243.アキラ、猪を待つ。
翌日の朝、姉妹は別れの抱擁をしていた。
「まゆきねぇ、また帰ってきてね。」
「うん、わかったよ。ましろもおばあちゃんに心配かけちゃ駄目だよ。」
そう言って、再び、抱擁をしていた。その別れのシーンに思わず、涙がこぼれる。グっと感動の波が押し寄せて来て、
「やばいやばい、な、涙出ますよ・・・。」
一筋の涙を流す。その涙は温かく頬を伝っていく。こうして、新たな武器を手に入れた僕は、仕留めれなかった大猪を討伐するために、家路につくのであった。
こうして、家についたのは夕方おそくであった。一日、離れていただけなのに懐かしさを感じるのは、なぜだろうかと思いながら、夕食を囲む。
明日に備えて今日は早く寝る。
朝日が顔を出す、目が醒める。辺りは異様な静けさが支配していた。それはまるで、何かが起きる前触れのようだった。
「ワン! (ボチュ! )」
と僕の気配に気付いて、ハチが近づいてくる。
「おお、今日は頼むぞ。」
そう頭を撫でてやる。少しも不安な気持ちがないと言えば、嘘になる。だが、僕には心強い味方、ロングボウがあるのだ。
絶対やれるさ、そう自分を信じる。そして、決戦の前に腹ごしらえをする。
「いざ、往かん!! 」
そう言って、気合いを入れて大猪が住まう洞窟へと向かうのであった。
まもなく、目的地の洞窟に到着する。一歩進むたび、拍動が早くなっていく。どうやら、無意識では緊張しているようだ。
矢が最大限の威力を出せる場所まで来る。そうして、木の上に登り大猪が出て来るのを辛抱強く待つ。なにかを察知したのか、イノシシの群れは出てこようとしない。
居ないというわけではない。時折、洞窟の暗闇から光る目がチラりと見える。そうして、待ているうちに若いイノシシが洞窟から、飛び出てくる。
それを待っていたと言わんばかりに、電矢を手に取り、弦を力強く引いて、射る!
それは放物線を描きながら空を切り裂き、瞬間! イノシシの後頭部を貫く。その光景にイノシシたちは
「ブゥモアァァァァァ!! 」
「ブゥモォァァァァァ!! 」
「プィギィィィィィィィィ!! 」
と威嚇音を出す。その音に、手ごたえを感じながら大猪が飛び出て来るのを待つ。その時は、一瞬の出来事だった。
ハンターセンスが何かを感じとる。それに反応して、すぐに矢を構える。その直後、黒い大きな影が洞窟の暗闇から勢いよく飛び出るのであった。
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