299.アキラ、呼ばれる。
死屍累々の餓鬼どもの血は、赤く大地に滲みこんでいく。その匂いは吐き気を催すような腐乱臭であり、一刻も早くその場から立ち去る。
一方で、身体中の傷はズキズキと痛むものの、時間が経つにつれそれもなくなっていく。気が付けば、傷口は治りかけ始めていた。
「うわぁ・・・、プラナリアかよ・・・。」
そう表現せざる負えないくらい異様な再生速度で、傷口はどんどんと塞がっていく。これほんとすごい・・・。
そんなことを思いつつ、再び山を登頂していく。どんどんと進んでいくと、薄っすらと頂上らしきものが見えてくる。
それを目指して登って行こうとした時、後ろから僕を呼ぶ声がする。
「宿主様、聞こえますか!! 宿主様!! 返事をしてください。」
「その声は、精霊さん!? 」
「ああ、宿主様やっと応答してくれましたね。すぐにここから引き返しましょう!! この先は行き止まりです!! 」
そう呟く。そうかと思い、その声に従おうとした時、違和感がそれを止める。
「その声、本当に精霊さん? 」
「何を言うんですか!! 宿主様!! 私ですよ!! 」
その言葉を聞いて、違和感は確信に変わる。精霊さんらしき声の忠告は無視して、再び山頂を目指し、また歩みを進める。
「宿主様!! その先は行き止まりです!! 引き返しましょう!! 」
それらをガン無視していると、
「アキラ!! アキラ!! ねぇ、アキラ!! 後ろを向いてください!! 」
そうテラのような声で僕を呼びとめる声が聞こえる。
思わず振り返りそうになるが、冷静に考える。テラがこんな場所にいるはずがない。
そう考え、その声を無視していると、次第に声色を変えて、今度はイリスの声を出し始める。
「ねぇ、アキラ!! 無視しないでよ!! アキラってばぁ~~~。」
これも偽物だ。本物のイリスはこんなに媚びたことをしない。はっきり、わかんだよね!!
その後も、アルテシアやミユ、まゆきの声を真似て何度も呼びかけてくるが、それらをことごとく無視していく。
次第に業を煮やしたのか、ついに声の主は本性を現し始める。
「なぜだぁ!! なぜ振り向かない!! 」
そう声は問いかけてくる。
「精霊さんは、僕のことを宿主様とは言わない。それにテラも僕の事は、さん付けで呼ぶ。消えな、偽物。」
断言すると、
「ヴヴヴヴヴぅぅぅぅ・・・・・・。」
声は図星を突かれたようで、恨めしそうに離れていく。
そうして、ついに山の山頂に到達するのであった。その頂きには、不自然な門がひとつ構えられていたのであった。
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