236.アキラ、壊す。

 咄嗟に、持っていた弓を枝にひっかける。




『バキ!! 』




と弓が壊れる音がする。だが、少しだけでも距離を稼げたことにより、もう一方の腕で、枝にしがみつくことができた。




『プギィー! プギィー! 』




イノシシたちは僕が落ちた所を食べようかと、下に群がってくる。このまま、死んでたまるか!! と壊れた弓を手放し、両手で枝を掴んでなんとかよじ登る。




見下ろせば、血走ったイノシシが周りを取り囲んでいた。大猪はなぜか、突進して来ず、こちらをじっと睨む。どうも、突進は意味がないと考えたと思われる。




仮に木を倒されても、次の木に飛び移るだけだが。そうして、僕を仕留めるのを諦めたかのように、群れを連れて去っていくのであった。




そうして、ひとり木の上に取り残された僕は、自分の愛用の弓の残骸を目にする。最後の最後まで、自分を助けてくれた弓に感謝の意を示す。




あの大猪を仕留めることを心に誓う。




そして、大地に降り立つ。すぐさま、弓の残骸を回収して家へと帰るのであった。




帰宅の道中、どうすればあの大猪に致命傷が与えれる弓を作れるか、そればかりを考える。そういえば、まゆきはエルフだったな。




「もしかして、まゆきに聞けば、もっと強力な弓を作れるかも。」




と呟く。それに精霊さんも、




「宿主、冴えてますね! 」




と褒めてくれる。




そうと決まれば、さっそく急ぎ帰宅して、まゆきにこの事を相談する。




 まゆきは、困惑した様子で、




「そこまで、弓に詳しくないんですけど、もしかしたら村で一番の弓職人なら、大猪を貫く弓を作れるかもしれません。」




ああ、またあの村に行かねばならないかと、少し気が重くなる。しかし、神って崇めてくれるし、悪い気はしないので、まぁ! いいか! 




とプラス思考で、エルフの村に行くことを決断する。そうと決まれば、早速荷造りを開始する。




久しぶりの里帰りに、まゆきは少し嬉しそうに荷物を準備していた。




一方の僕も、ましろちゃん元気にしてるかなと思いながら、明日の出発を心待ちにするのであった。




「私は、今回は家にお留守番しています。 」




「テラに同じく。」




とテラ、イリス、アルテシアはエルフの村はなんだか、苦手な意識があるようだ。まぁ、前みたいに崇められるのは、どうやら御免のようだ。




ミユも今、調合が忙しいという理由で断る。




そうして、翌日、まゆきと僕は、エルフの村へと旅立つのであった。今回の目的な新しい弓だけなので、最低限の荷物を持っていくことにした。




ああ、またお祭り状態になるのかと、少し不安になりながらも馬を進めるのであった。

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