254.アキラ、聞き耳を立てる。

 初めてのキツネの毛皮の手触りは不思議な感触であった。




そうは言っても、すぐに加工して毛皮のコートの完成といわけにはいかず、下処理などを経て、やっと加工ができるのである。




そうして、消費者に届けられると脳内ナレーション君が、そんなことを呟きながら語り始める。




それはさておき、キツネの毛皮と肉を切り分けていく。この毛皮はもれなくトレーダーに売って終わりなのだが、材料と道具を揃えれば、皮ナメシを始めれる。




この際、初めてやってみるのもいいと考える。冬支度までに、5人分のコートでも作れば、喜ばれること間違いなしだ! 




そう考えながら、ウサギの死体を沢まで運び、冷ます。その間に、ハチはキツネの肉をムシャムシャと食べる。




その姿を僕は、ボォーと見ながら考える。道具は、トレーダーから買うとして、ナメシ液は何から抽出しようかと模索する。




何かの文献で読んだ記憶では、渋柿の渋みの成分が、なめしには欠かせない材料だったのを思い出す。




「たしか、木の樹皮とかにも含まれているような説明だったっかなぁ・・・。嗚呼、思い出してきたぞ。ええっと、ああ出てきそう。 」




そんな風にう~~んともう少しのところで、出てきそうなのだがそれが出て来ず、悩みながら家へと帰宅する。




何か思いつめた顔をして、戻ってきた僕を見て、女性陣は心配そうに見つめてくる。そうして、彼女たちは家を出て外に集まり、緊急会議をし始める。




「やっぱり、夜中に添い寝してるのがバレたんじゃないの。」




「違いますよ。あのアキラさんの顔は、水浴びをこっそり覗いていることがバレた顔です。」




「多分、主のお食事に、少し媚薬を入れていたことが、気付かれたのでは? なぜか主には効かないのですが。」




「もしかすると、アキラ様の、ベッドのシーツを実はこっそり替えていることがバレたのでしょうか・・・。」




「皆さん、そんなことしてたんですか!? 私も誘ってくだされば良かったのに。」




そう言いながら、聞き耳を立てられていることに、気付かないで僕の知らない所で、そんなことをしていたのかと自白してくれている。




添い寝とか、水浴び覗いていたとかその他、諸々、どんぐりの背比べみたいなもんだよ。ハハハ・・・ハッ!! 




思い出しは、急に訪れる。




「そうだ! 思い出した! ドングリだ! どんぐり! ドングリ! オークの木に多く含まれているタンニンだ! これで皮ナメシができる!! いやぁ~~スッキリした。」




彼女たちのおかげで、なんとかタンニンが多く含まれている木を思い出すことができた。今回のことは聞かなかったことにしようと考える。




しかし、薬を盛られているとは、思いもしなかった。知らないうちに薬物耐性が出来ていた、自分の身体に驚きを覚えるのであった。

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