相手にならない
「グルルルルアアァァァ・・・・・・」
「ふむ、こいつは確かハグベアだったか」
現れたモンスターは身長がビラッズよりも高いクマ系のモンスター。
確か拘束のアビリティを持っていた筈。
拘束方法が相手を腕で抱きしめるという方法なのだが、これがまた馬鹿にならない威力をもっている。
本当ならばバルンク様を危険に晒さない為に援護するのが当たり前なのだが・・・・・・。
「相手は一体だけか。なら私一人だけで相手をしよう。お前達は手を出すなよ」
「「「かしこまりました」」」
と返事をしつつも、私達は万が一の事を考えて遠距離攻撃の準備をする。
「さて、掛かって来ないのか? それなら、私の方から行かせて貰おう」
素の状態で飛び出したバルンク様だが、いつもより速度が速い。おそらくディセクションのお陰だろう。
ハグベアは一瞬反応が遅れながらも両腕を動かして拘束しようとするが、それよりも先にバルンク様の蹴りが決まる。
生半可な攻撃ならハグベアは後退せず痛みに耐えて相手を拘束するのだが、初撃が相当効いたのか数メートル程後方に飛び、蹴りを喰らった部分を抑える。
「気持ちよく刃が刺さったな。ワイバーン亜種の牙やバイドシャークの牙の性能を存分に発揮出来ているのだろう。流石セルシアが見込んだ男だな」
最初の一撃だけでラガス君が造った魔靴が中途半端な物では無く、一級品の物だと確信したバルンク様は満足そうに頷く。
しかしその余裕な表情に腹を立てたのかハグベアは前傾姿勢になり、バルンク様を睨み付ける。
そして雄叫びを上げながらの突進。
突進の速度は速いのだが、それでも今のバルンク様の速さなら身体強化を使えば無理なく躱せる。
「ほぉ、その巨体でそこまで跳ぶのか」
ハグベアはバルンク様と衝突するまえに空高く飛ぶ。
その跳躍力に関して驚きはするが、遠距離攻撃を持つ私達からすれば恰好の的だ。
「レアース、ノエリア、下がるぞ」
ビラッズが何故そう言ってきたのかは解らないが、私とノエリアは直ぐに後方へと下がる。
バルンク様もその場から下がり、尚且つ空中でのハグベアの態勢を見て私はビラッズの言葉を理解した。
おそらくハグベアは体術のアビリティを習得しており、空歩まで扱う事が出来るのだろう。
そう考えていた直後にハグベアは勢いよく空を蹴り、地面へ突撃。
その衝撃で地面は大きく罅割れるが、攻撃を喰らった者は誰一人としていない。
「威力は凄いが、狙いはまだまだの様だな」
ビラッズと同じくどういった攻撃が来るか呼んでいたバルンク様だからこそ無傷で済んでいると思うのだが。
「グラァアア!!!!!」
自分の攻撃を躱された事に怒り狂ったのか、攻撃が大雑把になる。
だがこのタイミングでお互いに身体強化のアビリティを使った事で、速度は依然としてバルンク様の方が速い。
そしてハグベアの攻撃をバルンク様が躱し、魔靴で攻撃するという繰り返しが続くこと約一分。
ハグベアの体には無数の斬傷ができていた。
「本当に良い切れ味だ。報酬に前払いとしてアブストエンドを渡した甲斐があるというものだ」
両足を軽く振り、返り血を薙ぎ払う。
もう戦況は見るまでも無く、バルンク様が優勢だと解る。
決してハグベアが弱いという訳では無い。ただバルンク様の強さと、魔靴の鋭さが重なり合った事でまるで相手にならない。
「ハグベアの皮は程度の低い刃なら全く斬れないぐらい頑丈なんだが、あの魔靴から飛び出してる刃の切れ味はとんでもないな」
「バルンク様がラガス君に渡した素材の良さもあると思いますけど、その良質な素材に気負わず魔靴を完成させた事に私は尊敬します。仮に私がラガス君なら胃がキリキリし過ぎて二日ほど寝込む自信はあります」
「そこは自信満々に言うところでは無いと思うが、気持ちは解らなくもない」
本当にそこはラガス君の凄いところだと思う。
だって報酬を前払いされて断れない状況だ。
バルンク様に悪気は全くないだろうが、プレッシャーが増したのは確実だろうな。
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