自分の思いに従うべき

「一つは第一騎士団から」


「第一って、一番有名どころじゃないですか」


基本的に騎士団は五つ存在する。

例外としてカロウス兄さんが在籍する遊撃隊と竜騎士隊が存在する。


それで、基本的には秘匿存在だが……国が抱える暗殺部隊があるとかないとか。

多分存在するだろうな。


国……というより、王族から見て邪魔に思える存在は国内にもいるだろうし。


「そうだね。去年の大会で良い成績を残せたんだ。その時に声を掛けられた。そしてもう一つが騎士団では無いんだけど……遊撃隊からも声を掛けられた」


「遊撃隊って……自分の兄が所属している隊ですね」


「やっぱりそうなのか。偶に遊撃隊の活躍は聞くのだが、ラガス君と同じ苗字の人がいてね……そう言えば君の兄弟は全員この学園の出身者らしいね」


「そうですね。卒業後に進む道は殆どハンターですけど」


「ははっ、勿論それも知ってるよ。ラガス君達兄弟はクレアやアリクも含めて有名だからね」


侯爵家の令嬢に有名って言われるって事は本当に有名なんだろうな。

というか、第一騎士団と遊撃隊から勧誘を受けるなんて本当に会長は実力者なんだな。


「ラガス君も今回の大会が終わったら多くの騎士団から勧誘を受けるんと思うよ」


「そうですかね……でも、仮に勧誘が来たとしても俺は断りますよ。俺の道は両親や兄姉と同じくハンターになる事ですから」


「そうか……普通の貴族令嬢や子息からすれば考えられない道だろうな」


「そういう会長だって考えられない様な道に進もうとしてるじゃないですか」


「そうだね。貴族というのは……私がこんなことを言うのは良くないと解っているけど、面倒なものなんだよ」


は、ははは……確かに会長が言ってはならない内容のような気はします。

ただ、その考えだけには凄い納得出来ます。


本当に面倒な奴らが多過ぎる。大抵のことは金と権力で何とか出来ると思っている連中がいるから厄介事が起きる。

大会中にあいつらの手を借りることが多いしな。


「それは十二分に解ります。俺は父さんが男爵であることに感謝してますよ。だって無駄に貴族と関りを持つ必要が無いですから」


「クレアからは毎日特訓ばかりしていたって聞いていたが、つまらなくはなかったのか?」


「……特にそう感じたことは無いですね。メリルやシュラ達と特訓するのも、モンスターを狩るのもつまらないと感じたことは無いですよ。歯応えが足りないなと感じた事は何度もありますけど」


「ラガス君ほどの実力者が歯応えがあると思えるモンスターが何体もいたら大きな問題になってるよ」


「そうですか? ……まぁ、それもそうですかね」


最近だとCランクのモンスターでもあんまり歯応えを感じない。

制限を付ければそれなりに楽しめる戦いが出来るけど……本気で戦ったら大して時間が掛からず終わってしまう。


「……ラガス君としては、どちらの道に進むのが正しいと思う?」


「っ!? それは……俺は会長じゃないんで、そういった質問には答えられませんよ」


第一騎士団か遊撃隊に所属するのか、それともハンターとしての道を選ぶのか……そのどちらかが会長に相応しいのかなんて俺には解らない。


というか、あんまり人の進む道に口を出すのはなぁ……でも、会長ならどっちの道に進んでも成功するとは思う」


「なので、会長が進みたいという思う道に行くのが一番良いと思いますよ。どちらに進むとしても、一緒に歩く仲間はいると思いますし。でも、ハンターだって面倒なことが無いとは言い切れませんよ」


「はっはっは、そうかもしれないね。ただ、そこはまだ私が知らない領域だ。寧ろの楽しみだよ、どういった面倒事なのか」


えぇ~~~……面倒事は絶対に楽しくないと思いますよ。

あっ、でもアリクやクレア姉さんと一緒にパーティーを組むなら、面倒事を楽しく解決しそうだな。


「ありがとう、自分が進むべき道が決まったよ」


「そうですか、それは良かったです」


「うん、今日は本当に良い日だ……ただ、まだ大会が終わったわけでは無い。残りの日も全力で進もう」


なんか、会長の目がさっきまでとは違って生き生きとしてる。

俺なんかの言葉でそうなっのであれば本当に良かった。


俺が学生の間はちょいちょい世話になりそうだし、助言ぐらいで会長のもやもやが晴れたのなら幸いだ。


「あっ、でもラガス君はやり過ぎてあまり大怪我をさせないように、な」


「あぁ……はは、善処します」


それに関してはやっぱり約束しかねるな。

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