気合い

・・・・・・全く納得していない、って訳では無さそうだな。

ただ、それでも完全に納得しきれていないみたいだ。


「ふーーーー・・・・・・そんなに今回の結果に納得がいかないならもう一回だけ戦ってやるよ」


「えっと、息子的には嬉しい提案なんだろうけど、ラガス君にメリットは無いよ」


「何を言っているんですか。勿論追加報酬を貰う前提の話に決まっているじゃないですか」


戦って俺が何を得られない戦いを無償で受ける訳無いだろ。

マッジクポーチの四級と同等かそれ以上の品物とは言わないが、ある程度価値のある物でないとな。


「そうだよね。うーーーん、何か気軽に渡せる物は・・・・・・あっ、あれがあったか。ラガス君、今直ぐには渡せないけど、明日には必ず渡せるからそれでも良いかな?」


「・・・・・・良いですよ」


嘘つくような人ではないだろうし、そう簡単に嘘をつけるような立場の人でもないだろう。


「リオウス、追加報酬ありとはいえもう一度ラガス君が戦いを受ける言ってくれたんだ。ちゃんと礼を言いなさい」


「・・・・・・君の寛大な心に感謝するよ」


感謝するならもうちょい嘘でもいいから作り笑いしろよ。

全くもって感謝している様に見えないぞ。

副騎士団長様も苦笑いしちゃってるじゃないか。


「それじゃあ二人共さっきと同じ位置に戻って」


一回目は奇襲で倒したんだから、二回目は普通に倒すとするか。


「それでは・・・・・・始め!!!!」




ラガス君が二回目の摸擬戦を提案してくれたのは少し意外だったね。

いや、追加報酬があると分かれば自分から引き受けてくれるのかな?


それにしても・・・・・・予想より圧倒的に強い。

あの場面しか見ていなかったから、体はある程度鍛えていても魔法アビリティを使った技巧派系なのかと思っていたんだけど・・・・・・全くの勘違いだったみたいだね。


あの動きは毎日一定時間、容赦する事無く自身の体を鍛えて実戦を何度も繰り返したからこそ出来る動きだ。

核の段階はラガス君の方が上かな。それを差し引いても素晴らしい奇襲だった。


リオウスが油断していたというのもあるけど、途中からは意識もラガス君のスピードに追い付いてい。

ただ、次はリオウスも油断しないだろう。一度奇襲でとはいえ何も出来ずに負けたんだ。

それに僕の息子という立場が余計に負けず嫌いを引き立たせている。


今度はそう簡単には・・・・・・へぇ、中段に摸擬剣を構えるという事はリオウスと真正面から打ち合うという事かな?

それは楽しみだ。


「それでは・・・・・・始め!!」


リオウスとラガス君が二人共同時に駆け出す、もしくは出方を窺うといった二択の状況になると思っていたのだが、先に動いたのはリオウスだ。


逆にラガス君はその場から動こうとはせず・・・・・・。


「ごおおおぉぉぉおおおおおオオオオオーーーーーーーッ!!!!!!」


ッ!!!! な、なんて声量と気迫だ。これが・・・・・・子供が出せるプレッシャーなのか?

思わず震えてしまったよ。


リオウスは・・・・・・駄目だね。完全に気圧されてしまっている。

無理もない。僕がリオウスと同じ年だったら同じように動きを止めて後ろに下がってしまっている。

それ程までにラガス君の表情は鬼気迫るものになっている。


底が知れない、その言葉が相応しいほど実力が読めないよ。


そしてその場を駆けだし横に一閃。

摸擬剣が直接リオウスにぶつからない様に摸擬剣の上から押し飛ばした。

いくら年齢不相応な気迫を放とうと、手加減するのは忘れていない。

いや~~~。リオウスの親である私にとっては有難い気遣いだね。


ラガス君の怒号とも言える声量で怯んでいるとはいえ、リオウスは意識すらラガス君に反応出来ていない。

身体強化のアビリティに加えて闘気による脚力の強化。


二重に速くなったスピード。なんというか・・・・・・ラガス君は手加減の意味を込めて摸擬剣の上から叩き付けたんだろうけど、リオウスにとて無理矢理その選択肢を選ばさせられたと言うのが近いかもしれないね。


さて、殆ど壁の端まで吹き飛ばされたリオウスにラガス君が追いつき、首元に剣を突きつけた。

これは完全に勝負ありだね。

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