285.アキラ、脂を味わう。
さて、バイソンの肉も解体し終えて、食べれるすべての部位を収納の魔術にしまう。ハチもその頃には、内臓を食べ終えていた。
そうして、家へと帰宅し彼女らに成果を見せる。テラとミユはその肉の大きさに驚く。
「旦那様、お見事です。」
とまゆきは母のように慈愛の目をして、僕の頭を撫でる。少し恥ずかしい気もするが、悪くない。
それから、今日食べる分の肉と内臓肉に塩で下味をつけていく。残りの肉はアルテシアとイリスの魔術で、洗浄し冷凍保存する。ふたりが居てくれて本当によかった。
分厚く切った肉を直火焼きするが、家の台所の火では火力不足なので、今日は外で焼くことになる。
久しぶりの焚火に、少し心が躍る。そうして、肉を串に刺して直接火で焼いていく。脂が滴り落ちる。
その光景に食欲君が、逸る。その欲望を抑えながら、今か今かとその時を待つ。
「宿主、もうそろそろ良い頃合いなのではないでしょうか。」
よし、ハンターセンスも危険を察知してないし、毒の心配もない。
そして、皆、齧りつく。
「・・・。」
皆、終始無言で食べる。食べ終わって、初めて感想が出る。
「おいしい・・・。」
その脂は口の中で蕩けるように消えて、うまみだけが残る。そして、その分厚肉は、ほどよい弾力がありつつも、噛み切れる。
人生の中で、一番うまいバーベキューではないかと思うほどであった。皆もその味を噛みしめ味わいながら、食事を楽しむのであった。
次の日は、朝からテラたちと農作業に勤しんでいると、
「ケェッ、ケェーーーーン!!」
と遠くの方から動物らしき鳴き声が聞こえてくる。
「ん? なんだ? 」
とよぉ~く目を凝らして見てみると、ひょっこりとキジが顔を覗かせる。それを確認した瞬間、テラたちに弓矢を取ってきてもらうよう頼む。
その間、自分はキジを見失わない様に見張っておく。
「アキラさん、取ってきました~。」
とすぐにテラたちが弓矢を取ってきてくれた。
「ありがとう。じゃあ、いっちょキジ捕まえてくるわ! 」
そう言って、近づいていく。
「主、頑張ってくださいね!!」
とミユたちの声援を背中に感じながら、身体を屈ませて、キジへと近づいていくのであった。前回、失敗した反省を踏まえて、今回は外さないぞと心する。
「ハチ、奴の後ろに回って気を逸らしてくれ。」
そうハチに指示を出す。ハチは、身体を低くして迂回していく。イーグルビューでハチとキジの足跡を確認しながら、配置につくのを待つ。
その後、ハチがタイミングを見計らい、大声を出してキジを追いたて始めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます