本気ではないが容赦ない

「俺の勝ちだな、ザックス」


「くっそーーー! やっぱりラガスには中々勝てねぇな。別に長剣がメインの武器って訳じゃねぇんだろ」


「・・・・・・まっ、メインの武器では無いな」


というか、俺の場合どれがメインだとカウントして良いのかいまいち分らん。


「けど、素手で戦ってもシュラさんには勝てねぇしよぉ」


「そりゃあ・・・・・・体格差があるから仕方ないだろ」


人族には無い成長速度なのか、シュラは他の同年代の男子と比べて体が大きい。

まぁでもザックスだって俺と同じ歳にしては十分に強いと思うけどな。


長剣も使えるがメインは大剣。


それに母さん曰く頑張れば魔法のアビリティを覚えられる可能性だってあるらしい。

それを聞いた時のザックスの表情は物凄い嬉しそうだったな。


やっぱり男でも一度は自力で魔法を使えるようになりたいって思うもんなんだろう。


「それにあいつ結構身軽だし」


レイアとミリアにメリルの三人とシュラは摸擬戦を続けている。

俺とザックスは木剣で戦ってたけど、シュラは既に対して他三人は真剣で戦っている。

ミリアは魔法がメインだけど。


「でもそういう動きはラガスが教えたんだろ」


「教えたとはいっても、全部を教えた訳じゃない。強いて教えた事といえば・・・・・・基本に囚われるなって事だけだ」


素手だと特にその考えが重要だと思っている。

俺が知っている限りの蹴り技や拳を使った攻撃方法は教えた。


大事なのはそれをどの場面で使うかだ。

それを理解というか、実戦するのは早かったな。


「あっ、ミリアのウォーターボールが弾き飛ばされた」


「裏拳で一撃だったな。その隙にメリルとレイアの二人が左右から攻撃」


メリルは短剣でレイアは槍。

攻撃が決まれば両方とも出血は免れない。ただ、それがどうしたとばかりの反撃が始まる。

サイドステップでメリルの攻撃を完全に躱し、レイアの方向に槍を躱しながら近づいて槍を掴む。


「片手で子供一人分の重さを加えてぶん回す・・・・・・あれで身体強化のアビリティを使ってないんだよなぁ。やっぱりあの力は反則だ」


あいつの場合、それだけが力の理由じゃない気がするけど。

ぶん回されたレイアはメリルに思いっきりぶつかった。


体を少し移動させて上手い事遠心力を利用したせいか、メリルの回避が間に合わなかった。


ただレイアは吹っ飛ばされてから着地に失敗したがメリルは成功。

そこからは連撃による連撃。

いくらシュラが真剣で良いからと言ってるとしても、全く容赦がない。


シュラも少し顔を引きつらせて身体強化のアビリティを使い始めたし。


その後もレイアが復活し、ミレアも援護に入るがそれでもシュラの優勢は変わらない。

そしてミレアとレイアの体力が尽き、シュラとメイルの一騎打ちになるが途中でメリルがギブアップ。


理由を尋ねたら「これ以上は摸擬戦と呼べませんから」だってさ。

いやぁーーー・・・・・・おっかないですよメリルさん。


まぁ、接近戦に関して文句なしの十分な相手だから遠慮を忘れてる部分があるんだろう。


「ラガスさん、メリルさん中々に遠慮なしで斬りかかって来たんですけど。というか戦いの最中の表情が笑ってたんで普通に怖かったんだが」


「俺相手だとどうしても少し遠慮してしまう部分があるけど、お前の場合そこは気にしなくても良いと思ってるんじゃないか?」


「あぁ・・・・・・なら納得です」


「だろ。まぁ二人共本気じゃないからどっちが強いとも言えんけど」


シュラはザックスと同じくメインの武器は大剣。

そしてメリルは俺と同じくオールマイティなところはあるが、メインは毒を使った攻撃。

最近は毒の調合に真剣に取り組んでいたおかげか、毒魔法のアビリティまで覚えた。


「けど、魔法を吹き飛ばすお前は魔法使いからすれば天敵だな」


「別に弾いたからといっても無傷って訳じゃないですからね。ミリアさんのウォーターボールを弾いた時だって多少は痺れが残っていたし。というか・・・・・・詠唱を行う魔法使いにとってラガスさんの方がよっぽど天敵だと思うんですけど」


「それはお前・・・・・・確かにそうだな」


魔弾は基本的にノーモーション攻撃だから悠長に詠唱なんてする時間は与えないし。

・・・・・・学校に入れば魔法をメインに使う学生に対しては圧勝出来るかも。


「ラガスさん、ちょっと悪い事を考えてる顔になってますよ」


おっとっと。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る