることは殆ど無いだろうからな」


「……確かにそうかもしれませんね」


「もしかしたら再戦を申し込んでくるかもしれないっすよ。まっ、どう足掻いてもラガスさんに敵うことは無いと思うっすけど」


「随分と辛口な評価だな、シュラ」


イーリス・リザードに対してめんどくさい奴だなとは思っている。

でも、実力にケチを付けるつもりは無い。


実際に確かな才はあるし、それに驕ることない努力を積み重ねていると思う。

だからあそこまで大層な自信があった訳だろうし。


「弱いとは思って無いっすよ。後衛職としては十分な実力がある。これからも順調に成長する。でも、それだけで敵う程ラガスさんの実力は低くない」


……まぁ、確かに手札をフルで使えば格上だって倒せる自信はある。


「そもそもな話……ラガスさんを相手に戦うなら、遠距離攻撃だけでは絶対に勝てない……というか、まともに戦えないっすよ」


まともに戦えないって事は無いと思うが・・・・・・いや、思い返せばリザードとの戦いでは大して手札を見せず終わらせた……あれはまともな戦いとは言えない、か。


「ラガスさんと戦うなら接近戦の技術は必須。そして接近戦の中でそれを邪魔しない遠距離攻撃が行える……それが最低条件じゃないっすかね」


「……シュラの言う通りですね。武器を使っての接近戦……長剣も良いですが、短剣の二刀流がベストでしょうか? そして体術の習得は絶対……最後に魔弾を使った遠距離攻撃、それがラガスさんの基本的な型に近いでしょうし、それが出来てスタートラインに立ったと言えるでしょう」


……二人共厳しいなぁ~~~。

でも、間違った事は言って無いか。


だって、二人共それが出来ている。その上で二人の技術が戦いに組み込まれる。


メリルは長剣や短剣だけじゃなく細剣だって使える。そして糸生産と操作のアビリティを使用した拘束。

そして毒による状態異常。それは武器や糸に絡ませて使うことが出来る。


シュラもメリルと同様に長剣や短剣を扱えることが出来、更に大剣や槍などの大型武器も扱うことが出来る。

そして身体能力に関しては有しているアビリティを加えれば一級品を超えるだろう。

それにプラスして鬼人族にしか使えないアビリティ、鬼火。そして絶対的な盾、城壁……攻守ともに万能、ではなく飛び抜けている。


そんな手札を持ちながらも、大会では殆ど見せることが無かった。

俺が持っている手札も大体ぶっ壊れてるからなぁ……自分でも言うのもなんだが、まともに戦える同学年は殆どいないな。


「お帰り、ラガス」


「ただいま」


「……なにか、あったの?」


「なんでそう思うんだ?」


「だって……なんか、楽しそうな顔を、してるから」


楽しそうな顔?

さっきまでイーリス・リザードの事を考えていたが、別に楽しくは無かった。


……でも、ラージュさんとの会話は嫌いじゃなかったな。

だから楽しそうな顔になってるのか? それなら納得出来る、な。


「ちょっと珍しい人とあってな。その人がまぁ……話していてつまらなくは無い人だったんだ」


「そう、なんだ。珍しい、ね」


「……かもしれないな。というか、俺達の次の対戦相手どんな奴らだっけ?」


「えっと……槍使いの前衛、と……風魔法が得意な後衛、だったと思う」


槍使いと風魔法使いか……特に警戒する必要は無いか。

万が一が起きないように進める。


観客はその万が一を期待してるのかもしれないが……期待を裏切る結果になるだろうな。

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