273.アキラ、クマを待つ。
翌朝、罠の見周りを終えた村人の顔は、顔は苦虫を潰したように悔しがっていた。一日目の結果は掛っていなかった。
まぁ、すぐに設置して掛るような奴らではない。しかし、村人は、僕が来たからには、どうにかなると考えていたようだ。
「まだ昨日、設置したばかりです。焦らず、行きましょう。」
そう言って、村長がその場を収める。しかし、その翌日も罠にクマは掛っておらず、皆の顔に焦りの色が見え始める。
身体の傷も段々と治ってきてきた頃、状況は一変した。昼に罠を見に行っていた村人が血相を変えて戻ってくる。
「く、クマだぁあああ!! クマが掛っている!! 」
慌てた様子で、村長宅に駆けこんでくる。皆の雰囲気が一瞬にして、変わる。そして、現場へと向かう。
5か所に設置したくくり罠の一個に引っかかったようだ。その身体は黒く、まだ小さい印象を受ける。どうやら、コグマを捕まえた様だ。
「ブォォォォォン!! ブォォォォォォン!! 」
コグマは声を荒げる。まるで、母グマに助けを求めるように。辺りを見れば、母グマが我が子を助けようとした痕跡があちらこちらに見受けられる。
しかし、我々が来たことにより、断念したようだ。だが、これは好都合!!
このコグマをどうにか利用できないかと考える。そしていい案を思いつく。その案に村人たちも賛成してくれる。
それから、村人がコグマを取り囲み、4本の足をなんとか縄で縛り、動けないようにする。
その後、圧殺罠に逃げられないようにしたコグマを置いて、助けを求めるコグマを囮に母グマをおびき寄せる。
我ながら、考えつくことが外道に成りつつあることを自覚しながら、近くの木の陰に隠れて、母グマが来るのを待つ。
しかし、母グマは易々と圧殺罠の近くには来ない。段々と弱りかけていくコグマの鳴き声が森にこだまするのであった。
翌朝も母グマは助けに来なかった。諦めかけていたその時、ハンターセンスが何かがやってくるのを感じる。
そして母グマが我が子を助けんと、警戒しながらも罠の中に入っていく。
そうして、そのコグマを引いた時!!
棒が下がって、重さがかかっている仕掛けの部分が外れて、クマの上に天井が落ちてきたのである。
罠はうまく作動した。そう思い、恐る恐る近づいていくと
『ブォォォオオオオオ!!!!』
何物も寄せ付けない気迫の唸り声が、罠の中からする。その瞬間、罠の中から、母グマが飛び出してくる。
死んだとばかり思っていた僕たちは、不意をつかれ混乱する。
母グマはその隙をついて、奥の森へと逃走する。口には、子グマの亡骸が咥えられていたのであった。
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