一つ覚えれば三つ解る
魔法科の授業を終えた後、結局俺に魔弾の技術を訊きに来たのは数名ほど。
もしかしたら他の生徒にパシられて代表として訊きに来たのかもしれない。
それはそれで……全く興味がないよりはマッシだと思うけど、まだ変なプライドがあるみたいだな。
もしかして魔弾だけに負けた事よりも初級とはいえ、攻撃魔法が魔弾に負けたことの方がよっぽどショックだったのか?
「ラガス、皆には魔弾の、どの技術を教えた、の?」
「回転。その一つしか教えていないよ」
魔弾を回転させて放つ。それが出来れば軌道をずらしたり跳弾として放ち、貫通力を上げる事も出来る。
回転一つでそこまで出来るんだ。ちょっと考えればそこまでたどり着くと思うんだが……あまりにも興味が無さ過ぎたから直ぐには思いつかないか?
後の技術はぶっちゃけ個人の魔力操作の技量によって変わってくる。
その辺りは努力次第だからなぁ……というか、普通に攻撃魔法が使える組はそこまで魔弾の訓練に時間を掛けなくても良いと思う。
折角基本属性の魔法アビリティを習得してるんだがそっちを鍛えるべきだ。
魔弾は空いた時間にこまめに訓練する程度で良い。
「でも、あっさりと魔弾についてアドバイスしたね。何も見返りが無いのに教えても良かったの?」
「別に回転ぐらいは大した技術じゃ無い。考えていれば自然と思い付く技術だ。だから特に俺が技術で抜かれるという心配は無いんだよロックス。それにバレント先生なら何かしら評価に加点してくれる筈だ」
そもそもな話、俺の魔弾のアビリティの能力を俺以外の者が持つアビリティで同じことをするなんてほぼ不可能だ。
世の中どんな実力者がいるか分からないから断言は出来ないけど。
「それにしても、まだラガスに対して普通に接することが出来ない人が多いみたいだね」
「親の貴族の位としては一番下の男爵だからな。そんな男がパートナーに選ばれたからといって、セルシアみたいな人と一緒に居ればそりゃ第一印象は良くないだろう。半年ぐらい経てば多少は変わるんじゃないか?」
俺としては常にメリルとシュラにルーフェイスがいるし、セルシアとロックスがいるから学園生活に全く不満は無い。
というか、メリルみたいな美女とシュラみたいなマッチョなイケメンが従者ならそこを嫉妬されてもおかしく無いな。
ルーフェイスも何だかんだで人気がある。特に先生からだけどな。
この前、獣系のモンスターはどの様な方法でテイムしたら良いのかって聞かれたが、結構特殊なシチュエーションだった思うので適当に誤魔化した。
「私としてはラガス坊ちゃまが今のところ敵を作っていない事に安心しています」
「そりゃナーガルス以外に知り合い以外と戦ったりしてないからな」
ただ、あの初日の決闘? 以降に何かしらの嫌がらせとかあるのかと思っていたが、今のところ何もない。
魔法科の授業中にも俺に挑んでくることは無かったし。
もしかしたら王都にいる間にあいつらに何かを頼む機会はないのかもしれないな。
「でも、サルネ先輩との件で、ラガスのお兄さん、以外で挑んでくる人がいる、かもしれないよ?」
「……無きにしも非ずな件だな」
サルネ先輩にアリクだけがお熱だった訳じゃないんだよな。
今はアリクが俺に負けたって話が広まって挑みに来ないだけで、何かしら対策を考えてるのかも。
別に一対一で正々堂々と挑んでくる分にはどうこうしないけど。
「モテる男は辛いですね、ラガス坊ちゃま」
「別に野郎からモテても嬉しく無い。そもそも、もうモテる必要は無いだろ」
思春期にそろそろ突入するであろう子供のセリフでは無いのだろうけど、俺は基本的にこれ以上望まない。
「坊ちゃま……」
「なんだよメリル」
「中々良いセリフだったと思いますよ」
「それはどういう意、味……」
周りのメンツを見るとこっちを……正確には俺とセルシアを見てニヤニヤしている。
そしてセルシアの方を見ると、頬をほんのり赤くしていた。
あぁ~~~~……もう少し言葉を選んで発言した方が良いな。多分俺も頬が赤くなってる気がする。
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