271.アキラ、痛む。

 クマに噛まれた傷はまだ痛み、身体はまだ少し痛んでいた。今は焦らず安静に専念しながら過ごしていると、




『ドンドン!! ドンドン!! 』




誰かがドアを叩く音がする。




「アキラ殿!! アキラ殿はいらっしゃいますか!! リフェルベ村が大変なんです!! 」




そう聞き覚えの声が聞こえてくる。そして、リフェルベ村の村長が血相を変えて家に入ってくる。




「アキラ殿、大変なんです!! 村の近くにクマが現れて、人を襲っているんです!! どうか、お願いです!! 助けてください!! 」




頭を下げられて懇願される。その話を聞くと、柴を刈りに行った村人が何人か襲われたと言う。




まさかと思い、クマの特徴を聞くと、




「ええ、襲われた者から聞くと、藪の中から、急に飛び出してきて、襲われたようなのです。なんとか手に持っていた鉈で反撃した所、そのクマは怯んで逃げて行ったようで。その時、腕に大きな傷跡があったと言っていました。」




間違いなく、あのクマの親子だと感じる。どうやら、人間の味を覚えた様で、村の付近を今もうろついていると考えられる。




すぐに手を打たなければ、また負傷者がでてしまう。無理を承知で身体を動かそうとすると、激痛が走る。




「旦那様、その身体で無理をしないでください!! 」




まゆきたちが静止する。確かに、この身体では、弓矢を扱うことはおろか、動くこともままならない。




 今の僕が出来ることは何かないかと考える。身体を使わずにできること、ひとつあるではないか。




「罠猟なら、身体に負担をかけないと思うんだけど。」




そう僕が呟く。村人たちはその提案を受け入れる。しかし、まゆきたちは




「旦那様、先程、痛そうな顔をされていましたよね。無理に動いたら、傷が開いて治りが悪くなりますよ!! 」




と反対してくる。すると、村長が申し出てくる。




「それならば、私らがアキラ殿をおぶって村まで運びます。罠の指示さえしてもらえば、身体の負担が少し減るでしょう。」




その提案に、まゆきたちは、渋々承諾する。




さっそく、僕は村人たちに担がれて、村へと向かう。出発のおり、ミユが何かを飲ませる。




「痛み止めです。これで、痛みが少しは楽になるはずです。一応、主の身体で治験済みなので、安全ですよ。」




その言葉に偽りはなく、少し身体が火照るが、痛みが少し引いたような気がする。




「ミユ、ありがとう。」




感謝の意を述べると、ミユは顔を真っ赤にして




「お、お役に立てて光栄です。」




と呟く。




そうして、僕は担がれながら、リフェルベ村へと向かうのであった。


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