259.アキラ、話を聞く。

 「よくわかりましたね。」




と僕は、呆気にとられる。




マウリさんは、得意げに自分のことについて話し出す。




「実は、私は毛織物商をやっておりまして、職業柄そういうことについて詳しいのですよ。




先日も、いい毛皮を生産する村の噂を聞きつけて、その村へと行ってみたのですが。




何やら、村の代表の方に、断れてしまいました。それでその帰りに、アキラ殿に助けてもらったというわけです。」




商人もけっこう大変だなと思いつつ、その話に耳を傾ける。




「なんでも、その村の毛皮はそこらへんの毛皮とは違って、最良な毛皮が取れると噂なので、なんとしても仕入先として確保したいのです。」




そう熱く語るマウリさんの商人魂に感服しながら、そのことについて質問してみる。




「ええっと、たしかリフェルベという村でしたね。」




へぇ~~、あそこらへんっていい狩り場なんだなぁ~。と思いながら、詳しく話を聞いていくと、




「村の代表の方が言うには、その最良の毛皮は村の東に住む人が取ってきてくれるものだから、その人と相談しておくから。とのことでして、いや、うまいこと言い包められましたよ。」




う~~~ん、その村の東に住む人って、自分じゃん!! と話しの途中で気付く。マウリさんにどうやって説明したらいいのか。




「ああ、その東に住む人って。僕のことだと思います。」




と言うが、マウリさんは、それを聞いて笑う。




「ハハハ、何をご冗談を。あの村の東と言うことは、境目の近くですよ。それこそ、そんな場所で狩りができるということは、異邦人の血を引く者でないとできませんよ。」




ああ、まぁ、そうなるよね。百聞は一見にしかずというわけで、目の前で異能を見せる。




「これから、見せることは他言無用でお願いします。」




と一応、釘を刺しておく。まずは、両手を合わせて離すと、その手と手の間に電流を流す。それを見たマウリさんは、おおぉ~~と驚くが、目は本気で信じていない。




次に、家の壁を伝ってみせる。すると、今度は




「ぎょぇえええええええ!! あ、アキラ殿!! 」




と椅子から転げ落ちるほど驚く。この人、面白いなぁ・・・。と思いながら、異能を証明するのであった。




「あ、アキラ殿! あなたが村人たちが言う人だったんですね!! 」




そう目を輝かせながら、詰め寄ってくる。




「ええ、まぁ、多分、僕のことだと思います。」




ならば、話は早いと言った具合に、マウリさんは毛皮のことで商談をし始める。さすがの、商人魂! に思わずたじろむのであった。

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